<プレスリリース>
ODA「食糧増産援助」に関する提言書を外務省に提出、 及び「貧困農民支援」への名称変更について


2004年11月9日    
食糧増産援助を問うネットワーク(2KRネット)

<食糧増産援助とは>

●ODA無償資金協力の一環である食糧増産援助(通称2KR)は、大量の農薬・化学 肥料・農業機械を途上国に供与することにより、農薬による環境汚染、化学肥料への 依存の助長、不公正な分配による社会矛盾の拡大、不透明な「見返り資金」の存在な ど様々な問題を引き起こしてきました。2002年度の見直しによって農薬供与は中止さ れましたが、化学肥料、農業機械の供与は現在も続けられています。 告です

●私たち2KRネットは2002年の発足以来、食糧増産援助の抜本的改革を訴えてきま したが、このたび、これまでの活動を踏まえて提言文書「『食糧増産援助』から『飢 えをなくすための農業・農村支援』への抜本的転換を求めて」を取りまとめ、10月22 日、外務大臣宛に提出しました(福島瑞穂参議院議員の立会いのもと、河井克行外務 大臣政務官に提出)。

<提言書の内容>

●提言書前半では、情報公開請求による開示資料や国際協力機構(JICA)調査報 告書、2KRネットの現地調査を踏まえ、食糧増産援助の問題点を指摘しました。す なわち、@農業資機材(化学肥料、農業機械)の援助に偏重し、A援助資機材は市場 価格(或いは市場より幾分安く設定された価格)で農民に売却されるため、一定の所 得がある農民以外はこれを購入することができず(或いは購入のために借金を背負 い)、B本来の援助対象者であるべき飢えに直面している農民に対する支援にはなっ ていない、という指摘です。

●後半では、援助を改革する方向性について提言しました。「途上国」の農村におい ては、農薬、化学肥料をはじめとする農業資機材のコストが農民の生活を圧迫し、借 金への依存など生活の不安定化を生み出しています。こうした現状に対し、資機材へ の依存を強める「食糧増産援助」ではなく、「誰が飢えているのか」「その原因は何 か」を分析し、飢えに直面する農民が自立的・安定的な食料生産を営むことができる よう、ローコストで環境にも負荷がかからない農業技術や知識を身に付けるための支 援こそ必要だと考えます。そのような支援は既に多くの現地NGOや農民グループ、 国際機関や各国政府によって始まっています。

<「貧困農民支援」への名称変更について>

●今回の提言書に盛り込んだ内容は、私たちが昨年から今年にかけて5回にわたる外 務省との意見交換会の場で提示してきたものであり、意見交換会の対話を通じて外務 省も食糧増産援助の改革の必要性を認めています。こうした流れの中で、外務省は8 月に公表した来年度予算の概算要求において「食糧増産援助」を「貧困農民支援」 (英語名Grant Assistance for Underprivileged Farmer:本来の権利を剥奪された 農民への支援、の意)に名称変更しました。

●今回の名称変更によって従来の「食糧増産援助」が改革され、「飢えに直面する農 民が安定的に食料を自給していくための支援」に転換されるのであれば、私たちはこ の動きを評価したいと考えます。これまで外務省は「食糧増産援助は必ずしも小農・ 貧農支援ではない。援助資機材の売却益(見返り資金)は相手国への財政支援として 役立っている」(無償資金協力課)との説明を繰り返してきましたが、今回の名称変 更によって、この援助が「財政支援」ではなく、小農・貧農を直接に支援するものだ という本来の目的が明確になったと考えます。

●しかし、名称変更に伴ってどのように内容的な改革がなされるのかは、具体的に示 されておりません。「資機材に偏重」「市場メカニズムによる売却」という従来制度 のままでは「貧困農民支援」に成り得ないのは明らかです。外務省には名称だけでな く内容的な改革を強く望むとともに、意見交換会等を通じて私たちも積極的な提言を 続けていきます。 以上

【提言書送付を希望される方へ】
2KRネット提言書「『食糧増産援助』から『飢えをなくすための農業・農村支援』へ の抜本的転換を求めて」(本文96頁+巻末資料)を、作成費用実費(1000円)+送料 にてお送りいたします。
kr2-net@paw.hi-ho.ne.jp までお申込み下さい。

以上



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