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残雪登山 堂津岳(1927m)

長野 2005.04.30 同行 山友Mさん マイカー 奥西山 三等三角点
堂津岳 二等三角点
コース 奥裾花駐車場(5.25)---東山登山道入口(5.50)---稜線(7.05)---休憩10分---奥西山(7.55-8.00)---堂津岳(9.30-10.05)---奥西山(11.10-11.15)---稜線からの降り口(11.50)---東山登山道入口(12.25-12.30)---駐車場(12.55)
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信州百名山・・・・3回目の登頂、もやは『秘峰』とは言えなくなった堂津岳

堂津岳めざして雪稜を行く

奥裾花の駐車場を出発したとき、山の稜線には霧がたちこめていた。しかし車道を歩き始めてすぐ、青空が大きく広がり、堂津岳の姿が望見できるようになった。
相前後して夫婦らしい二人連れが2組、同じように堂津岳を目指している。
30分ほどで公衆トイレなどのある水芭蕉園入口に着く。ここから先は残雪の世界に変わる。

ここで稜線への登りに取りつくには二つの方法がある。いずれも東山と堂津岳の最低コルを目指すのだが、一つは東山への夏道から(この時期、夏道は雪の下に隠れているが、トイレとは道を挟んだ反対側に入って行く)、もう一つは車道の延長をしばらく進んでから左手の吉池方面へ入り、看板の先で適当にブナ樹林の斜面に取りつく。今回は後者を選んだ。

≪註≫夏道コースから入ると、最低コルより中西山寄りに登ってしまいやすい。つまり最低コルよりかなり余分に登ってしまい、コルまで下ってくるということになり勿体ない。

吉池の観光看板からもう少し進んだら樹林の斜面へ入って行く。最初のうちは勾配もなだらかで、ブナの美林を楽しみながら、山友のYさんと軽い話しを交わしながら気分よく脚が進む。コルの方角確認のため、ときどきコンパスに目をやる。ときには前日のものらしい靴跡が見える。
出発時に相前後していた二組と同じようなペースで登って行く。一組のご夫婦は私のホームページをときどきのぞいてくれているという。何となく親しみを感じる。
次第に勾配が強くなりキックステップの登りとなる。さらに稜線が近づくと急傾斜となって稜線最低コルの雪堤に突き当たる。雪堤への取り付きに失敗して数メートル滑落、木につかまって停止する。2メートルほどの垂直に近い雪堤を、キックステップで足場を作り慎重に這い上がる。

堂津岳山頂でMさんと、背後は焼山・火打山
稜線に乗ってしまえば、あとは雪稜の北方に聳える堂津岳を目指して行くだけ。右手には戸隠連峰、高妻山、背後から左手方面は東山や白馬三山など後立山の銀嶺、そして進行正面には堂津岳、終始この展望を目にしながらの雪稜プロムナードを胸をときめかせ、残雪登高の醍醐味を味わいながら脚を運んで行けばいい。

二つほど小さなコブを越した先が奥西山のピーク、一息入れながら展望を楽しむ。堂津岳がだいぶ近づいたのを感じるが、最後の急登が目に厳しく映る。

奥西山から先は稜線が巾広く広がり、波のように起伏している。このあたりはガスの時、特に帰りにはコース取りに注意をしたいところだ。芽吹き前のブナ、ダケカンバの樹林が実に気持ちの良い雰囲気を醸している。とりわけダケカンバの大木が目立ち、長い雪稜の中でもいちばん美しいところ、ゆっくりと味わって歩きたい。
なだらかな雪稜が終るといよいよ堂津岳への最後の急登が待ってる。気合を入れ、気を引き締めるため、ここで一服してから高低差300メートルの急登に取りつく。

前の2回に比べると残雪が多くて登り始めのイヤらしいナギは雪上歩行で通過、1部ザレた地肌が露出しているところは石車に乗らないように慎重に足を運ぶ。今回は藪に入ったところはごく一部だけで済んだ。その藪も歩く人が多くなったためか、それなりに踏跡らしいものが出来ていて、10年前とは大きく変っていた。
全体としては今年のこの急登は歩きやすく感じたが、それでも一つ間違え左右どちらに落ちても、一気に急な雪斜面を谷底まで滑落してしまう危険箇所であることには変わりはない。特にピーク直前のナイフリッジ状の急な雪稜はかなりの緊張感で通過した。(このリッジ状の雪稜が出来ていたのは今回始めてだった)

3回目の堂津岳山頂、回を重ねてもやはりこの山は素晴らしい。
雪で覆われた丘状の山頂は、遮るものもなくめくるめくような大展望が広がる。雲一つない晴天だが、惜しむらくは春霞のために遠望が利かない。それでも間近に頚城三山と天狗原山、雨飾山・大渚山、高妻山、戸隠など、朝日・白馬三山から針ノ木・蓮華岳方面の銀嶺の連なりなどの山岳展望が十分楽しめた。
今回は二等三角点標石は深い雪の下になっていた。

わずかに遅れてきたご夫婦と写真を撮りあったり、展望を楽しんだりしてから山頂をあとにした。
ナイフリッジ状の箇所、それにざれたナギ部分を慎重に通過し、広々とした雪稜に降りてからは、足の重さを感じながらも登頂の余韻に浸りながら下山。次々と登ってくる登山者に出あう。いまだに登山道のない奥深い堂津岳、いつからこの山へこんなに沢山人が登るようになったのだろうか。もはや『私の大好きな“秘峰堂津岳”』とは言えなくなってしまったようだ。

以前は、帰りのときには足跡は消えていたのに、歩く人が多くなったせいもあってか、それらしい足跡が残されている。迷うことなく吉池へ下山、ミズバョウの写真を取ったりしてから、観光客の行き交う道を駐車場へと戻った。

道具はストック1本のみ、アイゼン、ワカン、ピッケルはなしだった。


最初に堂津岳を登ったのは11年前(1994年5月7日)でした。この山の登山資料をどうしても見つけることができませんでした。仕方なく地図でコースを研究して単独で登りましたが、頼る足跡もない大変なプレッシャーを抱えての登山でした。GWにもかかわらず、出会ったのは東山で一人、堂津岳で一人だけです。当時知名度も低い堂津岳へ登りに来る登山者はほんとうに稀でした。
それから11年、今回の登山では、多くの登山者が普通の山を登るような感覚で数多く登っていました。10年前の秘峰は、今や誰でも登れるポピュラーな山に変わっていました。これも情報量が各段に充実した結果ということでしょうか。


≪以前の山行記録≫
2003.05.02・・・8人パーティー、奥裾花から堂津岳
1994.05.07・・・単独、奥裾花から東山・堂津岳を日帰り
 
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