Marking


不意に感じた違和感。
甲板の上でいつもの如く昼寝を楽しんでいたゾロは
重い目蓋を何とか持ち上げると辺りを覗った。

「………ルフィ?」

そして見つけたのは、寝ているゾロの前を横切ったであろうルフィ。
違和感の主がルフィであったのか自信なさげに零れ出た呟き。
そんな小さな呟きにも耳聡く気付いたルフィがゾロの元へやって来た…

「なんだ、ゾロ。なんか呼んだか?」

“にししっ”といつもの笑顔で聞いてくるルフィ。
しかし、ルフィが動くたびに巻き起こる小さな風にゾロはまた違和感を感じていた…。

(なんだ…?何だか分からねぇが変な感じがしやがる…)

自分の中で感じている違和感の正体が掴めずジッとルフィを見つめているゾロに
ルフィは?マークを頭上に浮かべながら見つめ返していた…。


「ナミさ〜んvロビンちゃ〜んvデザートのお時間で〜すvv
 ついでにクソ野郎どもの分もキッチンにあるから適当に手前らで持ってけ。」

突如キッチンのドアを開け、女性陣には優しく。
男性陣には煙草を吹かしふてぶてしい態度で告げるサンジ。
しかし、ゾロはサンジの姿を見た瞬間ルフィに感じた違和感の原因にようやく気付いた…。
(なんでルフィから…?)
そんな疑問を頭の中で並べても答えが出てくれはずも無く。
しかしながらルフィの動きに合わせて起こる風には間違いなく
サンジの吸う煙草の匂いが混じっていた。

「ゾロ。おやつだってよvきっと今日のもすげぇ美味いぞ!
 ゾロの分も持って来てやるから一緒に食おぅ……わっ!!」

そう言って立ち上がりかけていたルフィの腕を掴み自分の元へ引き寄せると
ゾロはそのままルフィを自分の胸に抱きこんでルフィの肩に顔を埋めた。

「ゾ…ゾロ?どうしたんだ?なぁ、ゾロってば。」

抱きつくのはいつもルフィからなので滅多にないゾロからの抱擁に驚きと嬉しさを感じながら
自分の肩に顔を埋めるゾロの頭をポンポンと叩きながら聞く。
しかしゾロからの返事は一切無く、首筋に感じるゾロの息に頬を少し赤く染めながらもルフィは

「ゾロ〜。おやつなくなっちゃうぞ〜。」

などと反応を返さないゾロに訴えつづけていた。


どれくらいの間、そうしていたのだろうか…。
長い時間だったような、短い時間だったような。
ようやくソロがルフィを開放した頃にはサンジの煙草の匂いは消えうせ
ルフィ本来の匂いと入り混じったゾロ自身の匂いがルフィを包んでいた。

(うし…これでいい。)

心の中で1人納得したゾロ。
だが、ルフィは相変わらず頭上に?マークを浮かべ

「ゾロ…どうしたんだ?いきなり…」

と、聞いてきた。
その言葉に自分が突如起した行動にようやく気付いたゾロは一気に顔を赤くし

「あ…悪かったな、ルフィ。な、なんでもねぇ。うん、なんでもねぇんだ。」

一生懸命誤魔化そうとしてみたが自分の行動に気が付いてしまった今では
いつもより早くなった動悸が邪魔をして上手く言葉を話す事も出来ず…

「なんでもねぇわけないだろ?そりゃ、俺としては嬉しいけど…
 ゾロがこんな事するなんて滅多にないからな。」

誤魔化される事無くルフィは追求の手を伸ばす。
しばらくそんなやり取りを繰り返していたのだが勝ち目の無いゾロはようやく諦め
ぶっきらぼうに呟いた…。

「お前から………がしたんだよ。」

「へ?」

あまりにも小さな呟きで聞き取れなかったルフィはもう1度聞きなおす。
するとゾロはようやく諦めたのか、それともヤケになったのか

「お前からサンジの煙草の匂いがしたんだよ!!」

まるで怒鳴るように言い放った。
その怒鳴り声に呆気に取られていたルフィはプッと噴出したかと思うと
盛大に大笑いした。

「な!?ルフィ。この野郎!!笑うんじゃねぇよ!!!」

顔をさらに真っ赤にして講義するソロにルフィは

「そ…それ…多分、さっきウソップ達…と、サンジの煙草を1本…ククッ…頂戴して
 試しに吸ってたからだと思うぞ…クククッ」

目に溜まった涙を拭きながら真相を教えると、いまだ赤い顔のゾロにチュッとキスをして

「な?」

と、言った。
キスをした瞬間に感じた煙草独特の匂いと苦い味に納得したゾロは
照れ隠しのように

「紛らわしい事してんじゃねぇよ。」

ぶっきらぼうに言い放つと今度は唇からする煙草の匂いと味を消すように
ルフィに長い長いキスをした…。


02.8.24***


珠の家には3匹の犬が居まして、1匹が体を摺り寄せるとその後来た別の犬が同じ場所に
体を摺り寄せて自分の匂いを珠に付けていくのです。
そんな光景を見ていて思いついたお話です。
最初はサンルだったんですけど…ソロの匂いって汗しか思い浮かばず…(だって…ねぇ?)
そんな匂い移されても誰のにおいか気付けるのか自分自身疑問に思いソロルで
サンジさんの煙草の匂いに変更。(笑)
匂いっていつも一緒に居ないと違い分からないじゃないですか?
だからそんなちょっとした違いが分かる関係のお話が書きたかったのです!!


*ふと寄せていただいたところが、
 こんなお素敵なSSをUPなさっておられた珠サマでしてvv
 頂いて帰らなくてどうしますか、ええvv
 とゆ訳で、船長へマーキングしている可愛い剣豪でございまして、
 ちなみに、縄張りを主張する場合はこれをスプレイ行為と呼びます。
 どっちにしたって、俺んだという主張には違いなく、
 相変わらずに“萌え”なお二人ですvv
 珠サマ、ありがとうございますvv

堂本 珠サマのサイト『猫屋』へ ⇒ **


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