「入団したいだって?」

レミナからその意志を聞かされた時、アリーは言葉を詰まらせた。
レミナの方は真っ直ぐに澄んだ瞳でアリーを見つめる。

「分かったんです…信仰なんかじゃ人は救えないって…」

レミナは物怖じせずに言う。

「私は…信仰に逃げてたんです。ここの人達のように戦おうとはしなかったんです…」
「…」

アリーはそんなレミナの瞳を見つめた。
その瞳から彼女の強い決意が伝わってくる。

「お願いです…私も皆と一緒に戦わせて下さい!!」

レミナはアリーに対して力強く言った。
アリーはそれを聞くと、彼女から視線を外す。

「本気のようね」

アリーは呟くように言った後、口を手で覆って考え出す。
そして、しばらく考え込んだ後に、再びレミナを見つめて言った。

「ラジェットからアナタは信用できるって聞いてるしね…分かったわ。アタシもアナタを信用してあげる…」

それを聞いたレミナの顔から明るい笑みがこぼれる。
アリーはそんな彼女の喜び様を見て、こそばゆくなった。

「有難うございます!!」

レミナは元気な大声で言った。
その純粋さを気に入り始めている事に、アリーは気付いた。

ブレーダはまた、町外れの森で木彫り細工を彫っていた。
やはり、人との馴合いには拒否反応が出る。

「(これが俺の性に合ってるな…)」

人形を彫りながら、ブレーダはそう感じた。
このしん≠ニはりつめた空気の方が彼には居心地がいい。
だが、そんな彼の元に今度も客人が訪れた。
…レミナだ。

「あの…」

遊牧民のような服装のレミナは、少し赤い顔でブレーダと対峙する。
ブレーダはそんな彼女を気にしているのかいないのか、人形彫りを続ける。

「助けて貰ったり色々と…有難うございました」
「…」

ブレーダは聞いているのかいないのか、いつもの無表情で木を削り続ける。
それでもレミナは彼との対話を諦めない。
レミナは意を決したように言った。

「あの…まだ名前を…」
「…ん?」

そういや教えてなかったな…ブレーダはレミナに名前を教えていない事にようやく気付いた。
ブレーダはラジェットの時と同じ無愛想な口調で、レミナに自己紹介をした。

「ブレーダだ。名前ぐらい覚えとけ…」

そう言ってから、作っていた木彫りの人形をレミナに渡す。
レミナはキョトンとした表情でそれを受け取った。

「姐さんから聞いたよ…今日から仲間だってな?」
「は、はい…」
「じゃあ受け取っておけ…俺なりの仁義だ。仲間にゃ渡しとく…」

ブレーダはそう言ってから、やっとレミナの顔を見上げた。
二人の眼が合った。
レミナはどぎまぎしながらブレーダを見つめる。

「お守りさ…」
ブレーダはただ、そう一言だけ言った。



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