外務大臣宛要請文に関する外務省との会合(10月15日)報告

【日時】 2002年10月15日(火)19時〜21時 外務省1816会議室にて
【参加者】
  • 外務省 無償資金協力課 課長補佐 折笠弘維氏  ほか2名
  • 食糧増産援助を問うネットワーク(2KRネット)  田坂興亜  今井高樹  ほ か4名

[外務省発言要旨と質疑応答]

【 2KR見直しのプロセス 】

(外務省説明)

   遅くとも11月中には調査チーム派遣
    ↓
   調査結果を元に評価
    ↓
   12月中に外務省行動計画を発表
    ↓
   ウェブサイトなどでパブリックコメント募集

【 調査団派遣 】

(外務省説明)

  • 2001年度2KR実施国42か国中6カ国(アジア及びアフリカ)に派遣。
  • 調査期間は約1週間。
  • 外部有識者を入れることで現在最終調整中。
  • 現地ではFAOや現地NGOの協力を得てパブリックコンサルテーションを行う。
  • 3ミッションを派遣予定(それぞれ2ヶ国を訪問)。それぞれ農薬、化学肥料、農機に重点を置いたミッション。
  • 各ミッションにそれぞれの分野の専門家を入れたい。

(質疑応答)

Q: 現地NGOの選定はどのように行うのか?
A: FAOやPAN-UK本部で農薬に関するレポートを書いた関係者から推薦してもらえればと思う。
Q: 過去有識者と呼ばれる専門家の中には、例えば農薬推進派が含まれていたこともあり、疑問を持っている。そういう人選をしてしまうと、農薬を用いないオールターナティブな視点を持っていないわけだから、調査結果は目に見えている。またFAO内においても、高投入型農業を推進している部局とそのような農業の問題点を認識している部局とがある。なので、専門家、FAOと一概に言ってもどこの誰を入れるかによってかなり結果が変わってくるので慎重に行うべきでは?
A: FAOに関しては、どちらかというと農薬に反対する考えの人物を想定しているの で、その点は心配いらないのでは。ご批判は尤もで信頼されない調査をするつもりはない。
Q: どのような有識者を考えているのか?
A: 最終調整中。
Q: 我々市民をその調査団に入れる、例えば田坂さんのような専門家を入れるのはできるか?
A: 持ち帰り、検討します。
Q: 調査のためコンサルタントを公開入札しているわけでは?
A: そうではありません。

【 情報公開、調査結果公表について 】

(外務省説明)

  • 政府間協議で先方政府やNGO団体がどの程度承認するか判らないが、極力公表する方向で考えている。
  • 調査を元に年内に行動計画を外務省として出し、ウェブサイトでパブリックコメントを募集。それにご批判など頂ければ。
  • TOR(=Term of Reference:業務指示書)は現在作成中。その事前公開という要求に関しては持ち帰り検討したい。
  • JICAの現地調査報告書は国内報告書のたたき台・素案となっており、国内報告書が完成した時点で各個人が廃棄してしまっているようだ。今後作成分からは、情報公開も始まったことで通常の国内報告書同様JICA図書館で閲覧できるようになると思う。
  • うまくいっている国の資料も相互検証のためにも必要との要請に対しては、是非ご覧頂ければと思います。後ほど用意します。

(質疑応答)

Q: どういう調査をするのか、という段階から、市民を入れ、透明性を確保するべきでは?外務省オンリーでの調査では議論のもとになる調査結果自体怪しいものになる危惧がある。何が問題だろうというところで、まずコモングラウンド、共通認識を持ってないと、その後のプロセスもだめになってしまう。早目に調査チームの構成など公開すべきでは?また現地でNGOなどにヒアリングしてパブリックコンサルテーションを、ということだが、問題になりそうなのはショートノーティス。今からやって12月に結果を、という話なので、早めに公開し、現地に連絡をきちんと入れなければ、果たしてどれだけきちんと現地の意見をすくえるか、難しくなるだろう。
A: ショートノーティスの危険性などご尤もな指摘。早めに手を打ちたい。公開の件は持ち帰って検討したい。

【 FAO・途上国政府からの2KRに対するコメントについて 】

(外務省説明)

  • FAOも2KRに関して否定的な意見を持っているわけではない。農薬以外に関しては、減額ということを聞いて、「なぜやめるんだ」というようなコメントも出るほどだ。
  • 途上国政府高官からも毎年感謝状が贈られてくるような状況で、感謝されている。

(2KR-NETコメント)

  • FAOも立場上発言できないことはある。
  • 見返り資金に関して過去の行政監察の報告で7割が積み立てられていないとあっ た。これが汚職の温床になっている、政府高官のポケットに入ってるのだとしたら、感謝もされるだろう。誰のための何のための援助なのか、を考える必要がある。

【 2KRスキーム・成果に関して 】

(外務省説明)

  • 問題意識としては、見返り資金、農薬、在庫・適正処理がある。
  • 見返り資金は確かに問題として受け止めている。
  • FAO自体農薬の使用は否定していないが、Code of Conductが守られていないことに問題がある。JICAも環境ガイドラインは持っているが現場に反映されていない。
  • 完全にうまくいったとは思っていない。他方でうまくいった国もあり、それらの国に対してどうすべきかも考えていかねばならない。
  • 飢餓の問題を考えるときに、受入国が食料を増産でき自給率を上げられるようになることが一つ理想としてはやはりあると思う。ただ、実際資機材が末端に行っていたかの確認は十分に出来ていなかったのかなと思う。
  • 先方政府にCode of Conductに関しての遵守状況を確認すると全て丸がついて返ってきてしまう。そういったときの検証の難しさというのがある。

(2KR-NETコメント)

  • 物資援助をエンドユーザーまで確実に届けることは難しい。それを現行のスキームは現地政府に丸投げしており、見返り資金なども現地任せ。確認の出きないスキームは、単なるお金とモノの流れになるだけ。飢餓の解消などできない。
  • 2KRスキームはパッケージ援助。パッケージ援助は現地のニーズとの整合性をとることが難しいことから他の国や援助機関も手をひいている。それらを抜本的に見直す必要がある。ニーズありき。サプライありきではない。
  • 前年度の在庫があるにも関わらず翌年も同じものを送り続ける。既に要請を出す セットが商社がらみで既にあって、それを送るというのがみえみえ。スキーム自体がストックを生み出してしまう。調査の際に、現地の要請に絡んでいる商社との癒着に踏み込むには、多分コンサルタントではできないだろう。よほど第3者的存在でないと。
  • 見返り資金、アフリカで7割、全体で5割が積み立てられていないとの報告が行政監査で出ている。これが現地政府の汚職の現象となっており、援助が末端に生かされていない。スキーム自体が根本的な問題を抱えている。
  • 世銀も2KRは市場経済化などが進んでいるこの時に時代の流れに逆行した援助だと報告を出している。JICAもそれについて内部で調査は出している。それでも日本はコモンバスケットにも入らず、単独でアフリカの農民のごく一部に届く物資を供与しようとしているのが2KR。世界で飢えている人々の7割は農民だが、それらの人々に2KR物資が届いているか。もちろん届かず、商業農家など購入できる余裕のある一部農家に届いているのみ。それが果たして日本のしたい飢餓対策なのか。
  • うまくいってる国でも市場経済化の波は避けられない。そのような中で依存性の問題、流通民営化の問題など、将来を見据えた上で持続可能かどうか、本当にうまくいくのか検討する必要がある。

【 NERICA米に関して 】

(質疑応答)

Q: 日本政府はヨハネスブルクサミットでもNERICA米普及によるアフリカ支援をアピールしてい た。肥料の大量投入とセットにしたNERICA米普及は2KR見直しと矛盾することだと思うが?
A: 2KRを拡大することは考えてない。既に半減しており、年内に出す行動計画で廃止という決断に至れば、廃止になる。
Q: NERICA米に関してUNDPへの拠出金が日本政府からでているようだが、これは2KRか?
A: 2KRではありません。

【会合の最後に、会合の中で出された2KRネットからの要請に対して】

(外務省コメント)

  • 調査団派遣前にTOR公表も含めて、PRの意味も込めてのこのような調査団を派遣すると発表する公開シンポジウムをしてはどうか、というご提案は個人的にいい案だと思う。できるかできないか検討させて欲しい。
  • 派遣後、行動計画をまとめる前に再度報告を公開する(ウェブなど)提案についても持ち帰り検討する。
  • 外部有識者選考について透明性が無い、ということについても持ち帰り相談する。
  • 以上できるかできないかを検討させて欲しい。
                                  

(以上)


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