1-1.人間と文化
1-1-2
<若者と超能力>
2 次の文章を読み,下の問い(問1〜6)に答えよ。
現代の若者にはとくに超能力にひかれる傾向があるようだ。超能力をテーマにしたコミックやアニメを挙げればきりがないし,「普通の私が超能力者になれる」と謳う宗教も少なくない。こうした傾向は,単に個人の趣味にすぎないのだろうか。むしろこれは,時代の性格を反映したものではないだろうか。
例えば,非日常的な時間を与えてくれる 1 が,現代においては曖昧になってい
こうした中で,生き生きとした現実との関わりにおいてb.自己を発見していくことが
それにしても,彼らの超能力ヘの傾倒ぶりを見ると,そめ可能性をあまりにも安易に信じ過ぎていると思われる。非現実的なものを求める気持ちが強く,身体の有限性を嫌って,生身の人間が抱える限界や矛盾を超能力によって一気に越えたいという願いが見てとれる。
考えようによっては,人はだれでも一種の超能力者だった。生まれたばかりの赤ん坊
我々は成長するにつれて,自分の思いどおりにならない他者と出会い,身体的存在と
しかし,「全能」状態を回復したいという思いに動機づけられて,安易に身体を無限化で
問1 文中の 1 に入れるのに最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@ ハレとケとの区別 A ウチとソトとの区別
問2 下線部aに関する記述として適当でないものを.次の@〜Cのうちから一つ選べ。
@ コンピュータ・ネットワークは,これまでと比べてきわめて小さなコストで
A 計算機をはじめとする電子機器は,人右の生活に役立ち,今までは不可能だっ
B テレビが普及したおかげで,人々は茶の間にいながら世界の隅々の様子を知る
C 携帯電話等の個人通信機器は,人と人とをより直接的に結びつけるのに役立っ
問3 下線部bに関連して,青年期の自己発見に関する記述として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。 3
@ 自分が何者であるのかわからないという「アイデンティティの危機」は,自我を
A「第二次性徴」という身体的特徴が現れる時期になると,セルフ・イメージの形成がそれまで以上にセクシュァリティと密接に関係するようになる。
B 実社会に参加して社会人としての義務や責任を負うことを心理的・社会的に猶予される「モラトリアム」は,人類の歴史上普遍的な現象である。
C「イニシエーション(通過儀礼)」を経て集団の成員となることは,一種のマイ
問4 下線部cに関連して,現代日本社会における,育児をめぐる家庭生活の傾向を記述した文章として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。 4
@ 自分自身の生活を充実させたいという意識が強まり,従来ほど親が子供を育て
A 女性の社会進出が進み,従来母親にゆだねられていた育児と女性の就業とが両立できないという問題が生じている。しかし,育児休業等に関する法律の普及や,育児期間と就業期間との重なりを回避する晩婚化などによって,母子の接触の機会はむしろ大きく増加している。
B 離婚や再婚,共働きが増大する中で,家族の形態や,性別役割分担,夫婦同姓
C 従来家族がもっていたさまざまな機能が,企業や学校など外部の機関に吸血さ
問5 下線部dに関連して,このような自己のあり方を説いた今世紀の哲学者の中で,
@ 自己の死を自覚することによって,日常性に埋没した無責任で匿名的な「ダ
A人間を根源的に自由な存在として捉え,たえず未来へ向けて自己を投げ出し,新たな自己を創造していくあり方を主張した。
B 死や苦のように克服できない究極の壁を限界状況と名づけ,これを直視することによって,人間は自己を包括する超越者の存在を感じるとした。
C 人間の選択や思考は身体を媒体にしてなされるものだと考え,身体におけるく
問6 本文の趣旨に照らして,下線部eの「普通に生きること」の意味として最も適当なものを,次の@〜Dのうちから一つ選べ。 6
@古来「和をもって貴しとなす」とされてきたように,徒に突出することなく共同体と宥和し,その中で自己を見いだしつつ生きること。
A 自己の固有牲を探し求めるべきだとする強迫観念は一種の神話であるから,他者との異同を意識しないで,平凡を恐れずに生きること。
B 超能力のような非現実的なことを信じるのは根拠のないことであるから,合理
C 問題や矛盾と直面した時に,制約の存在自体を否定することによってではなく,制約を通して解決する可能性を探りながら生きること。
D 現在のあり方を越えていくことは,限られた生命と肉体をもった人間には不可
〔12−本〕