1-1.人間と文化  

1-1-3<新しい若者の姿>

3 次の文章を読み,下の問い(問1〜5)に答えよ。

 今日,「青年らしさの衰退」という指摘がしばしばなされる。例えば,「ボケベルコ ミュニケーション」などに代表される。a.青年(若者)文化に,かつての「青年らしさ」というものが見いだせなくなったというのである。たしかに最近では,かつて 1 が「周辺(境界)人」と表現したような,大人と子どもの狭間にあって,自我の確立に悩む青 年の姿は少なくなってきたといえるかもしれない。むしろ,素直で明るい青年たちが増えてきているともいわれるほどである。

  しかし,青年らしさが衰退したと本当にいいきれるだろうか。実際のところ,今日の青年たちも,思考様式における質的な転換を前提とする,青年期に特有の発達的特徴をみせている。また,過去の青年たちと比べれば,より多くの時間を要し,その仕方もより多様化してきたが,一人前の大人としての自立をとりわけこの時期に準備しようとし ていることでは,今日の青年たちもなんら変わらない。そして,このような成長と関わる行動の多くが,青年らしいb.生きがいや価値観の追求を原動力としていることも、従来と同様である。このようにみてくると,今日において青年らしさが衰退しているとは 必ずしもいいきれるものではない。

 そもそも,青年期が発見され制度化されはじめたのは,18,19世紀のヨーロッパにお いてであるといわれる。c.当時の社会における変化と関わって、青年期という、人生における特別な時期が認識されたのである。以来,青年期の意義や青年像は,背景となる社会の構造や変化と常に結びついてきた。例えば「自己中心的」とか「生活保守主義的」な どと,大人の目に否定的に映る今日の青年たちの姿も,その根底では,現代社会全体に進行する 2 と少なからず関わっている。より基本的には,都市型生活様式の進行や中・高等教育の大衆化を背景にして,従来の青年像とは異なった,新しい青年の姿が,今日では出現してきているのである。

 いうなれば,今日の青年は,伝統的な青年期の姿の上に,新しい装いを身につけはじ めている。そこにあるのは, A ではなかろうか。今や青年たちの役割や位置は,著しい変化や進展をとげる現代社会にあって,かつてなく大きなものとなってきている。

 今日の社会や人々の問題を,地球的な規模で捉え接近しようとする感性が,新しい青年 たちに期待されるのもその一例であろう。

1  文中の 1 2 に入れるのに最も適当なものを,次のそれぞれの@〜Cのうちから一つずつ選べ。

  1  @ ルソー A レビン B ユング C ハビガースト

   2   @ 精神文化の浸透  A バブル経済の崩壊  B 人間疎外の状況  C 自然環境の破壊

 

2 下線部aに関連して,その性格を記述したものとして適当でないものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。 3  

 @ 既成社会にある価値観や権威に対して批判し,抵抗する傾向や内容をおびやすい。

 A 社会全体の文化の中にありながら,下位文化として部分的にそれとは異なった性格を示す。

 B 社会全体の一般的な文化に対して,地域文化として特定の地域内において創造され普及する。

 C 社会全体の文化の中に根づくものもあるが,一時的な流行に終わってしまうものも少なくない。

 

3 下線部bに関して,次の表は,18歳から24歳までの青年を対象として,「どんな ときに充実感(生きがい)を感じるか」について調査した結果であり,それらを1977年と1993年との間で,また,日本を含めた5か国の間で比較したものである。日本の青年の充実感(生きがい)に関して,この表から読み取れることを,次の@〜Eのうちから二つ選べ。ただし,解答の順序は問わない。 4   5

 @ 1993年の結果では,日本の青年は,他の4か国の青年に比べて,「スポーツや趣味に打ち込んでいるとき」が最も多く,「社会のために役立つことをしているとき」が最も少ない。

 A 1993年の結果では,日本の青年は,他の4か国の青年に比べて,「家族といるとき」は最も少なく,「友人や仲間といるとき」が最も多い。

 B 1993年の結果では,日本の青年は,他の4か国の青年に比べて,「勉強に打ち込んでいるとき」と「他人にわずらわされず,一人でいるとき」は,それぞれ最も少ない。

 C どの国の青年も,「家族といるとき」は16年間で増加しているが,その増加の幅は,日本の青年が最も大きい。

 D どの国の青年も,「友人や仲間といるとき」は16年間で増加しているが,その増加の幅は,日本の青年が最も大きい。

 E どの国の青年も,「仕事に打ち込んでいるとき」は16年間で減少しているが,その減少の幅は,日本の青年が最も小さい。

 表「どんなときに充実感(生きがい)を感じるか」についての青年意識調査(複数回答)

                                  (%)

  総務庁青少年対策本部篇『世界の青年との比較からみた日本の青年-第5回世界青年意 識調査報告書-』(1994年)より作成。

 

4 下線部Cに関連して,青年期の発見と関わった社会変化についての記述として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。   6

 @ 産業革命後,人々の生活の多様化に伴い,伝統的な作法や考え方が継承されなくなったために.年少者が文化の創造の中心となった。

 A 産業革命後,工業生産の担い手として多くの年少者が参加し,そこで得た賃金によって,人々の生活が物質的に豊かになっていった。

 B 産業革命後,食生活をはじめとして生活全般が豊かとなり,年少者の身体的,精神的成長が大人たちに近い水準にまで促進された。

 C 産業革命後,継承すべき知識や技能が複雑,多様なものとなり,年少者を一定期間,労働から解放し組織的に教育を与える機関が設立された。

 

5 本文の趣旨に照らし,文中の A に入れるのに最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。 7

 @青年期の発達をもたらす社会変化の流れの中で気持黒髪ゆれ動く青年の姿

 A 青年らしさの衰退ではなく,社会変化と結びついて変貌する青年の姿

 B 子どもと大人との間の過渡期にあって,悩み混迷を深める青年の姿

 C 社会変化とは関係なく.進路の選択にじっくりと取り組む青年の姿

                             〔8-本,現社〕

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