1-2.青年と自己形成
1-2-4<進路・職業の選択>
4 中学校時代の担任の先生から高校生X君にあてた次の手紙を読み,下の問い(問1〜5)に答えよ。
前略
]君,お手紙ありがとう。手紙を読んで,高校生活をエンジョイしていると思っていた君も,いろいろなa.悩みや心配ごとを抱いていることがわかったよ。青年期はそれまでの児童期と比べると,目を自分の内部へ向けるようになり,自分を見つめ直そうとする時期なのだから,当然かもしれないね。 1 も,その著『エミール』において,青年期を「第二の誕生」と呼んでいるんだ。青年期では,悩みながらも,自己探究することが大切なことなんだ。
君の悩みの一つは,高校卒業後の進路選択のことだね。卒業後,君は大学に進学したいようだが,コンピュータ・サイエンスも学んでみたいし,心理学も学んでみたいとのことだね。b.どちらも学びたいが,どちらか一方を選択しなけれはならないということで,知的好奇心の強い君は,選択に相当迷っているみたいだね。選択に際しては,大学卒業後の進路についても,併せて考えてみる必要があると思うね。ハビガーストも,青年期の 2 の一つに「職業を選択し準備すること」を挙げているんだ。自分を見つめ直して,よく考えてみてごらん。
c.進路や職業を選択することは難しいけれど、君のように真剣に考えることは大切なことなんだよ。
もう一つの悩みは,サークルの友人のことだね。友人との人間関係で,いろいろと悩み,対処に苦労しているようだね。d.青年期の友人関係は,相手の気持ちを思いやるだけではだめで,自己をしっかりと見つめていくなかで確立するものなのだ,と僕は思う。この機会に「自分とは何か」を問い、自分を捉え直してみたらどうだろうか。
たっぷり時間がとれるときに君と一度話し合ってみたいと思う。成長した君の姿も見たいしね…。勉学やサークル活動に頑張って,有意義な高校生活を過ごし,すばらしい青春の足跡を残してもらいたいと思う。君の手紙を待っているよ。
草々
問1 文中の 1 , 2 に入れる最も適当なものを,次のそれぞれの@〜Cの
1 @ フロイト A ルソー B レヴィン C フロム
2 @ 社会適応 A 個性化 B 自己認識 C 発達課題
問2 下線部aに関して,次の表は15歳から24歳までの青年の悩みや心配ごとの内容を調べたものである。この表から読み取れることを,次の@〜Eのうちから二つ選べ。ただし,解答の順序は問わない。 3 、 4
@ 1990年の結果の男女差をみると,「友人・仲間」と「容姿」に関する悩みや心配ごとは,女子の方が多い。
A
1990年の結果をみると,「就職」と「性格」については,男女の間に大きな差はみられない。
B
1990年の結果をみると,10代後半では「勉学・進学」に関する悩みや心配ごとが最も多いのに対して,20代前半では「お金」に関することが最も多い。
C
1990年の結果をみると,「友人・仲間」に関する悩みや心配ごとは10代後半の方が多いのに対して,「仕事」に関しては年齢差はみられない。
D
20年間の悩みや心配ごとの内容の経年的変化をみると、一貫して「勉学・進学」に関するものが最も多い。
E
「政治・社会」と「家族」に関する悩みや心配ごとを選択した割合は、1970年の結果と比べると,1975年以降,半分以下になっている。
問3 下線部bのように,両立できない欲求がほぼ等しい強さで同時に存在し,選択が困難である状態のことを何というか。最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。 5
@代償 A自己同一 B葛藤 C抑圧
問4 下線部cに関して,望ましい進路・職業選択のあり方の具体例として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。 6
@ Aさんは,大学の志望校を決める際,進学情報に詳しいベテランの先生の助言にそのまま従い,自分にとって最も合格可能性の高い大学を選んだ。
A Bさんは,女性であるので,一般に女性にふさわしいと言われている職業に限定して,職業を選択するよう努力した。
B Oさんは,自分の「生き方」を考え,興味や適性・能力などの理解に努め・進学に関する情報を吟味しながら,大学の志望校を自分で決定した。
C Dさんは,収入の多さや,休暇・厚生施設の充実といった実利的要因を,職務内容や自分の持つ勤労観よりも重視して選択した。
問5 下線部dの青年期の友人関係について述べた文として,適当でないものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。 7
@ 趣味が共通であったり,遊び仲間であったりする友人よりも,悩みを共有し,「生き方」について論じあったりできる友人を求める傾向が強くなる。
A 青年期に得られた「心の友」と呼べる友人は,その人の生涯を通じて,親密な関係を持ち続けることが多い。
B 不安や動揺が強まる青年期の前期では,友情と信頼に結ばれた,秘密を共有しあえる同性・同年輩の友人が出現する。
C 青年期に得られる「心の友」と呼べる友人は,自分よりも性格的にも能力的にも優れている人物である。
〔7−本,現杜〕