複合材料のRTM成形における樹脂浸透性に関するマルチスケール解析
大阪大学大学院 生産科学専攻 機能化設計学講座 構造知能化設計学領域 岡崎 亨
概要
RTM(Resin
Transfer Molding)法は,維持コストの高いプリプレグを用いず,脱オートクレーブを実現する成形法であることから,高い生産性を有する繊維強化プラスチック(FRP)の低コスト成形法として期待されている.
このようなRTMによる生産を潤滑に行うため,型設計や強化布設計といった設計パラメータを決定するべくRTMプロセスシミュレーションの研究が欧米諸国を中心として盛んとなっている.しかし,現在のシミュレーション技術は,総じて成形プロセスの個別要素技術を局所的に追求するものが多いため要素技術間の連携がなく,また,実際の設計パラメータ決定にフィードバックすることができない.その上,各個別要素技術にもそれぞれ未解決の問題点が残っているため,実用性に欠ける.
そこで本研究では,RTM含浸プロセスシミュレーションの中で最も重要であると考えられるフローシミュレーション(解析)に着目し,問題点の解決を目指した.また同時に,ドレープシミュレーションとのリンクを図り,型設計と強化布設計にフィードバックを行うことを目的としたマルチスケールRTMシミュレーションシステムを提案した.これを実現する数値解析手法として,マクロ―ミクロ挙動の相関を考慮できる均質化法を用いる.本論文では,RTMに多用される平織りプリフォームに提案手法を適用し,結果を評価するとともに本システムの有用性について述べる.具体的には,まず,含浸プロセス解析において重要なパラメータとなる樹脂浸透テンソル(Permeability tensor)を数値的に求めた.これにより,テンソルを予備実験により求める従来法と比較し,飛躍的な簡便化が可能となる.また本手法は,均質化法を用いることから,様々な繊維ミクロ構造に対しても適用でき,ドレープシミュレーションとの連携も強化させる.さらに流れ性の評価には,ダルシー則(Darcy's law)による従来のマクロな評価法に加え,よりミクロな観点からの評価を行った.ミクロな流れの評価はボイド形成の原因となる含浸不良の判定への発展性について考察した.
第1章
緒言
新しい世紀を迎え,めまぐるしい科学技術の進歩,生活水準の向上とともに資源浪費,環境汚染の問題がますます深刻化している.これはひとえに,20世紀半ばから今日に至る世界的な高度成長時代が生み出した人類の負の遺産に他ならない.この半世紀間,人類は数々の開発・発明を成し遂げ,高等な社会を生み出したが,その反面,人類が受け取った地球の汚染という代償は非常に大きい.そこで,あらゆるものが開発し尽くされ,科学技術の発展が飽和状態にあるといわれる現代,地球規模での環境汚染の抑制,もしくは環境の清浄化を目論む技術開発に注目が寄せられている.世界有数の資源浪費国である我が国では,特に,住民の生活に欠くことのできない移動手段(自動車等)の燃費低減が重要課題の一つとされ,現在の機能水準の維持を前提条件とする環境に優しい乗り物の開発が望まれている.近年,普及が始まり,その成果が現れてきているハイブリッドカーは,従来法であるガソリンのみの動力に,電気エネルギーによる動力を与えることにより,機構の面での省エネルギー化を実現した第一例である.一方,慣用材料を新材料へと置き換えることによる,材料の面での省エネルギー化も同様に考えられてきた.具体的には,鉄鋼が主であったボディの材質に繊維強化プラスチックを用い,軽量化を行うことによって燃費を抑えるというものであり,既に一部の自動車メーカーが市販車に採用している1), 2).
繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics: FRP)は,強化材(繊維)と母材(樹脂)の組み合わせにより,多種多様な性能を発揮し,使用者のニーズに答えることのできる設計自由度を持つことから,別名,Tailored Materialとも呼ばれている3).FRPの自動車への適用が考えられてきたのは,従来の主力材料である金属と比べ,成形加工性,比強度,比剛性に優れている点4), 5)にある.軽量でかつ高弾性率を兼ね備えていることから,自動車に限らず,各種航空機・宇宙機材7),船艇材料8),建築資材9),道路補強材10)など,利用されている分野は多岐に渡り,これからの時代の主幹を担う材料として期待が集められている.FRPは従来,その非リサイクル性から,環境を悪化させる材料とも位置付けられてきたが,近年,様々なリサイクル技術の発達11)により,地球環境に優しい材料としての地位を確立しつつある.1942年,第二次大戦中に米空軍機のガソリンタンクとして適用されたFRP製品第一号はGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)製であった12)が,60年を経た今日,その種類は多様となっている.先進複合材料(Advanced Composite Materials)に含まれるCFRP(カーボン繊維強化複合材料)やArFRP(アラミド繊維強化複合材料)は,次世代の航空・宇宙産業を担うFRP材料であるが,基本的な成形法はGFRPと同様であり,剛性,強度を極限まで高めた材料の設計がなされている.
複合材料の発展の過程に準じて,その成形法も数多く誕生した.製品コストを考える場合,基材コストのみならず成形コストや加工コストに注目することは重要である.CFRPの場合,最も一般的な成形法は,強化繊維にあらかじめ樹脂を含浸,半硬化させておく中間基材としてのプリプレグを用い,これを任意の方向に積層し,オートクレーブで加圧・加熱して成形する手法である.しかし,本手法では,高温・高圧を賦与することのできる特殊な成形装置が必要であり,また,高圧をかけるための大量の窒素ガスの必要性に由来するランニングコストの高さ,プリプレグの積層に関わる切断ロス等の問題により,一般に基材である炭素繊維のコスト以上に高価になる場合がある.オートクレーブ成形は,環境負荷の面からも同様に問題視され,近年,脱オートクレーブ法を目指す成形法が普及しつつある.ハンドレイアップ法やスプレーアップ法,フィラメントワインディング法は,比較的古くから実用されてきた複合材料の成形法である.オートクレーブと比して廃棄物の量は一般に少なく,環境を考慮した成形法であるといえる.しかし,各所で作業者の手間を必要とするこれらの成形法は,先進複合材料として次世代を担うFRP製品の大量生産には不向きである.また,人手作業による成形品質のばらつきも問題である.そこで近年,大量生産,安定品質,低廃棄物の条件を満たすFRPの成形法としてRTM(Resin
Transfer Molding)法に期待が寄せられている.同様の条件を満たし注目されている引抜成形法(プルトリュージョン法)と比較しても製品形状,サイズに対する自由度が大きく,簡便であることから,現在,工業におけるFRP成形法の主流となりつつある.
RTM成形法をはじめとするLCM(Liquid
Composite Molding)では,強化繊維布から構成されるプリフォーム材が賦形された後,型を密閉し,真空状態にさせることで樹脂の含浸がなされる.ここで評価が必要となるのは,含浸における樹脂流の把握であり,含浸不良によるボイドの発生等は,そのまま製品の質を大きく左右する重要要素となることから,実験的手法,数値解析的手法の両面から様々な研究によるアプローチがなされてきた.しかし,実成形を手順に従い統括的に評価できる手法は現在までになく,実験と数値的予測を併用せざるを得ないという現状がある.
そこで本研究では,均質化法を用いた数値解析により,RTM成形における樹脂浸透性の総体的な予測・評価を行う.均質化法は元来,摂動法を基礎とする数値解析理論として確立され,現在ではマルチスケール解析手法として位置付けられている.従来は固体問題に対する適用が主であったが,近年,固液複合体に対する定式化がなされたことから,こういった成形型内における樹脂流の解析にも適用できるに至った.均質化法は,既述のとおりマクロ挙動とミクロ挙動を同時に考慮することができるマルチスケール解析手法であることから,含浸状態における成形体全体の流れの評価と,繊維構造の違いに左右される詳細な流れの評価を一括して行うことができる.また,本計算手法をベースとした解析システムでは,プリフォームの賦形から樹脂の含浸までを,予備実験なしにすべてシミュレートすることができ,複雑困難な浸透性評価実験を回避できる.本論文では,まず,現在行われているRTM成形法とその成形プロセスシミュレーションにおける問題点を明らかにし,提案する均質化法を用いたマルチスケールRTMプロセスシミュレーションの有用性について述べる.続いて,RTM成形に多用される織物複合材料(平織りプリフォーム)に本解析システムを適用すると同時に,樹脂浸透性の評価手順に関する説明を行う.また,得られた結果に対する知見を述べる.最後に,本提案システムの有用性をまとめるとともに,実生産現状に即した本手法の発展性について述べる.
なお,本論文は全5章で構成されている.
第2章では,RTM成形法の概要と評価が重要となるプロセスについて述べ,現在盛んに研究がなされているRTMプロセスシミュレーションの現状と課題点について列挙,説明を行う.また,課題解決のために必要な評価要素を述べ,均質化法を用いたマルチスケール解析手法を適用した新評価システムの提案を導く.
第3章では,まず,提案システムで用いられる数値解析手法・均質化法の成り立ちと現在に至るまでの歴史,考えられている均質化法のこれからの応用性について記し,本研究に着目した理由を述べる.次に均質化法を用いた浸透流に関する定式化を行い,具体的な提案システムの構成について詳述する.
第4章は,RTM成形で多用される平織りプリフォームに本マルチスケールRTMシミュレーションを適用し,繊維構造の賦形を考慮したマクロな樹脂透過性評価を行うと同時に,ミクロな流れ場の考察・評価を行い新しい知見を示す.
第5章では,本研究によって得られた成果をまとめ,実成形法における本研究の位置付けと発展性について述べ,結論づける.
第2章 RTM成形法とそのプロセスシミュレーションの現状と課題
2.1 RTM成形法
近年,米国を中心として,複合材料の生産に"Affordability"という指標が導入されつつある13).これは,製造コスト,開発コストと運用サポートコストの削減を含め,かつ,重量軽減,疲労寿命の向上や高い運用温度も満足する高機能低価格性を目標とするものである.ここでキーとなるプロセスは,製造のための設計ガイドラインの作成やツールの開発を通じ,デザインと製造を一体化することであり,材料スペック,試験,デザイン,特性の標準化が共通認識として不可欠となっている.複合材料,特に繊維強化プラスチックは,近年,その比強度,比剛性にますます優れるものが現れ,鉄鋼に代わる材料として位置付けられる時期も近いと思われる.ただ,汎用材料として認識されるためには,製造における低コスト化,大量生産を実現する必要があり,上記のAffordabilityを満足するべき新しい製造法(成形法)が求められてきた.
複合材料の成形法には,ハンドレイアップ法1), 6)やスプレーアップ法6)が代表として挙げられる.これは,作業者が熱硬化性プリプレグシートを積層し,硬化させる工法である.多品種少量生産を考える場合,こういったハンドメイド工法は有効であろう.しかし,次世代の工業を担う材料としての大量生産ラインを考慮する場合,一製品に人手を要する製造法の適用は非現実的である.また,上記二工法では,作業者如何により製品品質にばらつきが生じ,高品質を維持できる生産ラインは実現し得ない.そこで,高信頼性を追求するFRPの製造工法としてオートクレーブ法1)が誕生した.これは,まずプリプレグテープから切り出したパターンを積層し,次に種々の補助材料を組み合わせて成形用のスタックを作成,そのスタックを,真空バッグで覆ってからオートクレーブ装置にて数種の温度条件下で成形をなすものである.オートクレーブは,上記のハンドメイドタイプの工法と比較し,高信頼性を維持できる工法であることから,現在,実用化されつつある航空・宇宙材料としてのFRP製品の製造に多用されている.しかしオートクレーブでは,成形工程で重要となる温度条件の管理が非常に複雑であり,また,そのような温度条件を満たすことのできる成形空間も必要となる.よって,品質の向上を追求すればするほど,その製造コストが膨大化するという問題が残っている.また,本工法による量産化も難しい.
そこで,コスト,品質の両者を満足するAffordability性に優れたFRPの成形法として,欧米を中心とした諸外国において、RTM(Resin Transfer Molding)法1),13),14)が注目を浴びている.RTM法は,比較的サイズの大きい製品の成形に対し,脱オートクレーブを実現する成形法13)であり,また,従来の慣用材料であり維持コストの高さが問題であったプリプレグを用いないことからも,同時に製造の低コスト化を計るものである.
RTM成形では,一般に雌雄一体の型を用いる.この一体の型の間隙にまず,材料である布を沿わせる.このような材料の状態をプリフォームといい,この賦形プロセスはドレープ(Draping)と呼ばれる.ドレーププロセスは,型の形によって布の繊維構造に様々な変形が生じる工程である.材料に用いられる織布や組布は変形能に優れていることから,ドレープ性のよい材料としてRTM成形法において繁用されている.ドレープ後は型を閉じ,型内を真空化させることにより樹脂を注入,含浸(Resin transfering)させる.最後に樹脂を硬化(Curing)させ,離型(Demolding)する.成形品のバリ取りなどの最終処理を行った後,完成品を得る.ここで,良品質の製品を得るために重要であるとさ
Fig. 2.1 Schematic of resin transfer
molding (RTM)
れる評価項目は,ドレープにおける繊維構造の変形度合と,樹脂含浸時における流れ性である.まず,前者について,繊維構造の変化は,後の樹脂含浸工程において,その流れ性に差異を生じる原因となる.近年,変形能を要求される様々な構造体に対して,RTM成形品の適用が考えられていることから,ドレープ性のよい材料を採用すると同時に,工程で生じる構造変形の評価も重要となっている.また,後者の樹脂浸透性は,ボイド形成の原因となる含浸不良の評価が主である.成形体における樹脂浸透性の差異は,材料として用いる布の種類やその配置,先に挙げたプリフォーム材の繊維構造の変形,樹脂注入口(Inlet),流出口(Outlet)の位置の違いなどによって生じると考えられている.ボイドの形成は,成形品の質を著しく下げる要因となることから,浸透性の評価についても非常に重要な項目である.また,完成した成形品の力学的特性を検査するための応力評価も同様に重要である.
2.2 RTMプロセスシミュレーション
こういったRTM成形の研究を進めるため,現在,特に欧米を中心とする諸外国においてRTMプロセスシミュレーションの研究が盛んに行われている15)-20).RTMプロセスシミュレーションの主目的は,実験による試行錯誤を行わず,いかに質の良い成形体を得るような設計パラメータを設定するかにあると考えられる.RTM成形法における設計パラメータとは,材料として用いる布の種類,ドレープ時の布の配置,型の形状,樹脂注入口と流出口の位置と設置する数の5要素である.RTMプロセスシミュレーションは,具体的には,Table 2.1に示すドレープシミュレーション,フローシミュレーション,硬化解析,応力解析の4つのカテゴリーとして確立されている.実際のRTM成形手順を考えれば,これら4つのRTMプロセスシミュレーションは順序立てて統一的に利用され,先の5つの設計パラメータの設定に役立てられるべきであると考えられる.しかし,実状としてこれら4つのシミュレーションカテゴリーはそれぞれ独立してある程度の発展を遂げ,また,各所いくつかの問題点を有している.
まず,ドレープシミュレーション(Draping simulation, Draping
analysis)は,糸の伸張や繊維構造のせん断変形,糸と糸が交差部において滑ることによる移動などの現象を考え,ドレープ後の布の変形状態を評価するシミュレーションカテゴリーである16).Fig. 2.2に示す糸の伸張(Fiber stretching)の評価は,糸の直径をDとしたとき,
(2.1)
となるひずみの閾値emaxを基準とするクライテリアを用い良否を判定する.ここでは,糸の断面が完全なる円形のものより,扁平した形状のもののほうがよ
Table 2.1 RTM process simulation
(a) Before stretching (b) After
stretching
Fig. 2.2 Schematic image of fiber
straightening deformation mode16)
りよい伸張性を有するということが知られている.
Fig.
2.3に示す繊維構造のせん断変形(Shear deformation)の評価についても同様に,式(2.2)で与えられる限界ひずみ値emaxによる判定がなされる.
(2.2)
ここで重要となるのはせん断角度aの評価である.Fig. 2.4に示すように,せん断変形が生じる場合,繊維構造はロッキング(Locking)という現象を起こす.
(a) Before shear deformation (b) After shear deformation
Fig. 2.3 Schematic image of shear
deformation mode16)
(a) Characteristic
transition (b) Locking angle a by
locking
Fig. 2.4 Definition of locking angle16)
これは,織り構造のため,せん断角度がある値以下にはならないという現象であり,このときのせん断変形角度をロッキング角度(Locking angle)という.布としてのせん断変形特性は,ロッキングにより経糸・緯糸の特性へと遷移してしまうことから,せん断変形解析では角度aについても評価を行い,ロッキングが起こらないような変形状態を判定している.最後に,Fig. 2.5に示す糸と糸とが交差部において滑ることによる移動(Slip)の評価は,交差角度qをパラメータとし,元の糸の位置(Original yarn spacing)と変形後の糸の位置(New yahn spacing)の関係を求める解析によりなされる.具体的には,式(2.3)を用いた評価が行われ,規定値0.035〜0.046に含まれるものを良とする.これらの計算結果は,RTM成形における糸の選定や布の配置設定に用いられ,ドレープ性の評価に有効となる.
(2.3)
Fig. 2.5 Schematic image of slip
deformation mode16)
Fig.
2.6は,上記3つの評価基準を用いて布の配置の違いのみによって現れるドレープ性の差異を解析したドレープシミュレーション結果16)である.
(a) Initial 90°
(b) Initial 70°
Fig. 2.6 Effect of fabric placement on
draping16)
上記の結果が示すとおり,RTM成型における布の選択と配置の違いは,ドレープ性の差異を生み,最終的に樹脂浸透プロセスに大きな影響を与える.したがって,これら2つの設計パラメータの設定は,製品の品質を左右する重要なプロセスとなっている.
また,Fig. 2.7は自動車のセンターピラーにFRPの適用を考えた場合のドレープシミュレーション結果16)である.
(a) Actual draped structure
(b) Simulation
Fig. 2.7 Example of draping
simulation for a center pillar of an automobile16)
図が示すとおり,こういったシミュレーション結果は実現象とほぼ対応しており,したがって,本シミュレーションカテゴリーは,研究過程としてほぼ完成の域に達したといえる.しかし,適用化が可能なのは平織布のみであり,ゴム編などの変形形態が複雑である織布の評価手法は未だ確立していない.
第二に示す,フローシミュレーション(Flow simulation)は,式(2.4)に示すダルシー則(Darcy's law)と連続の式を用いて,樹脂含浸時の浸透性を評価するシミュレーション分野17)-19)である.
(2.4)
ダルシー則は多孔体中の粘性流体に関する速度式であり,樹脂の流速Viが係数Sijに対して,圧力勾配 に比例し,粘性mに反比例することを示すものである.この係数は,樹脂浸透テンソル(Permeability tensor)と呼ばれるものであり,樹脂の浸透性を議論する上で重要なパラメータとなる2階テンソルである.フローシミュレーションの結果は,型の設計や樹脂の流出入口の配置設定に用いられる.しかし,本カテゴリーにおいても問題点が存在する.まず挙げられるのは,入力値となる樹脂浸透テンソルのデータベース21)の不足である.先にも述べたとおり,布の繊維構造は,ドレーププロセスにおいて,各部で様々な変形形態をとる.従来から,樹脂浸透テンソルは実験により計測されてきたが,幾多の変形形態に対して実験を行うことは非現実的であり,データベースが存在し得ない現状となっている.また,前者のドレープシミュレーションとのリンクが行えていないことから,予測された繊維構造の変形を樹脂浸透テンソルの設定に反映させることもできていない.続いて挙げられる問題点は,現在のシミュレーション手法において樹脂含浸の良否を判定することができないことである.フローシミュレーションの目的は,成形体の品質を左右するボイドの形成原因となる含浸不良を議論することである.しかし,含浸の良否には,糸の交差形状やうねりといった要素が複雑に絡んでいる.また,布を流れる樹脂の流れには,繊維束と繊維束の間を進む流れ(Inter-tow)と繊維束内を進む流れ(Intra-tow)があり,Fig. 2.8に示すように,Inter-towとIntra-towの交差部
(a) Formation of micro-voids (b)
Formation of macro-voids
Fig. 2.8 Process of void formation by
cross-flow22)
で生じる流れのゆらぎ(Cross-flow)が含浸不良を誘発し,ボイドを形成させるとの報告22)もある.したがって,含浸不良に関する議論を行うためには,よりミクロな観点による評価が必要となる.現在の主流である,一成形体に対して単独の樹脂浸透テンソルによって評価がなされるフローシミュレーションではこのようなミクロな評価が行えず,フローシミュレーション元来の目的が達成できていない.樹脂の浸透性評価は,RTM成形法の中でも最も重要な位置を占めることから,これらを考慮した新しい評価法の構築が望まれている.
第三に示す硬化解析(Curing analysis)は,樹脂の硬化収縮を考えるものである.樹脂含浸中の不良は,先に述べたとおりボイドという形態で現れるが,硬化後の不良は,樹脂の収縮による損傷という形で発現する.これら両者は,形成過程は異なるものの,硬化後の強度低下の原因となるという点では共通していることから,含浸不良の評価と同様,硬化解析は重要な評価プロセスとして発展を遂げた.しかし,本カテゴリーにおいては,製品の質を大きく損ねる原因となる座屈損傷の評価が行えないことが最大の問題点となっている.
最後に示す応力解析(Stress analysis)には,特に強度・靭性と寿命評価のため,数多くの汎用アプリケーションが市販されている.現在では,熱変形問題,弾塑性問題をはじめとする様々な非線形問題に対応するものも様々開発され,計算機の能力向上と共に,シミュレーションができない問題の範囲を狭めてきた.しかし,ここでは,上記した3つの成形プロセスシミュレーションとのリンクが不完全であることから,入力値である成形条件の設定について,これまでのシミュレーション結果が反映されないという問題点が残っている.以上述べたとおり,これら4つのRTMシミュレーションは,個々の技術としてはある程度の完成を見ることができるものの,問題点を持たないものはない.4つの独立したRTMシミュレーション技術の統一化を考えた上で,品質のよい製品を生産するためには,まず,これらの問題点を解決することが必要不可欠である.
そこで本研究では,評価が最重要でかつ問題点の多いフローシミュレーションに着目し,これらの問題点の解決を目指すべく,樹脂浸透性の新評価法を提案する.次章に詳述する"コンシステント・マルチスケールRTMシミュレーション"は,ドレープシミュレーションによって得られた繊維の変形を考慮した樹脂浸透テンソルの予測を行う.また,樹脂の浸透性評価については,繊維構造をベースとしたミクロスコピックな観点により,含浸不良に関する議論への発展性を導くものである.
各カテゴリーにおいて問題が残されているのとは別に,カテゴリー同士のリンクが不完全であることももう一つ挙げられる問題点であろう.良質の製品を得るための設計パラメータの決定は,布の選定から応力評価までを統一した判断基準により行われるべきであると考えられる.マルチスケールな観点から樹脂の浸透性を評価することは,既述のとおり,含浸不良の評価に重要であるが,またさらに,繊維の基本構造の違いが重要となる布の選定や配置といった設計パラメータの設定にも本提案手法をはじめとするマルチスケール評価法は十分に効力を発揮する.
なお,本提案手法では,マクロとミクロの両力学的挙動を考慮できる均質化法によって上記の問題を解決している.次章では均質化法の概要を述べるとともに,本手法についての詳細を述べる.
第3章 マルチスケールRTMプロセスシミュレーションの提案
3.1 均質化法の従来の研究
均質化法は,2変数によって支配方程式を記述し,漸近展開形の解を探すもので,数学的整合性を保持しながら微視(ミクロ)構造と巨視(マクロ)構造を結びつけることによって等価な均質体の支配方程式を誘導する方法論である.ミクロとマクロを漸近展開式から結びつけるという点で,これまで理論力学や実験力学で議論されてきた他の方法論と一線を画す.均質化法は,1970年代中頃に,元来,時間軸に対して用いられていた摂動法の考え方を空間の変数に拡張し,微視領域に分布する材料の構成関係から巨視的な力学特性を導く理論として誕生した.非線形波動問題に摂動法を適用していたKellerが,この理論をPapanicolouに持ちかけたことから,数学理論の確立に向けた組織的な研究が,Lions23)を中心とした応用数学者の中で始まった.これらの応用数学者の一員であり,均質化法(Homogenization method)の命名を行ったとされるBabuska24)は,代表体積要素(Representative Volume Element: RVE)の考えを取り入れ,後の均質化法の発展を担った一人である.1980年にはSanchez-Palencia25)による教科書の刊行を切欠として,Duvaut26)やLene27)によって複合材の力学理論への本格的な適用が図られた.さらに1990年代に入ってからは,Guedes28)とKikuchi28)によって,有限要素法をはじめとする構造解析の分野に対する均質化理論が体系化され,均質化法が本格的に力学的評価の分野へと適用されるに至った.最近では,計算機の能力向上とシミュレーション技術の発展に伴い,実用化を見据えた均質化法の応用研究が多く行われている.
力学的実挙動を解析するべく考えられている均質化法の応用体系に,非線形問題に対する均質化理論の対応がある.従来考えられてきた均質化法は適用範囲が線形範囲内のものであり,材料の非線形性に対する考慮はなされていなかった.しかし近年,ナノスケールベースの設計が目論まれ,よりミクロな観点から材料を把握することが重要とされてきたことから,非線形均質化法の研究が盛んに行われるようになった.
Fig.
3.1に示すのは,編物複合材料平板の深絞り成形プロセスを,編み構造をベースとしてシミュレートした結果29)である.内容としては,区間線形理論を適用し,各時間において編み構造の変形を考慮したミクロモデルを定義することにより,成形体のマクロな大変形挙動を解析するものである.研究では,成形体各部のひずみ値について,解析・実験の両者がよく一致したことが導かれている.深絞り成形法は,缶飲料容器の製造などに慣用され,材料に鋼やアルミの平板を用いるものとしては定番である.しかし,新世代の材料と称されるFRPを材料に適用する場合,複合材料特有の異方性,不均質性により,基材である布(繊維構造)の変形は複雑となる.繊維構造の変形のばらつきは,成形体の各部におけるひずみ集中を誘発し,成形不良部を生む原因となることからその評価は重要となる.
こういった成形・製造現場におけるシミュレーションの意義は,実型による試行錯誤を行わず,良品質の製造品を得ることができる型,材料を設計・設定することである.特に複合材料を材料として考える場合,強化材の配置や構造が全体挙動に及ぼす影響が大きく,型の良し悪しのみで完成品の質を計れるも
(a) Macroscopic
deformation (b)
Microscopic deformation
Fig. 3.1 Multiscale deep-drawing
simulation for knitted fabric composites29)
のではない.こういった複合材料の深絞り成形は,現在のところ一般化していないが,実験を行わず,シミュレーションのみで設計パラメータを設定することは,複合材料の製造において非常に重要であり,構造のミクロな変形を考慮した実形状に正確なモデル化が行える均質化法の適用は有効であると考えられる.
成形のプロセスに沿った上記のような解析の他に,複合材料の評価において重要となる損傷解析にも均質化法の適用は有効である.Fig. 3.2は複合材料製の自動車パネルに荷重が与えられる場合を考え,そのときの繊維ミクロ構造における損傷状況(損傷位置の判定と損傷モードの判定)を,均質化法を用いた解析により求めた結果30)である.損傷モードは,図中に示すとおり,その形態からMode L, Mode T&TL, Mode
Z&ZL, Mode TZの4種に分類されるが,解析によれば,マクロ構造における応力解析と,ミクロな応力・損傷評価が同時に行え
(a) Damage mode (b) Macroscopic
boundary condition
(c) Multiscale stress analysis (d) Evaluation of failure characteristics
Fig. 3.2 Mesoscopic
evaluation of strength of woven fabric composites30)
ることが示されている.次世代の材料として考えられている複合材料は,鉄をはじめとする慣用材料と比べ,高機能を有する反面,その品質管理には細心の注意を払わねばならない.材料の損傷解析は複合材料製品の信頼性を左右する基本的でかつ重要な評価法であり,複合材料の基本単位である繊維構造の観点から損傷の予測ができる均質化法は,以降,重要視されると考えられる.
また下記は,ミクロ構造の違いにより引張試験時に観察される延性や繰り返し載荷時に発現する鋼のバウシンガー効果の程度の差異を解明するべく,均質化法を用い鋼の弾塑性挙動のメカニズムを追求した研究結果31)である.
(a) Modeling of microstructure of
steel (b)
Stress-Strain curve
Fig. 3.3 Microstructure-based analysis of
Bauschinger effect31)
ここでは,均質化法による解析と実験結果が一致していることが述べられ,ミクロ構造の挙動変化に着目することによって得られたバウシンガー効果発現に関する新しい知見が記されている.本研究の特出した成果は,バウシンガー効果が生じた後のミクロ構造における応力・ひずみ評価が行えることである.このように,構造の力学的なマクロ,ミクロ挙動を一括して考慮できる均質化法は,従来法によるマクロな観点のみでは把握できなかった材料挙動の本質を知る術としても利用されている.
一方,生産現場において線形範囲内で十分に均質化法の効力が発揮できると考えられている分野が,本研究で着目する複合材料の成形プロセス評価19), 32)である.元来,均質化法は固体に対する問題に適用され,今日まで発展を遂げたということは既述した.また,工学への応用を考える場合は線形範囲を超えた非線形的なアプローチが必要であるという動向は,先の深絞り成形,鋼のバウシンガー効果に関する研究結果からも理解できるであろう.しかし,ここでは液体に対して均質化法を用いる.固液複合体に対する均質化法の定式化は,1996年のTeradaらの研究33),
34)によるものである.樹脂の浸透性評価に対して均質化法の応用を考える場合,固体問題では必要不可欠である時間の履歴に対する新しい条件設定は必要ではない.したがって,すべての計算は線形範囲内で行われ,計算コスト,使いやすさの面から考えても,実用化の時期は近いと考えられる.本研究では,RTM成形法が現在抱える問題と要求性,そして即時的な実用性を鑑み,樹脂の浸透性評価に対する均質化法の適用法に着眼した.次節では,浸透流に関する均質化法の定式化を述べ,以降,その評価システムについて詳述する.
3.2 浸透流に関する定式化
ここでは,一般的な連続体力学に基づき,2スケール法による均質化法を用いて流速,粘性ならびに圧力勾配に関する速度式を導く.
まず,Fig. 3.4に示すような周期的なミクロ構造(ユニットセル)を有している固液複合体を考える.
Fig. 3.4 Macro- and microstructures of
porous media saturated with fluid
ここで,マクロ構造の代表長さLとミクロ構造の代表長さlとの間には,式(3.1)なる関係があると定義する.
(3.1)
e は微小な定数であり,ミクロなスケールyをマクロなスケールxについて,
(3.2)
と定義すると,場の変数はすべてパラメータ e に依存した量となる.以後の定式化において,ミクロ構造の影響を明示するため,変数には上添字"e"を付して記述することとする.
全領域 We は液相Beと固相に分類できるが,ここではシステムに適用する液相のみについての定式化を行う.液相には熱力学的影響が無視できる非圧縮性ニュートン流体で満たされていると仮定すると,準静的なストークス流れに対する支配方程式は,以下に示す平衡式,構成式,連続の式で表される.
in
Be (3.3)
in Be (3.4)
in Be (3.5)
ここで, は応力テンソル,pe は圧力,me は粘性係数, は流速, はクロネッカーのデルタ, は液相の密度であり, は単位体積あたりの体積力ベクトルである.またこのとき,式(3.6)に示すように固相−液相界面 Geでは流速は0であるとする.
on
Ge (3.6)
また,すべての流れ場において粘性の影響を無視して考えられるよう,粘性について,
me =
e2 m (3.7)
なる関係があるものとする35).続いてこれらの式について,均質化法における2スケール問題の特異摂動を考えて,ミクロ領域とマクロ領域を分離する.すなわち,上記の境界値問題における ,pe に関する漸近展開形の解を以下のように表現する.
(3.8)
(3.9)
各項はyに関する周期関数である.これらを式(3.10)を用いて微分形で表現すれば,速度勾配,圧力勾配はそれぞれ式(3.11),(3.12)のように展開される.
(3.10)
in (3.11)
in (3.12)
ここで,領域 W は e によって特徴付けられる不均質性を含んだ等価な均質体であり,Bは単位ミクロ領域Yの内部にある液相部分を示す.
数学論の立場からいくつかの代数的操作を行うことにより,式(3.13),(3.14)に示す速度場に対するミクロ方程式が導出される.
in (3.13)
in (3.14)
連続性を考えることにより,方程式の解は式(3.15)のような形となる.
(3.15)
はyについての周期関数であり,特性関数と呼ばれる.この特性関数に対する支配方程式は式(3.16),(3.17)で表される.
in B (3.16)
on G (3.17)
ここで,Gは単位ミクロ構造領域Yに含まれる液相―固相界面であり,式(3.17)は界面 G におけるノースリップ条件を示す.これらの式から求められた特性関数 は,ミクロ構造中の定常ストークス流れを特徴付けるものである.
一方,領域 W 全体に対する流れ場は式(3.15),(3.16)の体積平均を取ることによって得られるマクロ方程式が支配方程式となる.最終的にマクロな速度場は次式で表される.
(3.18)
式(3.18)は,流れ場が固相の影響も受けることを考慮し,強化繊維の幾何的配置といったミクロ構造の情報を反映した一般化されたダルシー則(Generalized Darcy's law)となっており,式(3.19)に示すように特性関数 の体積平均は,粘性を含んだ樹脂浸透テンソル(Permeability tensor)と定義することができる.
(3.19)
ここで,式(3.15)において一般化されたマクロな圧力場Pも併せて,
(3.20)
と定義する.また,連続の式の体積平均は,マクロな質量保存則に従い,式(3.21)となる.
in
W (3.21)
式(3.20)と式(3.18)で表されるダルシー則は,均質体 W の全領域において,次式(3.22)に示すような界面における境界条件とともにマクロな支配方程式を構成する.
(3.22)
ここで, と はそれぞれ境界 と において定義される,定められた圧力と流量である.本手法ではこれら強形式で記述した各式を弱形式にて表現し,有限要素解析へと適用している.
本定式化は,多孔体中の粘性流体のストークス流れに対する支配方程式(3.3)〜(3.6)に基づいた漸近的均質化理論によって,古典的なダルシー則が導かれるということを示すものである.ダルシー則(3.18)と式(3.19)に含まれる樹脂浸透テンソルは,単位ミクロ構造内の特性関数 の体積平均によって得られるマクロな量として評価できる.計算された樹脂浸透テンソルは,汎用のRTMプロセスシミュレータに適用でき,直接入力データとして使用できる.
なお,上記の定式化では,樹脂含浸後の充填状態における流れ(Saturated flow)を基本条件としている.近年,樹脂含浸時の流れ(Unsaturated flow)の評価が,RTM成形プロセスにおけるボイド形成予測に寄与するという報告があるが,元来,漸近的均質化法や複合則などの平均化理論に基づく計算手法では,ミクロ構造とその物理量には周期性が保たれていることが必要である.樹脂含浸時の流れを考える場合,フローフロントの前後において周期性の仮定は途切れ,成立しない.また,一般のRTMシミュレーションで用いられているダルシー則は,樹脂含浸後の流れに対する方程式であり,それを利用している本提案手法に,樹脂含浸中の流れは適さない.したがって,理論的な観点から,均質化法ならびにダルシー則を利用する本研究では,含浸後の充填状態における樹脂流を扱うものとする.さらに,上記定式化による2スケール法を用いた均質化法では,繊維束内のよりミクロな流れを考慮することができない.とはいうものの,3スケール法を適用すれば式(3.18)に示すダルシー則には繊維束内の流れに関する付加項が現れ,式(2.4)により評価がなされる既存のRTMプロセスシミュレーションシステムとの整合性が失われる.本研究では,上述通りSaturated flowの議論をしており,よりミクロな項は無視できると考えるが,今後,実験との比較などの検証は必要であると考える.
本提案手法では,式(3.17)と(3.15)に着眼し,マクロおよびミクロな樹脂浸透性評価を系統立てて行う.
3.3 システム構成
現在普及しているRTM成形プロセスシミュレーションには,布の賦形性を評価するドレープシミュレーションシステムと,単純なモデルにより測定された樹脂浸透テンソルから成形中の樹脂流を予測するフローシミュレーションシステムに大別できる.RTM成形法の全体の流れにおいてこれらは,前者がプリプロセス,後者がポストプロセスであると言える.一方,ポストプロセスと位置づけられるのは,ドレープシミュレーションによって得られた変形後の織り構造もしくは編み構造について樹脂浸透テンソルを求めるプロセスである.しかし一般に,RTM実成形品において考えられるドレープ後の任意繊維構造は複雑であり,その幾多の構造に対する樹脂浸透テンソルを測定,または予測するということは非常に困難である.したがって,RTM成形法のメインプロセスにあたる部分のシミュレーションシステムは開発されていないという現状がある.
そこで本研究では,ドレープなどの評価すべきプリフォームプロセスから,成形品内の各場所によって異なる繊維ミクロ構造の決定,樹脂浸透テンソルの計算からフローシミュレーションプロセスといった一連の流れ性の評価を統一的に行うことができる,コンシステント・マルチスケールRTMシミュレーションシステムを提案する.Fig. 3.5には本マルチスケールRTMシミュレーションの概念図,Fig. 3.6には本システムにおけるシミュレーション手順である.
まず,汎用のドレープシミュレーションシステムによる解析結果から,各部位における賦形後のミクロ構造を抽出し,そのミクロ構造をモデル化する.ドレープシミュレーションでは成形品における位置の違いにより様々な繊維構造の変形が想定されるが,提案する評価システムでは,この変形したミクロ構造を均質化法におけるユニットセルモデルとして扱うため,任意の形状であっても対応する.
アルゴリズムとしては,まず,式(3.16)により各節点における流速に関する特性関数 を計算する.続いて,ミクロな流れの速度 を式(3.15)により求める.
得られたミクロな流速を式(3.18)に従い体積平均し,マクロな樹脂浸透テンソルKijを求める.式(3.15)の体積平均操作を表す式(3.18)は,樹脂浸透テンソルと圧力勾配 の積で表され,一般のRTMプロセスシミュレーションでの支配方程式であるダルシー則に相違ない.この樹脂浸透テンソルを用い,従来法と同様のマクロな流れの評価を行う.
また,式(3.15)で表される体積平均前のミクロな流れの速度場から,ミクロ構造の各節点における流れの特徴を把握・評価する.このようなマクロとミクロの両立場から樹脂流を評価するRTMプロセスシミュレーションは現在までに存在せず,均質化法の2スケール法を利用した本提案システムによれば,マクロ,ミクロな流れ場の両評価が,体系的に行うことができる.
Fig. 3.5 Concept of consistent multiscale
RTM simulation
Fig. 3.6 Scenario of multiscale evaluation
of permeability
第4章 平織りプリフォームの樹脂浸透性評価
4.1 平織りミクロ構造モデル
既述のとおり,RTM成形で繁用される材料は,変形能に優れた織布や組布である.また,現在,ドレープシミュレーションが適用できる材料は平織布のみである.このような観点から,本章では,平織り構造がプリフォーミングプロセス(ドレーププロセス)によってせん断変形する場合を例に挙げ,変形前後のミクロ構造に対する樹脂浸透性の評価を行う.ここでは,提案したコンシステント・マルチスケールRTMシミュレーションの流れに沿い,繊維構造ごとに求められる樹脂浸透テンソルに関する評価を行った後,樹脂流のミクロな観点による評価結果,ならびに考察を示す.
Fig.
4.1(a)に示す平織り構造の有限要素モデルにおいて緯糸方向に対して,10°,20°および30°のせん断変形を生じた場合を想定する.変形後の織り構造の有限要素モデルをそれぞれFig. 4.1(b)〜(d)に示す.緯糸方向とはFig. 4.1(a)における座標軸のy1方向,経糸方向はy2方向であり,せん断角度は,y1軸と変形後の緯糸がなす角度と定義する.なお,簡単のため,経糸と緯糸は同一のものであるとする.また,各々の樹脂浸透テンソルの評価を,形状の違いのみの影響として論じる必要があるため,すべてのモデルは等しい体積,繊維含有率および繊維束断面積を持ち,繊維交差部は糸のみで構成されるものとする.さらに,樹脂浸透テンソルの評価に対してメッシュサイズの依存性を回避するため,すべてのモデルは要素数15360を含む8節点六面体ソリッド要素により構成している.樹脂含浸後の流れ(Saturated flow)を想定し,繊維束内の流れの影響は非常に小さいと考えられることから考慮していない.粘性は実際のRTM成形を考え,10-1 Pa・sと設定した1).このように定めた4種の有限要素モデルを均質化法におけるユニットセルとして,本手法に適用した.
4.2 マクロな浸透テンソル
まず,Fig. 4.1(a)〜(d)に対応する樹脂浸透テンソルの計算結果をそれぞれ式(4.1)〜式(4.4)に示す.
Fig. 4.1 Unit microstructure models of
woven fabrics
(m2/Pa・s) (4.1)
(m2/Pa・s) (4.2)
(m2/Pa・s) (4.3)
(m2/Pa・s) (4.4)
変形前の平織り構造に対する樹脂浸透テンソルKundeformedは,面内座標系において主軸方向のみに関する成分を有しており,対角成分のみによって構成されていることがわかる.一方,せん断変形後の織り構造に対する樹脂浸透テンソルKsheared_10°,Ksheared_20°およびKsheared_30°は非対角成分を有している.これは,y1軸に対して特徴的な圧力勾配が作用される場合,せん断変形した緯糸によって樹脂流が直線的な流れを保つことができず,樹脂の一部がy2軸寄りに方向を変えて流れる様子を数値的に示すものである.式(4.1)〜式(4.4)を順に確認すれば,せん断角度が大きくなるにつれ,K11成分は減少,K22成分ならびにせん断成分K12は増加していることがわかる.これは,変形前の平織り構造に対しては,y1,y2軸方向のみに同値の浸透性を示していたが,変形後は緯糸のせん断によりy1軸方向の流れが一部y2軸方向へと誘導されるからである.また,面外方向に対するK33成分の減少する傾向も確認できるため,3次元的な浸透性の差を評価することも必要となってくる.このような現象は,樹脂浸透テンソルの測定実験においてしばしば観察されるものであるが,非対角成分の測定は一般に困難である.RTM成形品への適用を考えられている実ミクロ構造は様々であり,構造如何にかかわらず統一的に樹脂浸透テンソルの評価が行うことができる本手法は,この点において革新的なものであると考える.
続いて,上記で求められた樹脂浸透テンソルを式(3.18)で表される一般化されたダルシー則に代入し,マクロなフローフロントを求める.ダルシー則は先にも述べたとおり,樹脂浸透テンソルと圧力勾配の積で表されるため,任意の圧
(a) Undeformed (b) Sheared angle 10°
(c) Sheared angle 20°
(d) Sheared angle 30°
Fig. 4.2 Macroscopic flow front for
sheared fabrics
力勾配を付与することによって,構造中のマクロスコピックな速度場を把握することができる.各モデルに対しy1軸から0°〜360°方向に単位圧力勾配を与えた時のマクロな流速分布をFig. 4.2(a)〜(d)に示す.これは,原点を注入口として面内について放射状に樹脂が浸透していく様子・フローフロントをよく再現するものである.ここで,図中q,bはそれぞれせん断角度,流速の最大値を呈する方向を示している.
図より,変形前の平織構造に対するフローフロントは円形であるのに対し,せん断が生じた後の織り構造に対するそれは,樹脂浸透テンソルの非対角成分の存在とK11,K22成分の不一致により楕円形となっていることがわかる.せん断角度に伴ってK11―K22成分の差とK12成分の大きさが大きくなることと,楕円の偏平度が増すことから,せん断変形が大きくなればなるほど樹脂浸透性について異方性が強くなることが容易に推測できる.せん断変形が大きくなるにつれ減少する面外成分K33の評価も必要であるが,以降では,面内の変形に着目し,マクロな樹脂浸透テンソルの評価を行う.
求めたマクロな樹脂浸透テンソルは,y座標軸に依存した量である.ここでは,変形前後のモデルについて,せん断角度の影響を考えず統一的に樹脂浸透性を議論するため,変形後のモデルについて繊維主軸方向に座標変換を行う.まず,式(4.5)〜(4.7)に示す10°,20°および30°のせん断角度に対する座標変換行列Qを設定する.
(4.5)
(4.6)
(4.7)
次にこれらを用いて座標変換後の樹脂浸透テンソルKtransformedを計算する.各モデルに対する計算結果を式(4.8)〜(4.10)に示す.
(m2/Pa・s) (4.8)
(m2/Pa・s) (4.9)
(m2/Pa・s) (4.10)
繊維主軸方向への座標変換を施すことにより,K11成分とK22成分の一致が確認できる.変形前の樹脂浸透テンソルの計算結果も併せて考察すれば,せん断角度が大きくなるにつれ,面内対角成分は大きくなっていることがわかる.すなわち,変形が進んだ構造では主軸方向には良好な浸透性を示すことが理解できる.一方,非対角項は座標変換により消滅することはなく,せん断角度が大きくなればなるほど値が大きくなることがわかる.これは,繊維構造に直交性を持つ変形前の構造では,繊維主軸方向に沿う流れは直線的に進行するのに対し,せん断変形により糸の直交性が失われた構造においては,繊維主軸方向に沿った特徴的な流れが次第に曲がって進んでいくからであると考えられる.
ここで,座標変換した樹脂浸透テンソルに対する非対角成分K12の影響を考えるべく,K12を無視した式(4.11)〜(4.13)なるテンソルを設定する.
(m2/Pa・s) (4.11)
(m2/Pa・s) (4.12)
(m2/Pa・s) (4.13)
続いて,先に施した座標変換の逆の操作を行う.すなわち,式(4.5)〜(4.7)に示す座標変換行列Qを用いて,再び y座標系に即した樹脂浸透テンソルを求めることを試みる.Qによる座標逆変換の結果を式(4.14)〜(4.16)に示す.
(m2/Pa・s) (4.14)
(m2/Pa・s) (4.15)
(m2/Pa・s) (4.16)
確認どおり,Qによって逆変換されたテンソルは座標変換後の に相違なく,y座標系に即した元の樹脂浸透テンソルにはならない.このような結果を鑑みれば,K12なる非対角成分は無視できない大きな値であることが理解できる.
既存の実験法33)では,y座標系を基準にした樹脂浸透テンソルの測定が行われるが,非対角成分の測定は非常に困難であり現在まで考慮されていなかったと言える.ミクロ構造の設定により対角,非対角成分にかかわらない簡便な樹脂浸透テンソルの予測が可能である本手法を用いることにより,浸透性について今まで考えられていなかったせん断成分による影響の議論への可能性が今後期待される.
続いて,変形後の織り構造に対する特徴的な流れの方向を把握すべく,各樹脂浸透テンソルの対角化を行った.まず,面内成分について式(4.2)〜式(4.4)に示すテンソルに固有方程式を適用し,固有ベクトルを得た.せん断角度が10°のモデルに対して式(4.17)〜(4.19)に,20°および30°のモデルに対してそれぞれ式(4.20)〜(4.22),式(4.23)〜(4.25)に固有ベクトルp1〜p3を示す.
(4.17)
(4.18)
(4.19)
(4.20)
(4.21)
(4.22)
(4.23)
(4.24)
(4.25)
固有ベクトルはFig. 4.2に示した速度分布曲線が描く楕円の長軸,短軸方向およびy3軸方向と一致している.したがって,これらの固有ベクトルから構成される変換行列Pは式(4.26)〜(4.28)のようになる.
(4.26)
(4.27)
(4.28)
Pにより対角化された樹脂浸透テンソルを各モデルについて,それぞれ式(4.29)〜(4.31)に示す.
(m2/Pa・s) (4.29)
(m2/Pa・s) (4.30)
(m2/Pa・s) (4.31)
これらの値は,y座標軸をFig. 4.2における角度b,すなわち楕円の長軸方向まで回転させたときの樹脂浸透テンソルであり,せん断角度が大きくなるにつれK11成分とK22成分との差が大きくなっていることから,それにつれ楕円の偏平度も大きくなるということが理解できる.また,式(4.29)〜(4.31)におけるK11,K22成分はそれぞれFig.
4.2に示す楕円の長軸,短軸の長さに等しい.計算結果として樹脂浸透テンソルに非対角成分が現れる場合,このような対角化操作を行うことは,対角/非対角項の種別を考えずに議論できるので,モデルの樹脂浸透性を統一的に評価できる有効な手段であると考えられる.
せん断変形した織布のフローフロントが描く図形の性質について,実験・計測的見地から法則を導いたW. B. Youngらの研究結果が文献38), 39)に記されている.W. B. Youngらは,ガラス繊維,炭素繊維で構成される数種の平織布に対して樹脂浸透実験を行い,フローフロントとせん断角度qとの関係を導いた.ここでは,本解析結果との比較を考え,文献38), 39)に結論として明記されている知見を示す.
まず,フローフロントが描く図形に対し,Fig. 4.3のようにパラメータを設定する.すると,図形とせん断角度の間には式(4.32)で表される関係が得られる.
Fig. 4.3 Definition
of sheared angle and deformed fabric38), 39)
(4.32)
ここで,I, Jはそれぞれ,図形とI軸,J軸との交点である.これは,式(4.33)が成立するという仮定のもと導かれる式であり,楕円方程式とは異なる.
(4.33)
また,数学的な考察により,せん断角度qと式(4.32)で表される図形の長軸方向がなす角度bの間には式(4.34)なる関係が示されている.
(4.34)
同様に,図形の長軸,短軸長さの比の2乗値aとせん断角度qの間には式(4.35)なる関係が得られる.
(4.35)
ここで,kx, kyはそれぞれFig. 4.3においてX軸,Y軸上で計測される樹脂浸透テンソルの成分であり,本提案手法においては,対角化された樹脂浸透テンソルKdiagonalizedの主値K11, K22に相当する.
本研究では,提案手法で求めたせん断変形した織布(せん断角度10°〜30°)に対する樹脂浸透テンソルの計算結果を用い,W. B. Youngらの知見から得られる結果と本手法による結果との比較・考察を行った.比較項目は,角度b, 比aである.Table
4.1にまとめた結果を示す.
Table 4.1 Comparison of angle b and ratio
a
Sheared angle b a
Proposed Eq.
(4.34) Proposed Eq.
(4.35)
10° 50°
50° 0.785 0.704
20° 55°
55° 0.620 0.490
30° 60°
60° 0.495 0.333
表より,長軸方向角度bに関しては,本手法による計算値と実験結果との一致が確認できた.一方,樹脂浸透テンソル比aに関しては,せん断角度が大きくなるにつれ,式(4.35)とのずれが目立ち,一致する傾向は見られない.これは,文献38), 39)において記述されているフローフロントが描く図形を表す式(4.32)が,本評価手法で得られる正確な楕円の方程式ではなく,式(4.33)なる仮定のもと,導かれたものであることに起因していると考えられる.通常の楕円方程式で考えた場合,式(4.33)なる仮定は成立しない.また,文献38), 39)によれば,式(4.35)が示すとおり,図形の主値比(ky/kx)は長軸・短軸比の2乗(y/x)2に等しいが,提案手法によれば,既述どおり,対角化された樹脂浸透テンソルの主値比は長軸・短軸比の1乗に相当する.したがって,テンソル比aに関しては,実験・解析両者について共通の理論による比較・検討が必要である.しかしながら,楕円長軸角度bに実験との一致が見られたことは,本手法の正確性,有効性を示すものである.
4.3 ミクロな流れ場
式(3.18)に示す一般化されたダルシー則は,ユニットセルモデル内の各節点において出力される特性関数 とマクロな圧力勾配 の積で表されるミクロな速度式(3.15)に対し,体積平均操作を施すことによって得られるマクロな量である.通常のRTMプロセスシミュレーションでは,このようなマクロなダルシー則が支配方程式となるが,本提案手法では,体積平均操作を行う以前の式(3.15)で表されるミクロな流速,特性関数とマクロな圧力勾配との関係にも注目した樹脂浸透性の評価を行う.なお,式(4.36)は定式化における式(3.15)に相違ない.
(4.36)
定式化で述べたとおり,樹脂浸透テンソルの計算のために体積平均操作がなされる特性関数 は,操作がなされる前の詳細な流れの情報を当然持ち得ていると考えられる.いわば特性関数はミクロな樹脂浸透テンソルであり,ミクロな流れ場の評価には欠くことのできない重要な指標となる.
マクロなフローフロントが円形である場合,すなわち繊維構造のせん断変形を考慮しない場合,特性関数のみの評価は有効である.これは,従来のマクロな評価では方向性をもたないと判断される流れに対し,ミクロな特性関数分布を評価することは含浸不良を議論する上でも重要であるからである.こういった研究32)はすでに成果が掲げられ,特性関数の評価の重要性を示すものとなっている.一方,本研究では,せん断変形した織り構造に対する流れ性の評価に着目している.この場合,前述した楕円形のマクロなフローフロントが示すとおり,流れは異方性(方向性)を持つ.すなわち,圧力勾配如何により各方向に対する流れには差が生じる.マクロな評価においても異方性が認められるこのような流れに対して,特性関数による評価を行うことは,ミクロな流れの差異を評価する意義が希薄となると考えられる.そこで,本研究では,特性関数 のみの評価を行わず,特性関数 とマクロな圧力勾配 とのカップリング項で流速 を表す式(4.36)を用いた,ミクロな流れ性の評価を行う.
ここでは,変形前のミクロ構造と最も変形による細かな流れの差と生むと考えられるせん断角度30°の変形が生じた後のミクロ構造に注目し,ミクロな流れ性について,比較,考察を行う.
実状として,評価パラメータとなるマクロな圧力勾配は,汎用のRTMプロセスシミュレーションの結果として得られたものを用いるべきであるが,ここでは基材の形状や変形角度の違いによる流れの差を議論する目的から,繊維のミクロ構造に対して特徴的な圧力勾配4ケースを考える.
Case
1: , (4.37)
Case
2: , (4.38)
Case
3: , , (4.39)
Case
4: , , (4.40)
圧力勾配はベクトルの大きさが1となるようにしており,Case 1はy1軸方向,Case 2はせん断変形前の織り構造の対角線方向(y1軸より45°方向),Case 3はせん断変形後の織り構造の対角線方向(y1軸より60°方向),Case 4はy2軸方向の単位圧力勾配を表している.いずれも面外のマクロな圧力勾配は零とした.
各モデルに対し,上記4ケースのマクロな条件下における樹脂の流線をFig.4.4に示す.図中,流線の色は流速ベクトルの大きさを示している.付与する圧力勾配の違いにより,せん断変形後の構造中の流れ場は,変形前の構造中の流れ場と比してより可変的な傾向を示していることが確認できる.また,変形前の構造中の流速分布は各圧力勾配に対してあまり差はないが,変形後の構造中においては差が大きく見られる.特にCase 3は流速値の大きい部分が目立つ.Case 3はFig. 4.2(d)に示したフローフロントが描く楕円の長軸方向に相当し,マクロな浸透性評価においても良好な流れを呈することが確認できた.本手法におけるミクロな流れ場の評価では,従来のマクロな評価と同様の評価ができ,かつ,より詳細な流れのシミュレーションも行うことが可能となる.
このような定性的な評価に加えて,流れ場の違いを定量的に把握するため,節点での流速ベクトルの大きさをスカラ値として求め,ヒストグラム表示したのがFig. 4.5である.図の横軸は単位圧力勾配を与えた時の流速値であり,縦軸は該当する流速を有する領域の体積平均を示している.これより,せん断変形によるミクロな流れ場の変化,およびマクロな圧力勾配がミクロな流れ場に及ぼす影響を議論することができる.ヒストグラムの情報から,流速の最大値,最小値,流速の分布幅(最大値と最小値の差),流速の最頻値,平均および分散をTable 4.2にまとめて示す.流速が遅い領域では,樹脂が含浸しにくく,成形後にボイドが形成される可能性があるなどの判断に役立つであろう.また,一般に,流速の平均値が大きく,分散が小さいほど良好な浸透性を併せ持つ均質な流れ場となると考えられる.まず,変形前の織布について,Case 2, 3は経糸,緯糸方向の流れを持つCase 1, 4と比較して,分散は小さく,平均値は概して大きい.これは,樹脂の流れ方向を垂直にさえぎる糸が存在しないからであると考えられる.流れの幾何的な方向が等価であるCase 1と4の傾向が酷似しているのは当然であろう.せん断変形後の織布についても同様の傾向があり,Case 1
(a)
Case 1
(b)
Case 2
(c)
Case 3
(d)
Case 4
Fig. 4.4
Microscopic
flow field in the unit microstructure
for
undeformed plain weave fabric and sheared fabric
(a)
Case 1
(b)
Case 2
(c)
Case 3
(d)
Case 4
Fig.
4.5 Distribution
of microscopic flow velocity
for
undeformed plain weave fabric and sheared fabric
Table
4.2 Quantification of microscopic flow velocity
Undeformed
fabric Sheared
fabric
Case
1 Case 2 Case 3 Case 4 Case 1 Case
2 Case 3 Case 4
Max (×10-2m/s)Min (×10-2m/s)Peak(×10-2m/s) 0.9680.001950.9660.1270.3530.0480 0.8400.03070.8100.4870.3830.0266 0.6900.05180.6380.4700.3890.0217 0.9680.001710.9670.4770.3540.0482 0.8860.003830.8820.4330.3320.0354 0.9340.06830.8650.4870.4840.0416 0.8270.07220.7540.7300.4970.0419 0.9730.03870.9340.2430.4460.0436
では流れに垂直な糸の存在が流速の平均値を小さくしている.変形前のCase 2,変形後のCase 3のように,繊維束が樹脂の流れを遮断しにくい対角線方向の浸透性が一見良好であるが,分散も大きいので留意を要する.せん断変形後は直交性が失われ,Case 1と4では傾向が異なっている.また,全般に変形前後のミクロ流れ場の違いが確認できる.現在のところ,平均値が大きく,分散が小さいものであれば,流れ性が良好であるという即座なる判断はできない.しかし,ミクロスコピックな流れを評価する場合においても各部位における流れ性は様々であり,このような分散を生み出すことがわかる.したがって,ミクロ構造の集合体であると考えられる実成形品(マクロ構造)の樹脂浸透性に影響することは必至であり,ミクロスコピックなレベルにおける含浸不良部位,それに伴うボイド形成部位等の予測に本評価手法は有効となるであろう.また,このようにせん断変形の影響を考慮することで,より正確なRTMプロセスシミュレーションがなされることが期待される.
さらに,Fig. 4.6のように流れ場をアニメーション表示によりシミュレートすることもできる.本研究では,市販のグラフィックソフトMicroAVS((株)ケイ・ジー・ティー製)を用いており,樹脂流を粒子(パーティクル)の動きとして表示している.式(4.36)に示す通り,特性関数にマクロな圧力勾配を掛け合わせることにより,各節点におけるミクロな流速ベクトルが求められるが,本パーティクルトレースシミュレーションでは,離散値である流速ベクトルを近似関数によりつなぎ,その近似曲線上に粒子を沿わせてアニメーション化して
Fig.
4.6 Particle-trace animation of microscopic
flow field for undeformed plain weave fabric and
sheared fabric
いる.
続いてこれらのパーティクルトレース表示からミクロなフローフロントの描画を行った.上方より見たフローフロントをFigs. 4.7,4.8に示す.前者,後者はそれぞれ変形前のモデル,変形後のモデルに対するフローフロントを時系列に従い,軌跡として順に表示したものである.前項では,Fig. 4.2に示すような樹脂浸透テンソルの測定実験で観察されるマクロなフローフロントシミュレーションを行った.この場合,フローフロントは滑らかな円,または楕円を描く.しかし,ミクロな立場からのアプローチによれば,Fig. 4.7,4.8に示すとおりフローフロントは蛇行し,滑らかな曲線にはならない.これは,図中の円で囲んだ部分においてよく確認できるように,樹脂流が繊維の交差部ではさえぎられ,交差部を通過すると再び合流するという一連の動きを繰り返すことから生じるものである.構造全体の流れ性を体積平均しているダルシー則では,このような現象を追うことは到底不可能である.
さらに考察を進める.変形前の平織り構造に関するFig. 4.7(a),(d)は,繊維主軸に沿う方向に圧力勾配が作用している点で共通している.このような場合,Fig. 4.7(a)から確認できるように,樹脂流は圧力勾配に沿い,経糸の間を直線的に浸透している.一方,変形後の織り構造に関するFig. 4.7(b)のケースも繊維主軸方向に圧力勾配が作用しているが,その流れは直線的に進んでいない.これは,圧力勾配の作用による直線的な流れが,変形後の緯糸によりせん断角度30°の方向へ誘導されているからであると考えられる.また,Fig. 4.8(c)を観察すると,他のFig. 4.8(a),(b)および(d)と比較して,フローフロントの軌跡間隔が全体的に広いことが確認でき,構造中の樹脂流が総じて速いという傾向が見受けられる.これは,変形後の織り構造に対するCase 3の圧力勾配が,マクロな浸透性評価において最も良好な流れを呈すと判断されたFig. 4.2(d)の楕円長軸方向と一致しているからである.逆にいえば,変形後のミクロモデルにおいて速度の大きい傾向をもつ特性関数 の体積平均値Kijから評価されるFig.4.2(d)の楕円がCase 3の圧力勾配方向であるb=60°の角度に長軸をもつということは当然ともいえる.
以上記したとおり,連続体力学で基礎式として多用されている式(3.3)〜(3.6)に漸近的均質化理論を適用して導出される式(3.18)と式(3.15)によって,従来の
(a) Case 1
(b) Case 2
(c) Case 3
(d) Case 4
Fig. 4.7 2D view of microscopic flow front
for undeformed plain weave fabric
(a) Case 1
(b) Case 2
(c) Case 3
(d) Case 4
Fig.
4.8 2D view of microscopic flow front for sheared fabric
マクロな評価と同時に,詳細なミクロな流れ場の評価も行うことができる.このような評価手法は現在までになく,前半に示した繊維構造の変形を考慮に入れた樹脂浸透テンソルは,ドレープシミュレーションの結果を反映することができ,RTMシミュレーションのメインプロセスとして有効である.また,後半に示したミクロな流れの評価は,今まで把握できなかった含浸不良におけるボイド形成を議論する上で有益な情報を与えるものであると考える.以後,本手法と実験との比較,検討が重ねられ,こうした含浸不良を判定するクライテリアが確立されれば,品質の良い製品を生む設計パラメータが決定されるであろう.
第5章 結言
実際のRTM成形法を考える場合,現在,欧米を中心に研究が進められている4つのRTMプロセスシミュレーション分野(ドレープシミュレーション,フローシミュレーション,硬化解析,応力解析)は一体化して考えられるべきである.しかし,これらは個別技術としてある程度の発展を遂げ,各分野とも多からず問題点を有しているという現状がある.そこで,本研究では,特に重要な評価プロセスで,かつ,問題点の多いフローシミュレーションに着眼し,ドレープシミュレーションから硬化,応力解析までのブリッジングを円滑に行うコンシステント・マルチスケールRTMシミュレーションの提案を行った.本手法では,まず,ドレープシミュレーションの結果として得られる布の各部における繊維構造の変形状態を考慮した樹脂浸透テンソルの予測を数値解析により簡便に行う.これにより,従来のフローシミュレーションの問題点である樹脂浸透テンソルのデータベース不足の解消が導かれ,ドレープシミュレーションとのリンク性の向上も行うことができた.また,流れ性の評価にはダルシー側を用いた従来法と同様のマクロな観点によるものに加え,特性関数を用いた速度式によるミクロな観点による評価も同時に行うものである.
本論文では,実際のRTM成形法とドレープシミュレーションとのリンク性を重要視する観点から,織布構造がせん断変形を起こす場合を想定し,変形前後の繊維ミクロ構造をユニットセルとし,本手法の適用に当たった.まず,従来法に基づくマクロな浸透性の評価においては,計測実験同様,2階の樹脂浸透テンソルが求められることを示した.従来,せん断変形した織布に対するフローフロントは通常円形とならないため,計測から樹脂浸透テンソルを求めることは困難とされてきた.しかし,本手法を用いれば,ユニットセル構造の設定のみで簡便なテンソルの予測を行うことができる.また,せん断変形した織布を樹脂浸透テンソルから求められるフローフロントは,考察により楕円形であることが確認された.これにより,楕円長軸,短軸の長さから樹脂浸透テンソルを逆算できるという計測法における重要な示唆も得ることができた.後半では,樹脂の流れ性評価において,ミクロな速度式を用いた新手法を提示した.評価項目として得られるミクロなフローフロント,ミクロな流れの定性的,定量的な評価は,従来のマクロな浸透性評価法では探ることができない繊維ミクロ構造内の流れの分布を把握することができ,以後,様々な構造に対する実験と比較することによって含浸不良のクライテリアを確立することができるという指針を示す結果を導いた.
また,RTM成形法における設計パラメータである布の構造やその配置,型の形状と樹脂流出入口の位置と数も,樹脂の流れ性に大きな影響を与えることから,ミクロな観点による選定がなされるべきである.例えば,型の形状はドレーププロセスにおける布の繊維構造の差異を導くことから特性関数 に影響を与える.また,樹脂流出入口の位置や数が変われば,成形中のマクロな圧力勾配に差異を生じる.しかし結局のところ,実際の流れ場は特性関数と圧力勾配が掛け合わさった式(4.36)のミクロな速度式で表されるため,マルチスケール解析を利用した本手法は,設計パラメータの選定においても有効となると考えられる.以上,本研究で得られた結果は,実成形法に準じたRTMシミュレーションシステムとして有用であり,設計へのフィードバックを考える上で有益な情報を与えるものであると結論づけられる.
今後の発展性として考えられるのは,材料のモデル化から特性評価までのプロセスをより実状に準じた形態でシミュレートできるよう,コンシステント・マルチスケールRTMシミュレーションに対する周辺技術の強化と評価ロジックの確立である.換言すれば,まず,実構造に準じた正確なモデリングを行い,本シミュレーションを適用した後,ミクロな流れ評価において含浸不良の判定を行うという将来性が見出せる.
本研究では,浸透性におけるせん断角度の影響を評価するため,周期的に積層された複合材料モデル化を想定した.しかし,織物複合材料の実構造は,Fig.5.1に示すように積層ずれがある複雑な積層配置となっている40).こうした積層配置は,材料によって,また,部材中の各部位によっても様々である40), 41).このような実材料のマクロなフローフロントは円形,もしくは楕円形といった統一的な形とはならず,計測により樹脂浸透テンソルを求めることはきわめて困難である.仮にある積層構造に対する計測が行えたとしても,様々な積層ずれの場合に対する計測結果は,ばらつきを有する結果となり,確率論的に論じるしかない.このような問題にも提案手法は有効である.すなわち,浸透テン
Fig. 5.1 X-ray tomography image of a glass
laminate
ソルのばらつきを論じるしかない計測によるアプローチに対し,積層ずれのばらつきを確率論的に議論することにより,その結果として得られる樹脂浸透テンソルのばらつきの本質を議論できる.
このような複雑なモデルを考えるには,有限要素(モデリング)技術の高度化も必要である.これに関し,現在,イメージベースモデリング手法に基づくボクセルメッシングに関する研究が盛んである42), 43).これは,従来から,数値解析の分野において最も時間を要する煩雑な作業といわれてきた構造のモデル化を,実構造を撮影した画像を処理することによって行うものである.具体的には,CTスキャナなどで撮影した実構造の断面写真を3次元的に再構成し,数値データとして表現する.Fig. 5.2は多孔質セラミックス部材にイメージベースモデリング手法を適用したものである43).Fig. 5.3に示すように,既に織物複合材料に関するモデル化の研究44), 45)もなされている.複雑な形状のモデル化には,熟練者による緻密な作業が必要であったが,本技術では正確な大半の作業は計算機が受け持つこととなり,作業の大幅な簡便化が図られる.
本来のコンシステント・シミュレーションとは,構造のモデル化の段階から成形プロセスを追うものであり,イメージベースモデリング手法によりFig. 5.1に示すような実構造をモデル化する技術は,以後,システムに組み込まれていくものであると考えられる.
(a) Cross sectional view
(b) 3-D finite element model
Fig. 5.2 Digital image-based modeling for
porous ceramics42)
Fig. 5.3 Voxel model of
complex weave fabric composites43)
一方,ミクロな流れの評価においては,本提案手法による解析と実験とを対応付け,樹脂の含浸不良,ボイド形成に関するクライテリアを確立することが考えられる.前章で示した通り,本シミュレーションによれば,ミクロな流れの定性的,定量的な評価を同時に行うことができる.また,Figs. 4.7, 4.8で示したミクロなフローフロントは,ボイド形成位置を判別する上で有用な情報を与えるものであると考えられる.特に,ボイドが形成される糸の外部周辺での流れ場というミクロ情報が正確に評価できることから,簡単な試験結果とあわせるだけで糸の内部のボイド形成を予測できると思われる.このような逆解析的なアプローチは,マルチスケール解析が可能になったために着想される新規手法といえる.糸内部でのボイド形成クライテリアを,糸外部の流れと対応させられれば,マルチスケール解析により,設計パラメータの決定に結び付けられると期待される.
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