1-2.青年と自己形成  

1-2-2 <青年とライフサイクル>

2 次の文章を読み,下の問い(問1〜7)に答えよ。

私たちの一生を一本の道にたとえるならば,それは乳児期から老人期まで続く曲がりくねった長い坂道だといえよう。人生を歩んでいくことは,こうした発達の段階で,a.それぞれの時期にふさわしい発達課題を一つ一つ達成していくことである。また、シェークスピアが言うように,それぞれの段階を,「人生」という劇が繰り広げられる舞台とみなすこともできる。私たちは人生の各段階において,.自らの個性や性格を形成しながら,主人公や脇役やその他大勢の役を演じ続けていく俳優だともいえる。こうした多様な役割を経験することで、私たちはc.社会化されていく。ただし,演劇の舞台がいつか必ずフィナーレを迎えるように,この世に生まれたものはいつか必ず死ぬ。秦の始皇帝は不老不死の霊薬を探し求めたと言われているが,個体としての生命の有限性は,この世界に存在しているものの宿命である。人間とてもその例外ではない。

 しかし,d.私たちの人生のありようは時代とともにかなり変化してきている。医療・科学技術の進歩などにより,わが国の平均寿命はこのところ急激に伸びてきた。「人生五十年」と言われたのは昔のこととなり、e.現代は「人生八十年時代」と呼ばれている実際,かなりの高齢になっても公民館やカルチャーセンターなどの生涯学習の場に積極的に参加し,元気に活動している人がたくさんいる。高齢者の中には,生涯現役とばかりに,80歳,90歳になってもずっと活躍し続ける人もいる。100歳を超えてほとんど目が見えない状態になっても富士山を描き続けた日本画家の奥村土牛などは,その代表だろう。常に向上心を持ち続けた土牛は,心理学者のマズローが言った 1 を体現した生き方を示している。

 従来,年を取ることは,記憶力が低下したり,病気にかかりやすくなったりというマイナスのイメージでとらえられることも少なくなかった。だが,高齢者が社会の中で多くなるにつれて,土牛のように旧来の老人像を超えた人々もみられるようになった。また,人間が年を取り経験を重ねていく中で様々な知恵を培い,それを活用し続けていくという面も注目されてきている。社会の中で活躍している高齢者の姿は,.私たちに生き方のモデルを提示し,私たちが歩んでいく道筋を指し示していると考えられる。

1 文中の 1 に入れるのに最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。

 @ 自己実現  A昇 華  B意味への意志  C優越感  

 

2 下線部aに関連して,発達課題についての記述として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。 2

 @ 人間の発達において青年期は大きな意味をもっているが,青年期の発達課題を達成できるかどうかは生まれつきほぼ決まっている。

 A 人間の一生には様々な発達課題があるが,達成すべき発達課題は個人ごとに異なっていて,共通性がない。

 B 人間は発達課題の達成に失敗することも時にはあるが,それぞれの段階での危機的状況を克服しながら人格的に成熟していく。

 C 人間の発達は一生涯続くものであるが,それぞれの時期で達成すべき発達課題の間には関連性がほとんどない。

 

3 下線部bに関連して,青年期の自己形成に関する記述として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。 3

 @ 青年は,青年期後期における急激な身体的変化や性的成熟などの第一次性徴の発現を契機として,自己を形成していく。

 A 青年は,友人とのかかわりの中で,自分を見つめ直し,あるべき自分の姿を思い描きながら,自己を形成していく。

 B 青年は,プレ成人期において,親や大人から経済的な自立をはかろうとする心理的離乳の過程を通じて,自己を形成していく。

 C 青年は,二つ以上の相反する心理的欲求の葛藤を合理的に解決する合理化の働きによって,自己を形成していく。  

 

4 下線部cの定義として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。  4

 @ 社会化とは,他人とくらべて自分が優れた人間であると思って自己満足することである。

 A 社会化とは,マスコミが流す情報の影響を受けて,人々が互いに類似した行動や態度をとることである。

 B 社会化とは,ボランティア活動などの社会活動に参加し,社会に貢献しようとすることである。

 C 社会化とは,社会の中の文化や規範を学び,そのメンバーとしての行動様式を身につけることである。  

 

5 下線部dに関連して,わが国における最近のライフサイクル(人の一生)の特徴についての記述として適当でないものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。 5

 @ 女性の高学歴化による就労意欲の増大などにより,女性の社会進出がめざましく,結婚後も職業を持ち続ける女性が増えてきている。

 A 知識や技術の高度化や人々の生き方の多様化により,青年が自らの生き方を模索する期間としての青年期が延長されてきている。

 B 社会の高齢化に伴い,定年制が廃止され,高齢者でもずっと働き続けることができるようになってきている。

 C 平均寿命が長くなったのに伴い,子育てを終えて子どもが独立した後の夫婦の生き方が大きな問題になっている。

 

6 下線部eに関連して,高齢化社会の問題とそれへの対応についての記述として適当でないものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。 6

@  高齢者は経済的基盤が不安定になりやすいので,公的年金や医療費支給などの制度によって生活を支える。

A 一人暮らしの高齢者が増えているので、ホームヘルパーなどの訪問・派遣サービスなどを行う。

B 高齢者は退職や配偶者との死別などの喪失体験によって孤独に陥りやすいので,家族や友人などの周囲の人々が精神的に支える。

C 高齢者が増加し,介護の人員が不足しているので、施設の統廃合を進めて高齢者介護を大規模な老人福祉施設に集中化して行う。

 

問7 本文の趣旨に照らして,下線部fが示している生き方として最も適当なものを、次の@〜Cのうちから一つ選べ。 7

@ 人間は年を取ると病気にかかりやすくなるので、自分の健康に関心を払いながら生きていく。

A 人間は年を取ると失っていくものが多いが、常に前進していこうとする意欲を持って生きていく。

 B 人間は年を取ると人間関係が希薄になりやすいので、人間的なつながりを大事にして生きていく。

 C 人間は年を取ると精神的不安を感じることも多いが、かいことをあまり気にせずに生きていく。

                               〔10-本〕

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