(要訳)JM1THS/ZL3IS
| 訳者まえがき HF帯の電波は電離層に反射されて、うまく行けば地球の裏側にまで届く.ところが、同じ時に、同じ設備で、同じ周波数を使っても、隣接した県と交信するのが困難なことがある.これは、電波には地上波(直接波)と空間波(反射波)があって、その両方がとどかないスキップゾーン(不感地帯)があるためであることはよく知られている. 訳者は600Km離れた四国と交信するコンテストには7MHzで連続優勝できたのに、同じ7MHzで隣の埼玉県と交信するコンテストの成績は良くない.それは上記のような電波の伝わり方から、しかたのないことだと考えていた. ところがである、これを解決する方法があったのだ.それが近垂直放射空間波(NVIS)を使う方法である.このNVISの解説記事がBreak-In 2001年1/2月合併号P4-7に出たので、これを勝手に翻訳してここに紹介することにした. このNVISに関連したインターネットのwebsiteもけっこう多いようである.日本だけ研究が遅れているのかも知れない(最近、訳者はCQ誌などをさっぱり読んでいないので遅れているのかも知れないが・・・).もし、このNVISに興味を持ち、研究している人/グループがあれば教えていただきたい. |
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NVISは戦争でも使われた。
NVISはD−Day侵攻作戦の成功に重要な役割を果たした。 準備段階で垂直アンテナを使ったが芳しい結果が得られなかったのでHarold Beverage博士(そうです、あのアンテナで名声をはせた彼です)の意見を聞いた。 彼は関係者に、水平偏波・近垂直空間波(現在、NVISとして知られている)を利用するよう進言した。この侵攻作戦の間、クロスチャンネル通信回線の技術的な失敗例は皆無だった。 |
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| レピータや中継を使わず、深い谷間や密林から非常に高い山を越えて、そこから半径300Km程度の円内のどこかと通信する必要がありますか? できますか? これはHF帯でNVISを使えば可能なのです。 NVISとは? NVISは、もちろんその他の伝播方式と共に、ラジオ放送の初期の頃から存在していた。長い間知られてはいたが、今日に至るまでほとんど使われなかった。しかしNVISは最近になって開発が進み、今や陸軍(特にロシア人によって使われ、Zenith放射と呼ばれている)、オーストラリアの内地、第3世界で電気通信の基盤整備が貧弱、又は荒廃している所、人口集中してない広大な地域で採用されている。 また、NVIS伝播を採用する上で特別な装置や先端技術は必要ないというのが有利なので、熱帯地域の国々で商用放送にNVISが利用されている。 逆DX! 何故か?長距離通信(DX)においては地上波と空間波の両方が生ずる。(図−1参照)地上波の届く範囲は、地形、接地(アース)の形式、電力、周波数など多くの要因で決まる。我々は長距離通信を実現するため、できるだけ低角度の発射を追求し、電離層までの距離を出来るだけ長くする。その結果、最少の跳躍回数が実現する。 近距離〜中距離の範囲では、地上波(直接波)が無くなった所から、1回目の反射波が着地するまでの間の地帯が生ずる。これは、不感地帯またはスキップゾーンとして知られている。 DX通信を追い求める人もいるが一方、近距離〜中距離通信が必要な場合もある。非常通信訓練やフィールドデーコンテスト、ネット通信、国内の大部分をカバーしなければならない国内コンテストそれに短波帯を使うARDF(方位探知競技)などの場合である。 これがNVIS通信の活躍する場なのである。結局、密に木に覆われた深い谷間から非常に高い山を越えて、直径600Km程度の地域に、レピータやその他の中継手段を使わずに効果的に通信する場合、十分考慮するに値する方法である。それは商用電力が十分ある状態でも比較的小電力装置が使用できて有利であり、また、電力がしばしば供給不足か存在しない緊急の場合は非常に有利である。 |
| 図−1 通常の伝播方式 空間波も地上波(直接波)も受信できないスキップゾーン(不感地帯)があることに注意。 Figure 1. "Ordinary" methods of propagation-note the "skip zone" where neither skywave nor groundwave signals are received. |
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| NVISの仕組み? NVIS又は近垂直放射空間波は60〜90°の高角度で送信する事によって達成される(図−2)。その結果、基本的に自由空間を通して上方に進むので、反射してきたエネルギーは同様の角度で大きく減衰することなく到着する(これが密林やジャングルで非常に有利な理由である)。そうして、その下の地上にエネルギーが行き渡り、不感地帯なしに短中距離通信を可能にする。それは、スプレーノズル付きのホースを上に向けて傘の中に放水した場合、落下する水が円形の範囲を覆うのに似ている。 |
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図−2 NVIS伝播 適当な周波数の近垂直空間波が反射されて戻り、地上をくまなく覆う様子に注意。 そのため、狭い領域内は切れ目なく一様にカバーされ、いわゆるスキップゾーンはもはや存在しない。 Figure 2. NVIS propagation-notice how high-angle skywave of a suitable frequency are reflected back to saturate an area of the earth, so that they provide continuous short-range coverage with no gap-the so called "skip zone" effectively now no longer exists. |
| NVIS用アンテナは水平に低く設置すること NVISにおいて、この2つの点は非常に重要である。 アンテナは水平か又は出来る限りこれに近い状態にする、すなわち垂直でないこと。水平アンテナは垂直アンテナと比べてS/N比が良いという利点がある。最も簡単なNVIS用のアンテナは、非常に低い位置(7m/20ft以下)に設置された1/2波長水平ダイポールである。 NVISアンテナの最適な地上高は0.1〜0.25波長と計算されている。特定の周波数について、0.15波長の図がよく用いられる。この設定はダイポールアンテナの真下に約5%長い反射器を平行に付け加え、2エレメントビームアンテナを形成することにより更に高性能になる(明らかに接地損失が少なければ少ないほど好ましい)。主な考え方は、上方(又は天頂)への発射を最大にして低角度発射の空間波と地上波を最小にすることである。 ほとんどのアマチュアは、7MHz(波長40m)のダイポールアンテナを(多分3.5MHz/波長80mも)教科書に書いてある地上高1/2波長にあげるのは困難なので、これらのアンテナから当然ある程度近垂直放射はあり、少しはNVIS伝播をするかもしれない。 1/2波長ダイポールアンテナはシングルバンドアンテナであることを常に忘れてはならない。いくつかのバンドをカバーするためには、扇型ダイポール(図−11)や水平ループアンテナ(できれば1波長)が可能な解決策である。NVIS用に多くのタイプの水平アンテナが使える。しかし、ロングワイヤーアンテナは余り好ましくない傾向にある。理由は、ロングワイヤーは多バンドに使えるが、周波数が高くなるにつれて指向性を示すようになるのと、それらは不平衡型なので都市環境の中では電子機器への干渉の原因になるからである。 |
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| 図−3 標準教科書に記載されている地上高1/2波長のダイポールアンテナの発射特性。低角度発射のみで高角度発射は皆無であることに注意。 Figure 3. The radiation pattern of a dipole at the standard "textbook" height of 0.5 wavelength above ground. Notice low angle of radiation and no high angle radiation at all. |
図−4 NVISアンテナの垂直面発射特性。ほとんどの発射は上方向である。地上高0.25〜0.15波長に設置されたダイポールアンテナの特性図は類似の図になる。 Figure 4. The vertical radiation pattern of an NVIS antenna. Most radiation directed upwards. A dipole mounted 0.25 to 0.15 of a wavelength above ground produces a similar polar diagram. |
| 1波長ループとダイポール類(頂角の浅いインバーテッドVee/水平に近いほど良い、頂角は120°−140°を含む)が最大の性能を示すと考えられる。いくつかの高利得NVIS向けアンテナがある。これらの中にシャーリーアンテナ(後にその設計者シャーリーによって命名された)とジャマイカアンテナ(ジャマイカで英軍に使われたのでそう呼ばれている)がある。それらは、基本的にはモノバンド位相給電ダイポール型であり、数本のマストと比較的広い空間を必要とする。急に建てられるような代物ではない。 |
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| 図−5 シャーリーアンテナ 300Ω程度の平行線リボンから作られる。これは単線ダイポール比3dbの利得がある。 | 図−6 ジャマイカアンテナ 75Ωケーブルで給電。シャーリーアンテナの2倍、ダイポールの4倍の利得がある。 |
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| モービルNVIS? もちろん、モービルでNVISができる。しかし垂直ホイップを使ってではない。可能な限り水平に作らなければならない(これが軍やHF帯の設備を積んだ4WD車がホイップアンテナを後ろに結んでいるのをTVで見る理由である)。 現在はこれをやるのに好ましい方法が4つある。 |
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| 図−7 WA6UBE パトリシア ギボンスの車体前後ループ型NVISモービルアンテナ。 注:後方から給電し、終端は車体前方の風防ガラスの丁度上部に絶縁してある。 |
車体前後ループ型NVISモービルアンテナの後方から見た図。標準陸軍ホイップベースから給電している。 注:アンテナは、同調状態を安定に保つため、物理的に安定にしなければならない。 |
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| 図−9 アンテナの、通常は垂直な部分を可能な限り水平に近づけるアダプターの代表例 注:これは完全に正しい角度にはできないのでホイップアンテナの柔軟性を利用して水平になるように下方に結びつける。 |
図−10 モービルアンテナをNVIS通信用に設置するCodan社の方法(同社のNAVIS用キットを用いる場合)。アンテナをバンパーに取り付けた場合、立ち上がり部分は水平部が屋根から間隔がとれるようにする。ホイップに必要な長さをつけ加えて車の屋根溝に取りつけた非金属のひもでほぼ水平に保つ。 注:アンテナは屋根の最上部又はラックから最低1m離すこと。 |
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| 打ち上げた電波はおりてくる。しかし、適切な周波数を選んだ時だけである。これが重要な留意点No.3である。その性質上、NVIS通信は、勿論、その時電離層が反射する周波数に限られる。周波数が高すぎると貴重な高周波は電離層を通り抜けて宇宙空間に行ってしまう。その為、通常のサンスポットサイクルの間は2〜8MHz、例えば1.8MHz,3.5MHz,7MHz(サンスポットが最大なら多分10MHzが)可能だろう。夜間はより低い周波数(2〜4MHz)が使われる。夏と冬も、サンスポットサイクルと同様に伝播が変化する要因となる。通常、冬の間やサンスポットサイクルの谷では低い周波数が好ましい。電離が活発ではないからである。 NVISに好適な周波数は、FoF2層臨界周波数(これは上方に垂直に打ち上げた信号が電離層で反射する最高の周波数)より10〜20%低い周波数、例えば80%の周波数であるである。 |
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実用になる継続的なNVIS通信を維持し、24時間カバーするには、実際はいくつかの周波数が必要であり、通常、商業上/戦術上、日中、夜間、そのつなぎ用と最低3つの周波数が必要である。初期の頃は半波長ダイポールアンテナが多用されていたが、勿論これは単一周波数アンテナである。必要なのは勿論広帯域アンテナか多バンド用ダイポールのような型のアンテナである。前に述べた水平ループアンテナが1つの広帯域アンテナであり、また、商用の終端抵抗処理・広帯域フォールデットダイポール(T2FDアンテナとしてよく知られている)がある。不都合なことに、後者はインダクタンスのない純抵抗を使っているので広帯域のために利得を犠牲にしている。変形多バンドダイポールアンテナはいくつかあるが、扇形ダイポール(図−11)、ジャンパー線つき多周波数ダブレットアンテナ(図−13)、 |
| それとAS2259/Collins NVISアンテナ、これは2つの異なった周波数に同調した脚線を持った交差ダイポールである(図−12)。 しかしながら、その時、NVISに最適な周波数がアマチュアバンド外のこともあり、理想的な環境にない場合もある。その結果、通常、最適周波数より低いアマチュアバンドにまで降りて来なければならないこともある。まだ反射してくる信号があったとしても、他の電離層による吸収が増える上に、通常のノイズレベルがあがることを覚悟しなければならない。これが、何年間も、IARU(国際アマチュア無線連合)が5MHz近辺の周波数を少しでも、共用でもいいから、非常通信用とHF帯データ用にアマチュアに割り当てるよう主張している1つの理由である。データ通信はマルチパス歪みに悩まされるが、近中距離用NVISを使えばこれがはるかに少なくなる。米当局は、カリブ海ハリケーンネットとデータ通信ファンを含む自国のアマチュアグループに5MHzの伝播研究用に特別のコールサインWA2XSYを発行している。 |
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| 英国でも、RSGBがその実験に興味を示し、将来、試験を行い、同様の特別許可を当局から得たいと希望しており、それが、すでにNVIS研究を追求しているグループにとって大きな励みになっていると伝えられている。 NVIS通信に適切な周波数を決定する方法 そのサービスの一環として「リアルタイム・地域電離層地図」を作成している。通常、FoF2臨界周波数情報が商用又は学術用電離層反射波を受信することによって得られる。この電波は広い周波数にわたって直接上空に向けて発射されており、この反射波を受信してグラフ化することにより、その時点での臨界周波数が何MHzであるかを知ることができる。そうした後に特定の選ばれた地域の地図にグラフ化した型式で重ね合わせる。実際にNVISに使われるのは、この×0.80の周波数である。 ALEとその将来性 NVIS伝播は、特にアンテナの分野でモービル用でも固定局用でも、まだまだ多くの実験と自己訓練ができる可能性を秘めたアマチュア無線の領域である。ここで3つの要点を思い出していただきたい。アンテナは水平偏波用であること、高さが低いこと、適切な周波数の選択が何よりも大切であることの3つである。 交信相手局もNVISアンテナを使っている場合に最良の結果が得られるであろうということはいうまでもない。どうかお楽しみいただきたい。米国でいくつかのグループが、英国でも、少なくとも1つのグループがNVIS技術の実験を行っている。英国のグループは北西RAYNETチームであり、我々は他にもあるのではないかと大いに関心を持っている。 謝辞 追加情報と活動状況 ウェブ情報 http://www.tactical-link.com http://www.onelist.com/community/nvis http://www.raynet.demon.co.uk/raynet/hfteam.html http://www.wr6wr.com/products/book_nvis.html http://www.cebik.com/cb.html http://members.aol.com/ka8zvv/packet/packet_nvis.html http://www.scn.org/IP/nwgrp/archives/apr98/nwgapr04.htm http://www.ci.san-jose.ca.us/oes/races/hfradio.htm http://www.gordon.army.mil/acd/tcs/hf/2418xtr2.htm http://www.ether.ulst.ac.uk/projects/hf_prop.html http://www.codan.com.au http://www.iinet.net.au/~barrett http://www.shakespeare-products.com/military/catalog/page4.jpg http://www.chbrain.dircon.co.uk http://www.wunclub.com |