1. 脳死

 

脳は、その構造と役割から大きく3つに分けられます。
知覚、記憶、判断、運動の命令、感情などの高度な心の働きを司る大脳と、運動や姿勢の調節をする小脳、そして呼吸・循環機能の調節や意識の伝達など、生きていくために必要な働きをする脳幹です。大脳、小脳のある程度の損傷は、回復の可能性がある場合がみられますが、脳幹は、その機能を消失すると生命を維持することができなくなるので「脳の心臓部」ともいえます。欧米をはじめとする世界のほとんどの国では、大脳、小脳、脳幹のすべての機能が失われた状態を「脳死」としています。
イギリスのように、脳幹のみの機能の喪失を「脳死」としている国もあります。

 

http://www.jotnw.or.jp/index.html からの引用

()日本臓器移植ネットワーク)

 

世界のほとんどの国で『脳死は人の死』とされ、脳死下での心臓、肝臓、肺、腎臓などの移植が日常の医療として確立されています。しかし、日本の臓器移植法では、臓器を提供する意思がある場合に限って『脳死を人の死』としています。脳死とは、呼吸・循環機能の調節や意識の伝達など、生きていくために必要な働きを司る脳幹を含む、脳全体の機能が失われた状態です。事故や脳卒中などが原因で脳幹が機能しなくなると、二度と元に戻りません。薬剤や人工呼吸器などによってしばらくは心臓を動かし続けることもできますが、やがて(多くは数日以内)心臓も停止してしまいます。植物状態は、脳幹の機能が残っていて、自ら呼吸できる場合が多く、回復する可能性もあります。脳死と植物状態は、根本的に全く違うものなのです。

 

 

脳卒中や脳梗塞、交通事故での頭部外傷などにより、脳に激しい損傷を受けた場合、時間の経過とともにその障害度は進行していきます。
しかし、様々な処置や手術などで治療した結果、回復する患者さんもいれば、脳障害の進行を食い止めても植物状態に陥る患者さんもいます。
さらに、脳障害の進行が進んでしまうと脳を蘇生できる限界を超えて、2度と元に戻ることができない「脳死」になり、やがて心臓停止を来します。
最近話題となっている脳低体温療法は、脳死になった患者さんを蘇生する方法ではなく、脳が蘇生限界点に到達するまでの治療のひとつであり、脳死に陥るのを防ぐものです。
しかし、特定の原因による脳障害にしか適応できず患者さんの管理が大変難しい治療法といわれています。

 

臓器移植法により脳死での臓器提供が可能になった現在、家族が脳死状態にあると判断された場合、残された家族には4つの選択肢があります。
ひとつは、心臓停止まで人工呼吸器でのケアや薬剤の追加などを繰り返し継続する「積極的治療」、
2
めは新たな治療を追加せずに心臓停止まで同じケアを続ける「消極的治療」、
3
めは昇圧剤や人工呼吸器などを中止する「治療の中断」(脳死の場合、まもなく心臓が停止します)、
4
めは、心停止後あるいは脳死後に臓器を提供することです。

この4つの選択肢は、病院によって選択できないものもありますが、基本的にはどなたにも 与えられていて、本人の生前の意思や家族の考え方によって選択できることを知っておきましょう。意思表示カードなどにより本人に臓器提供の意思があった場合には、医師ではなく()日本臓器移植ネットワークの移植コーディネーターが詳しい説明に伺うことになります。
コーディネーターの話を聞くことも家族の判断に委ねられます。
誰にでもやがて来る最期の時に目を背けず、自分はどうしたいか、家族はどうして欲しいかをよく話し合っておきましょう。

 

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