第5章 現代の諸課題と倫理
2.家族・地域社会と情報化社会
5-2-4<情報化と結塘観>
4 次の文章A・Bを読み,下の問い(問1〜10)に答えよ。
A 現代は個人の自由が尊重される時代だと言われる。そうであれば,多様な個性の実現が期待されるが,現実は必ずしもそうなっていない。ファッションや音楽を選ぶa消費行動にせよ,ものの考え方や価値観にせよ、各人が自分自身で自由に選択できることは確かであるが,その結果が意外に没個性的であることも多い。こうした現象の原因の一つとして,私たちの好みや生活様式が,知らず知らずのうちに時代の風潮に拘束されている可能性が挙げられる。例えば,b大量の資源を消費し大量の廃棄物を出すという現代の生活の在り方には,マスメディアの流す情報による影響を指摘できるであろう。c情報化がさらに進み、情報の流れが双方向的になれば,個性化や多様化が進むとする楽観的な見方もある。しかし,ふだん気づかない影響や拘束を自覚する努力が,私たちにはまず必要であろう。その上でさらにd現代人としての真の自由をいかにして確立すべきかを問わなければなるまい。
問1 下線部aに関連して,現代の消費についての記述として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。 1
@ 情報は消費されても消耗しないため,これが消費の重要な対象になったことによって消費が鈍り,それが不況の主要な原因になった。
A テレビ番組やCMなどを通して消費者は欲求を絶えず刺激されており,それを一因とするいわゆるカード破産が社会問題となった。
B 商品に関する正確で十分な情報を容易に入手できるようになったため,消費者は風評や流行に左右されなくなった。
C 通信販売やインターネット・ショッピングが普及したことで,消費者が悪徳商法などのトラブルに巻き込まれる危険はなくなった。
問2 下線部bに関連して,環境問題について提起されてきた考え方の内容説明として適当でないものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ 2
@「持続可能な開発」:これまでは経済成長のために環境を犠牲にして開発が進められてきたが,さらなる環境破壊は開発の継続をも不可能にするので,今後の開発は環境を保全するという条件下で行わなければならない。
A「世代間倫理」:環境破壊や資源問題などは長期間にわたって影響を及ぼすので,子や孫ばかりでなく,決して出会うことのない,はるか後の世代の人間に対しても,私たちは責任を負っている。
B「地球規模で考え・地域から行動しよう」:環境問題に関しては,その関連や重要性を地球規模で考えるとともに、ゴミの排出やエネルギー消費の削減など,各人の身近な事柄から行動を始めるべきである。
C「宇宙船地球号」:地球も宇宙船と同様、閉鎖システムであるから,宇宙船で発生する廃棄物が高度の科学技術によって船内で完全に処理されているように,地球環境問題も科学技術のさらなる発達によって解決されうる。
問3 下線部cに関して、情報化社会についての記述として最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。 3
@ 情報は物と異なって、コピーを作ることが容易なため,知的所有権の保護が重要な課題になっている。
A 企業や個人に関する情報の公開が大幅に進展した結果,すべての人があらゆる情報に自由にアクセスできるようになった。
B 情報化やOA化が進んだことによって、仕事の負担が大幅に軽減され,労働者はストレスから解放される傾向にある。
C 膨大な量の情報を正しく処理できるよう,情報の受け手がマスメディアによる情報操作を要望している。
問4 下線部dに関連して,現代人の在り方を批判的に考察したウェーバー,フロム,リースマンの見解として最も適当なものを,次の@〜Eのうちからそれぞれ一つずつ選べ。ウェーバーについては 4 に,フロムについては 5 に,リースマンについては 6 に答えよ。
@ 近代哲学が人間の本質を普遍的理性とし、真理を合理的客観性に限定したため,現代人は水平化して主体性を喪失した。しかし,人間は本来,個性的で自由な主体であり、その求める真理もまた主体的でなければならない。
A 現代人は社会の束縛から解放されて自由な個人になったが,まさにそれゆえに耐えがたい孤独に陥り、強力な指導者に隷属したり均質な社会のうちに埋没したりすることによって再び自由から逃れようとする傾向をもつ。
B 近代以降の西洋文明は、社会の規範から逸脱したものを非理性的な狂気として排除し、人間の理性を絶対視してきた。そして,日常的な権力関係を通して,社会に順応する人間を生み出し、人間を規格化してきた。
C 現代は、自分が他人と同じであることを喜び,自己満足的で無気力な平均人が権力を握る、歴史上初めての時代である。非凡で個性的なものが排除されてしまうため、西洋文明は危機に瀕している。
D 内部指向型が支配的な人間類型だった時代は終わり,現代では,漠然とした不安から他者の承認を求め,自分の価値観にこだわらず他人と同調して生きる他人
E 合理性を徹底的に追求した近代官僚制を特徴とする社会を作り上げた現代人は,いわば鉄の檻と化したこの社会の中で逃れがたく管理され,豊かな精神と人間性を欠く存在に堕する危険がある。
B 近年・結婚に関する日本の青年の意識に顕著な変化が見受けられる。年齢を判断基準とする「適齢期」に対するこだわりが弱まって、e理想的な相手にめぐり会えたときが「適齢期」だという考え方が強くなってきた。また,結婚は誰もがするものだという規範意識も薄れている。変化は意識の上だけで起こっているのではなく,実際に,晩婚化が進み未婚率が上昇している。例えば2000年には,30代前半男性の42.9%,女性の26.4%が未婚であった。 晩婚化と未婚率の上昇にはいくつかの理由が考えられる。まず,社会の複雑化と平
問5
文章中の 7 に入れるのに最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選
@ 共働きの増加 A 少子化 B 夫婦別姓の増加 C核家族化
問6 下線部eに関連して,次の図は18裁から34歳までの結婚する意志のある未婚の男女のうち,結婚相手に求める七つの条件(「職業」「親との同居」「経済力」「人柄」「共通の趣味」「容姿」「学歴」)のそれぞれについて,「重視する」あるいは「考慮する」と回答した者を合計した男女別の比率を示している。下のア〜オの記述を読んで,図中の a に入れる条件として正しいものを,次ページの@〜Fのうちから一つ選べ。 8
ア 男女の比率が近いのは,「容姿」「人柄」「共通の趣味」である。
イ 女性が「職業」を重視あるいは考慮する比率は,男性の2倍を超える。
ウ 比率が2番目に高いのは・女性では「経済力」,男性では「容姿」である。
エ「学歴」を重視あるいは考慮する者の比率は,男女とも50%以下である。
オ 重視あるいは考慮する者の比率が最も高いのは,男女とも「人柄」である。
@ 職 業
問7 下線部fに関して、ライフサイクルについての記述として最も適当なものも次の@〜Cのうちから一つ選べ。 9
@ラ イフサイクルとは,身体の発達の過程に従い,人生を誕生から死に至るいくつかの重要な節目ごとに段階的に分類したものである。
A ライフサイクルにおいて,青年期は自発性の確立という発達課題を抱えた大切な段階である。
B ライフサイクルにおいて,幼児期は他者に対する信頼感の形成が最も進む基本的な段階である。
C ライフサイクルとは,それぞれの発達段階における他者や社会とのかかわりを重視しながら,課題を達成し成長を続ける,人の一生である。
問8 文章中の A に入れるのに最も適当なものを,次の@〜Cのうちから一つ選べ。 10
@ 青年のナルシシズム傾向が顕著になってきた
A ユース・カルチャーの重要性が増してきた
B モラトリアムとしての青年期が長くなってきた
C ギャング・エイジの発現時期が低年齢化してきた
問9 下線部gに関して、性別役割分業に含まれる問題点とその対応策の説明として適当でないものも次の@〜Cのうちから一つ選べ。 11
@ 企業で育児休業や介護休業を取るのは主に女性である。男女が平等に育児や介護にあたるためには、性別役割分業に関する従来の社会通念を超えない範囲で,仕事と家庭を両立させやすい制度を導入する必要がある。
A 多くの親は、息子には生活力のある行動的な人,娘には情緒豊かで温かい家庭人になることを期待する。親は,このような牲差にとらわれた期待が子どもの才能や個性の発揮を阻害しかねないことを自覚する必要がある。
B 多くの職場で女性の採用や管理職への登用があまり進んでいない。男女共同参画社会の形成理念に基づき、女性の働きやすい職場への環境整備および女性の採用・登用を推進する必要がある。
C マスメディアには男女の役割に関するステレオタイプ化した描写や表現が多く,性別役割分業の再生産が懸念される。マスメディアは社会的責任を認識し,性別役割が固定化されない描写や表現をする必要がある。
問10 下線部hに関連して,葛藤に対して自我を守るための心理学的な防衛機制(防衛反応)の一つである「反動形成」の例として最も適当なものを,次の@〜Dのうちから一つ選べ。 12
@ 臆病な人が強気な態度をとったりむやみに威張ったりする。
A 大人がまるで小さい子どものように泣いたり叫んだりする。
B 強い偏見の持ち主が,他人が偏見をもっていると非難する。
C アニメの主人公に強くあこがれ,行動や服装のまねをする。
D 実力がなくて試合に負けたのに,体調が悪かったせいだと思う。
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