生命倫理課題 -1-  「患者に学ぶ」

 

課題:次の文章を読んで、以下の設問に答えてください。

 それから、これはいろんな本に書いていますが、私が最初に看とったのは16歳の紡績女工さんでした。

結核になって最後は結核性腹膜炎のための腹痛で苦しみ、食べられなくなってしまった患者さんです。

 当時は結核に対する化学療法がなく、ただ栄養を与えるだけでした。モルヒネはなるべく使ってはいけない、といわれていたので、死がそこまで来ているのに、私は患者さんに「( @ )に耐えなさい」と強いていたのです。

 その苦しみのなかで彼女は死んでいくのですが、死の直前に私にこう言いました。

「先生、本当にお世話になりました。もうお母さんには会えないでしょうから、先生から母に感謝の心を伝えてください」

 しかし、若い私には患者の死を受け入れることができません。「死ぬなんてとんでもない」と言ったとたんに、少女の容態が急変しました。そして、すぐにナースを呼び、強心剤を打ったり右往左往しているあいだに、少女は息を引き取ってしまいました。

 なぜ、「お母さんに、あなたの感謝の言葉を伝えてあげますよ」とか、熱心な仏教徒だった彼女に「安心して( A )しなさい」と言ってあげられなかったのか、その悔いが私の心に深く残りました。

 医師というのは、患者の命の最後のやりとりに立会い、死の河の船頭として彼岸まで連れて行く、という役目を与えられているのに、私はその大切なときを無意味な処置で台無しにしてしまったのです。

 医師であるためには、科学(サイエンス)以外のa.本当の人間になるための教育が必要だということを、私は患者さんであるその少女から教えられました。

 私はこれまでに何万人もの患者さんを診てきましたが、私をさとしてくれたおばあちゃんや、この少女のように私に感銘を与えてくれた患者さんは、たくさんいます。そうした患者さんに、私は医療を提供したというよりも、「医の( B )」を教えてもらったのです。

 

『私が人生の旅で学んだこと』 日野原重明 集英社 p.90「患者に学ぶ」より引用


 

 問1.           空欄( @ )に適語を入れてください。

 問2.           空欄( A )に適する仏教用語を入れてください。

 問3.           空欄( B )に適語を入れてください。

 問4.           下線部aの「教育」について、君の考えを以下に書いてください。

  


     年   組  番 名前(             )


 

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