山行報告・・・鍬ノ峰

hkk-063 ≪山岳巡礼≫のトップへ戻る

鍬ノ峰=くわのみね(1623m)

2003.11.14 南登山道より登頂  (往復2時間15分)

2008.12.20 北東登山道より登頂(往復5時間55分)


長野県 2003.11.14 単独行 マイカー
コース 長野市自宅(6.00)===登山口(7.30-7.40)−−−送電鉄塔(7.53)−−−岩場の小さなコル(8.15)−−−鍬ノ峰(8.50-55)−−−登山口(9.45)
鍬ノ峰二等三角点

全国的に快晴の天気予報だった。
鍬ノ峰は北アルプス餓鬼岳のすぐ東方にある山。しかし付近には名だたる北アルプスの名峰が数多く蟠踞、その中にあって1623m程度のこの山は、その名前すら知る人は少ない。おまけに国土地理院の地図にも登山道が記されていないという不遇をかこっている。

インターネットで登れる道のあるこを確認して出かけた。
山頂からの餓鬼岳、唐沢岳をはじめとする、鹿島槍ケ岳など後立山連峰の眺望が素晴らしいといわれるのが魅力だった。
好天に恵まれて、すでに冬の装いに変わった純白の後立山の眺めを思い浮かべながら出かけた。

登山口は大町市常盤駅から餓鬼岳登山口へ向かう。餓鬼岳登山口を左に見送り、林道をさらに1.5キロほど進むと、送電塔巡視路NO.18の表示がある。ここが登山口だが道標はない。自動車は10メートルほど先に数台駐車できるスペースがある。

昨夕の天気予報は何だったのか。上空は厚い雲に覆われている。山頂へ着くまでに晴れるかも知れないと言う望みはまず無理だろう。鍬ノ峰へ向けてとにかく出発する。
いきなりの急登からはじまる。階段状に整備された巡視路を15分ほどで鉄塔の下に出る。巡視路はここまでだが、その先も踏跡はしっかりしていて、登山道として地図に表示されてもおかしくないほどの道である。
全行程の標高差は約600メートル、ときどき勾配は緩むが山頂へ向けて急な一本登りがつづく。ちょっとしたザレや岩場にはロープがあるが、ほとんど頼る必要がないほどのものだ。鉄塔から20数分登ったところで、痩せた岩場を左に下降して小さなコルを通過するあたりだけが特に注意を要する。ここはロープを握り、慎重に安全を確保して通過。
あとはロープのある箇所もたいしたことはない。

標高が上がれば雲の上に出るもしれないと期待したが、どうやらそれも無理のようだ。
道にかぶさりかげんの笹に足許が濡れる。何か白いものが舞っている。虫かと思ったがよく見ると粉雪が舞っていた。木々の梢には霧氷がつき、笹の葉には塩をまぶしたような雪がのっている。手袋を通して手が冷える。
何の展望もないまま、山頂まで1時間10分。普通に歩くと1時間30分ほどの行程だろうか。
展望を邪魔する木立もほとんどなく、かっこうの展望台であることはわかるが、今は霧に遮られて展望のかけらもない。
またまた天気予報には裏切られてしまった。
三角点脇の白い柱に誰かがマジックインクで三等三角点と書いてあったが、標石の刻字はどう見ても二等としか読めない。
雪が舞い、展望のない山頂に長居は無用。来年、初夏のころに残雪に輝く後立山の展望を見に再訪することにしよう。
不満を残したまま、大町市の温泉で体を温めてから帰途についた。
 
長野県 2008.12..20 Мさん同行 マイカー
コース 仏崎観音(9.00)−−−山頂まで1キロの標識(11.20)−−−鍬ノ峰(12.15-12.35)−−−山頂まで1キロの標識(13.00)−−−仏先観音(14.55)
鍬ノ峰山頂、背後は蓮華岳と北葛岳

2008年登り納めに山友Mさんが選んでくれたのが鍬ノ峰。2度目の登頂であるがコースは前回の南側とは反対の北東からのルートである。この北コースは大町高校山岳部の手によって最近整備されたということだ。
山頂までの高低差は700メートル余でたいたしたことはないが、歩いてみると思いのほかハードで歩きがいがいがある。南側ルートより高低差は100メートルほど多いが、歩いた感じでは100メールの差よりはるかに大きく感じる。

登山口の仏崎観音へはR147号を北上、俵町1丁目の信号を黒部方面へ左折する。一つ目の信号機(セブンイレブンがある)を左折して道なりに進むと高瀬川にかかる蓮華大橋があり、渡ったすぐ先の右手の引っ込んだところに仏崎観音がある。適当に小道へ入って仏崎観音の広場に駐車。

建物の右手から林道へ入ると、何歩も歩かないうちに右手山腹への登山道がある。消えかかった標柱に『登山道』と読める。わずかに登ると鐘撞堂があり、展望が開けて後立山の銀嶺がまぶしく輝いている。これ以上は望めないほどのピーカン、絶好の登山日和。アイゼンは車に置いてきたが天気もよし、多分大丈夫だろう。

鐘撞堂から落葉した樹林の尾根道を進む。樹間に垣間見える白銀の山々を目にしながら、10分ほど登りすると東面の展望が開けた小ピークとなる。眼下に大町の盆地、爺、鹿島槍、五竜と純白の山岳展望がすばらしい。浅間山から志賀の山などしばらく展望を楽しんでから先をめざす。

鍬ノ峰山頂
花崗岩の風化したザレ急斜面や、固定ロープなどが取り付けられた箇所など、いくつかの急登に汗を流す。地図の1208メートル付近でルートは左に大きく曲がる。陽を受けて登ってきたのはここまで、この先は稜線状の道に変わり、少し雪も見えてきた。しかし歩行にはまったく影響はない。垣間見える銀嶺が、山頂での展望期待を大いに膨らませてくれる。
1292メートル標高点あたりが中間点、ここで再び向きを変えて南へと向かう。つまり北斜面の登りとなり、急に雪が増えてきた。展望も変わって、蓮華岳から唐沢岳、餓鬼岳などが目の前に迫る。

雪は次第に深くなってくる。何日か前に歩いた人の足跡もいつか消えてしまい、あとは動物の足跡が見えるだけ。最後のピーク1526メートルで気合いを入れなおして大きなコルへと下る。正面の鍬ノ峰はかなり雪が深そうだ。雪山装備をしてこなかったため、無理なら引き返すことを相棒と了解しあう。
コル付近でスパッツを着ける。

一歩ごとにずぶっ、すぶっと脚が沈む。体力消耗も大きい。それでもルートだけはつかめるし、足跡が残るので下山の不安は少ない。山頂が近づくと膝上あたりまで沈むほどになってきてラッセル状態だ。もう一歩もう一歩と足を運び、樹林を抜け出るとその先が山頂だった。

山頂まで3時間15分を要した。雪がなかったら2時間半ほどで登れたかもしれない。上空はまさにブルースカイ、そして無風。苦労にこたえるように展望は見事の一語、食事をしながら山岳展望を満喫する。
真っ白に雪化粧した北アルプス北部の山々が紺碧の空と一線を画し、白馬、唐松、五竜、鹿島槍、爺、蓮華、船窪岳、不動岳と指呼していく楽しみは至福の時間だ。目の前には峨々として聳える餓鬼岳と唐沢岳。遠く目を転ずれば南アや中アまでもが視界にとらえられた。

アップダウンのあるこのルートは下山も思ったよりきつい。それでもラッセル状のきつかった登りに比べれば比較にならないほど楽に、1526メートルピークまで戻った。この先はときどき足跡に頼れない雪の途切れたところを注意しながら下っていく。
冬の午後は早い。2時を過ぎると早くも夕暮れの近いのを感じさせる。風も冷たくなってきた。やや疲れを感じはじめた足を励まして仏崎観音へと下っていく。「あれ、こんなところを歩いたかなあ?」と、ちょっと心配したりしたが、無事下山。

2008年の登り納めには文句なく充実した山行となった。

≪山岳巡礼≫のトップへ戻る