180・5話 「サンドラ河にて」


河を渡る最中、巨大な人食いナマズに襲われたところをルフィの弟子のクンフージュゴンたちに救われて、一行はそのままナマズの背に乗って移動することになった。

ジュゴンたちの群れは、チョッパーからあらかたの話を聞くとナマズの髭を引いたり周囲を警戒したりと皆で手分けして助けてくれている。

川幅が50qもある河を渡るためには、クンフージュゴン達の協力は天の助けに近かった。

「クオッ」

「クォックオックオ――!!」

「・・・・・なんて言ってんだ、そいつら」

先ほどからずっとジュゴン達と会話をしているチョッパーに、この状況にようやく慣れて余裕の出来たウソップが尋ねる。

「どうしてアルバーナまで行かなくちゃいけないかって話をしてたんだよ」

チョッパーの言葉に、全員の視線がそちらに集まった。

どこか申し訳無さそうな顔をして、ビビもチョッパー達の方を向いた。

「それで、ジュゴンさん達はなんて?」

「兄弟弟子たちの心意気を援護するッスって。自分たちにも出来る事があったら、何か言ってくれって言ってる」

「いま、こうしてもらっているだけで充分だわ。ありがとう」

人間の揉め事に動物たちを巻き込んでいるようで、ビビとしては気になるところだったのかもしれない。

ホッとしたような嬉しいような、どこか複雑な笑顔で礼を言った。

「オレ達はルフィの弟子じゃねえって言っとけよ」

裏手で突っ込みを入れながらウソップが、そこだけは譲れん、と主張する。

「う〜ん。そうだな」

上手く説明できるだろうかと首を捻りながら、チョッパーはジュゴン達に説明を始めた。

「クオ?」

「クォ?」

それでも一人一人順番に指さしながら、何事かを説明するトナカイにジュゴン達が感心したような声を上げる。

しきりに頷いているので、どうやらある程度は理解しているらしいと誰もが思った。

「クォッ?!」

「クォォッ?!」

突然、ジュゴン達が何かに驚いて大きな声を上げると、一人離れて座る剣士に尊敬の眼差しを向けた。

困ったような顔をしているチョッパーに何かまた質問して、頷きあうとゾロの前に整列する。



「ウォッス!!」



「・・・・何だ?」

いっせいに頭を下げられて、ゾロは眉間にしわを寄せた。

「おい、チョッパー」

剣呑な目を向けられたチョッパーが首を竦めながら口を開いた。

「弟子じゃなかったらなんだって聞かれたから、みんなの仕事を説明したんだ」

「・・・なんか、分かった気がするぞ」

「そうね」

横でこっそりと、ウソップとナミが囁きあっている。

「それで?」

何となく嫌なモノを感じながら、ゾロは問いを重ねた。

「それで、オレ達は海賊で、ルフィの船に乗ってるんだって言って」

ジリジリと下がっていきながらトナカイが答えた。

「ナミは航海士で船の進路を調べて、サンジはコックでみんなの食事の支度とかして、ウソップは砲撃手で」

「そして海の勇者だって言っとけ――って痛ェなゾロ!」

「それから?」

余計な口を挟んだウソップの頭に、鞘に入れた刀の先で突っ込んでゾロが先を促した。

ラクダに退路を阻まれる形となったチョッパーは、タラタラと汗を流しながら続けた。

「オレは医者で、ルフィの船の船医だって言って。・・・・で、ゾロは」

「・・・俺は?」

「ゾロは剣士だって。ルフィの次に強いらしいって言った。で、何してるのかって聞かれて・・・だから、いつもはルフィの世話してるって」

「へえ?」

笑顔が怖い・・・チョッパーはラクダにしがみついた。

「でも間違いじゃねェしな」

「そうね、あながち間違いじゃないわね」

頷きあう航海士と砲撃手の隣から、ビビが遠慮がちに口を挟んだ。

「それで、どうしてMr.ブシドーにお辞儀するのかしら」

「それで。世話してるって事は、一番弟子なのかって言うから、そうじゃなくてゾロはルフィの特別なんだって説明したんだけど。・・・そしたら、『師匠のご夫君に挨拶するッス!』って・・・」

「ご夫君!!」

「ブハッ」

クンフージュゴン達は意外にさばけているらしい。

盛大に吹きだしたナミとウソップを睨みつけて、ゾロがチョッパーに目を戻した。

涙目になったトナカイが慌てて説明をする。

「オレも、間違いだとは思うけど!でもジュゴン達はそう思ったんだって!!」

「ウォッス!」

「なんて言ってるの?」

「・・・師匠のご夫君とは知らずにとんだ失礼をしたッス、だって」

「クォ!」

「・・・とりあえず道中、肩でもお揉みするッスって」

「訳すな」

「はいっ」

ゾロに脅しつけられて、チョッパーは慌てて口を閉じる。

不機嫌な声で、ゾロが更にチョッパーに言った。

「それから訂正しとけ」

「そうね、チョッパー。ちょっと違うわ、それ」

「何が?」

「おお。あいつら、式はまだなんだ」

「クオ!!」

ウソップの言葉にジュゴン達が色めき立った。

「今度は何?」

「ええと。『フィアンセ』って何?」

「結婚の約束をしてる相手の事よ」

「ゾロがそれかって」

「それよ」

「・・・・・・そしたら、お二人の結婚式には是非呼んで頂きたいッスって。お祝いを持って参上するッスって」

「お祝い!!」

「ジュゴンが参列!!」

ジュゴン達に囲まれて祝われる船長と剣豪。

――新婚旅行への乗り物は、やはりこの場合サンドラマレナマズだろうか。

二人の入れたロクでもない半畳に、もはや訂正する気も失せたゾロはただ黙り込んだ。

腹を抱えてひいひい言う二人組を見ながら、笑って良いものかどうかビビが戸惑っている。

「遠慮なく笑った方がいいぜビビちゃん」

「ええ。でも」

「笑うとこじゃねえな」

「ええ。でも」

嫌がらせにニヤつくコックと不機嫌も絶頂の剣士に挟まれて、ビビは困りきった。

「――とりあえず、先を急ぎましょう」

「クォーッ!!」

「師匠の結婚式を無事に挙げるために、全力で泳ぐッスって」

「・・・・・もういい」

目的をはき違えて張り切るクンフージュゴン達の姿に、額に青筋を立てたままゾロは唸る。

熱い空気に揺らめく、対岸の景色に目を向けた。

とにかく、向こう岸に着くまでの辛抱だ・・・。





灼熱の温度も、流石に水の上までは届かないらしい。

巨大なナマズの背の上で、ほんの少しだけ息をつきながら、一行はアルバーナを目指す。

向こう岸まで、あと30分の出来事だった。




END


■      バカ話。12345hit自分で踏んだ記念。

180話といえば、ルヒは砂に埋もれてるわ血塗れで瀕死だわ、

トトおじさんは砂嵐に立ち向かうわ、という、とてつもなくシリアスかつ重要なお話のハズなんですが。

トリも最初に書いたのは、ルフィが一人で砂に埋もれている話だったし。

・・・でもそれはあまりに可哀相だったのでコチラに。

痛くないほうがいいです。やはり。

ちょっと息抜きしようと思って、ほぼ即興で書いちゃいました。



ゾロ番は募集していなかったのですが、12345hitはまたしても自分自身だった・・・がくー

もう少し、カウントリクエストを復活できそうにないので。

こんなものでよければ、ご自由にお持ち帰りどうぞなお話しにします。

(でも誰も要らないと思う・・・)

もしもお持ち帰りの際は、メールか掲示板でお知らせくださいませ。

黙って持ってっちゃダメッスv(だから誰も要らないって・・・)


しかしバカ過ぎ・・・・


                                      01.12.05 UP


 *と仰ってらしたので、お伺いしてからとっとと攫ってきてしまいましたvv
  トリコ様のお書きになられるお話は、
  ゾロルラーの心を、時にくすぐり、時には癒す、
  とってもツボを心得てらっしゃるものばかりvv
  アニメ組のMorlin.には、どういう状況かまだ判らないのですが、
  とりあえず、具体的な楽しみが増えました。
  このジュゴンたちは要チェックな訳ですね?(おいおい)
  皆さんもトリコ様の優しい世界へどうぞお運びくださいませですvv


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