記念日 2



「むぅ・・・・・」



 数日前から様子が変なルフィである
 今日は朝からずっと悩みに悩んでいるらしい
 昼になった今でも首を何度も左右に傾げている
 だが、場所が場所だけにサンジの踵落としを喰らったルフィである
「此のクソゴム!!  朝食もロクに食わねェで何ずっと唸ってんだよ!!  おれ様の飯が食えねェってんなら此処から出ていけ!!!」
 腹が減ってない訳ではない   唯、彼にしては珍しく真剣な考え事をしていたのだ
「ん、ん〜〜〜〜〜・・・・・」
 目の前に並んでいる料理に目もくれずに席を立ち、唸りながらキッチンを出て行った

「ちょっとゾロ!!  一体アイツどうしちゃった訳!?  此の間から変よ!!」
 今までに無い事に驚いて思わず問い掛けるナミに対して唇をへの字に曲げ、思いっ切り不機嫌を表す
「お前・・・、おれがルフィの全てを把握していると思ってねェか?  おれにだって解らねェよ!」
「アンタが解らないんじゃお手上げね・・・」
 ふうと溜息を吐くナミ
「でもよォ、本当に初めてじゃねェか?  アイツが飯も食わずに考え事してるなんて事って・・・」
「え?  そうなのか??」
 ウソップの言に、今まで傍観していたチョッパーも驚いた
「よく解らねェが何か理由があるんだろう  食う事だけは忘れないアイツが此だけ深刻になってるって事は・・・  アイツの分は取っておく事にするか」
 サンジはテーブルにあるルフィの食事を移動させる

「あら、剣士さんは?」
 ロビンが言った事で皆は初めてゾロが居ない事に気付く
「放っておきましょう  ルフィの事はゾロに任せるのが一番良いから」
 ナミはそう言うと、皆もそうだと納得する





「ルフィ・・・」
「んあ?」
 何時もの指定席で考え続けているルフィを見付けたゾロは、後ろに立って静かに呼び掛けてみる
「何を考えている?」
「なんにも・・・・・」
 一瞬振り向いてゾロを確認し、直ぐに前方を向いてしまった  流石のゾロも此には頭に来た様だ  何も無い筈が無い!  少し口調をキツく再度呼ぶ
「ルフィ!」
「何だ?」
「おれにさえ隠さなければいけない事って事ァよっぽどの事だと思うんだが!?」
「隠してなんか、ねェぞ・・・・・」
 明後日の方向を見ている  明らかに嘘を吐いていますという表情
「言えよ!  何を考えている!!」
「何も・・・」
「ルフィ!!」
「何も隠してねェし、何も考えてねェ!!」
 船首に上がったゾロにはルフィが動揺している事が手に取る様に解る
「ルフィ、お前ェはおれにまで嘘を吐くのか?」
「ウ・・・嘘なんか吐いてねェっ!!!」
 更にゾロに詰め寄られ、どう対応すれば良いのかも解らなくなったルフィは船首を降りて中甲板へと飛び降りた
「ルフィ!!」
 後ろからゾロに呼び止められるが、其のまま走り腕を上空へぐんと伸ばす
「ゴムゴムの・・ロケットォ!」
 見張り台の縁を掴んであっという間に中に納まる
「ルフィ!!!」
 ゾロも中甲板に降りてルフィを呼ぶが無反応である
「チッ・・・・・」
 此以上追い掛けてもイタチごっこにしかならないと判断し、マストを背もたれにして座り込んだゾロである





「え?  未だなの?」
 太陽も沈んでいるというのにずっと見張り台で籠城していたルフィに驚くナミ  昼間、中甲板で読書していたロビンからゾロもルフィもあれから何も口にしていない事を聞かされて素っ頓狂な声を上げてしまう
 誰もが信じられない事だった  あの食いしん坊のルフィが、常人の何倍も食べるルフィが、何も食べない?  おやつの時間もずっとあのまま??
「病気の心配はねェのか?」
 サンジが訊くが、多分としか答えられないチョッパー
「身体よりも精神的な事じゃないかとは思うんだけど・・・」

「あれに付き合ってずっと待っているゾロも凄くねェか?」
 ウソップが発言した事でまた皆が頷く





 一方、中甲板では何度目かの呼び掛けをするゾロが居た
「ルフィ!!」
 返事は無い
「・・・ったく、いい加減にしろって!!」
 遂にマストを昇り始める
「ルフィ・・・」
 静かに呼んで覗くと、難しい顔をしているルフィが見えた
「ルフィ!?」
「ん〜〜〜、やっぱり思い付かん!!!  早くしねェと今日が終わっちまうのに!!!」
 考え過ぎて疲れたと脱力する
「ルフィ?  何の事だ?」
「うわっ!!  ゾロ!!!」
 声を掛けられたというのに気付いていなかった様だ   愛刀を置き、ルフィの傍に腰を下ろして問い掛ける
「ルフィ、一体何の事だ?  今日が終わっちまうってのァ・・・」
「誰に聞いたんだ?  おれ、誰にも言ってねェのに!!」
「たった今言ったじゃねェかよ・・・・・」
 無意識の独り言だったと理解して、ルフィの麦わら帽子をゆっくりと外し、ふわりと頭に自分の手を乗せる
「らしくねェって・・・  難しい事考えんな・・・」
 だが、鋭い眼をしてゾロに反抗する
「絶対考えるんだ!!  難しいけど、おれが考えなきゃ仕方ねェ事だから!!  ゾロの誕生日に何もしねェ訳にはいかねェじゃん!!!」
「あァ!?  おれの誕生日??  今日って11日か??」
「あ、ゾロ!!  ひょっとして自分の誕生日も忘れてたんか?」
 ゾロがカッと眼を見開いて驚く様に訊いて来るので、ルフィも吃驚してしまう
 そう、過去にルフィの誕生日をすっかり忘れていたゾロである
「ゾロ・・・、何が欲しい?」
 自分の誕生日の時と同じ質問をする
「何も要らねェ・・・って言いたいトコだが、“ルフィと一緒に過ごせる時間をタップリ”と・・・」
「おう、イイぞ!!  一晩中な・・・・・」
 軽く、だが満面の笑みで「ししし!」と笑ってゾロと口唇を重ねた
 互いの腕が互いを抱き締め、互いの気持ちに嬉しくなる
「何だ・・・  最初っからゾロに直接訊けば良かったんじゃんか・・・  悩んで損した・・・  安心したらハラヘッタ・・・・・」
 愛しい愛しい恋人が、普段通りに戻って言った此の言葉も嬉しく思ったから、僅かに笑んで互いの宝を定位置に戻し、2人でキッチンに向かった





「で・・・?  今回騒がせた理由は何よ!?」
 仁王立ちになったナミがドアの前で此方を睨んで怒って訊いて来るが、悪戯っぽく笑って返したルフィ
「にしししし!  内緒だ!!」
 そして、ナミの向こうに用意されたご馳走を見付けてゾロを引っ張って行った
「ちょっとゾロ!  説明してよ!!」
 心配したのにと怒るナミを宥めたのはやはり此の人で・・・
「ナミさん、そう怒らないで  さァ、あなたの為にとびっきりの食材でとびっきりの料理を用意しましたから・・・・」
 サンジに促され、溜息の後にやれやれと両掌を上に向ける
「そうね・・・  おめでたい日だしね・・・・・」








『勿論今日という日が、おれに取っての特別記念日に加えられた事は言うまでもないだろう・・・』





あれま、御馳走様でした(笑)


本日ロロノア・ゾロの誕生日っス!
何とか今日中のUPが出来て良かったなと・・・
此、2と言うからには一応続きです(苦笑)
なので、ゾロル文原作ベースに置いてある「記念日」はおまけです(笑)

2002 11 11 Mon PM UP byM


*ヒロ様のところでもゾロ誕企画をなされてらして、
 こちらの作品をDLFとされてらしたので、
 とっとと頂いてまいりましたvv
 ルフィの天然ぶりが何とも可愛いですvv
 一番好きな食べる事まで二の次にして考え込んじゃうなんて。
 大切に読みますね? ありがとうございましたvv


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