●食糧増産援助の見直しについて、私たちの見解と意見交換会の要請

4月16日、食糧増産援助を問うネットワークは、外務大臣宛てに以下の要請文を提出しました。


2003年4月16日 外務大臣 川口順子様

食糧増産援助を問うネットワーク
共同代表 田坂興亜  今井高樹

 

食糧増産援助の見直しについて、私たちの見解と意見交換会の要請

昨年12月25日、貴省より「食糧増産援助の見直しについて」が発表されました(これに対する私たちの見解は、12月30日付声明文にてご案内した通りです)。その後、見直し作業のため凍結されていた2002年度食糧増産援助案件について、見直し結果を踏まえて各国の要請を審査したところ、アフリカ諸国については実施できる案件が皆無であったとの情報を貴省無償資金協力課より得ました。

また、見直し結果に関して原口一博衆議院議員より提出された質問主意書に対する政府答弁について私たちも注目しておりましたが、6ヶ国調査の具体的内容には言及されず、2003年度予算における「60%削減」の積算根拠も示されませんでした。

私たちは、貴省の見直しが、食糧増産援助のあり方の抜本的な転換からはほど遠く、単なる予算削減、対象国の削減をもって終了しようとしていることを強く懸念します。

私たちは以下の通り見解を表明するとともに、貴省との意見交換会の開催を要請致します。

1.私たちの見解

  1. 途上国、特にアフリカにおける「飢え」の問題は深刻です。食糧増産援助の本来の目的は、途上国の人びと自身による食料生産を支援することによって「飢え」の問題を解決することであった筈です。しかし、農薬・化学肥料・大型農業機械を相手国に大量供与し、現地農民に売却するという食糧増産援助の仕組みは、飢えの解消にはつながらず、農薬による環境汚染、資機材の売却益(見返り資金)を巡る不正、汚職等を生み出してきました。
  2. 国際機関や市民からの批判が増す中で、昨年、外務省は食糧増産援助の見直しを行いました。しかし見直しは、食糧増産援助の制度的な問題点(資機材偏重、見返り資金等)は残したまま、農薬供与の停止、2003年度予算の60%削減、事前調査・事後評価の強化を宣言して終了しています。これは、本来の目的である「飢え」の解消に寄与するどころか、単なる予算削減措置に過ぎません。
  3. 私たちが求めているのは援助のあり方の抜本的な転換であり、「飢え」の原因と、それをなくすための支援の方策を徹底的に究明し、実行することです。具体的には、資機材の大量供与ではなく、食料難に直面しやすい小規模農民が身近で入手できるローコストの資源(麦藁、稲藁、鶏糞等)を活用し、持続可能な農業生産、食料自給ができるよう、国際的な技術協力を中心とした支援を行うことです。
  4. こうした支援への転換は現在も部分的には実施されています。国連食糧農業機関(FAO)を通じたアンゴラへの食糧増産援助は、従来の制度的な枠組みを離れ、貧困農民層の食糧自給のため種子、農具(鋤、鍬)を無償配付して有機農法の指導を行うものであり、この援助の方向性を私たちは評価しています。実験的に導入したこの新たな試みを、外務省はどのように評価し、今後の援助方針にどう活かそうとしているのか明らかにすべきです。
  5. (3)で述べた援助のあり方の転換については、相手国及び日本の専門家や市民・NGO、政府、国際機関が協力して調査・研究を実施し、十分な議論を行い、1年程度をかけて具体案を提示する必要があります。その過程は透明なもので、情報は公開されなければなりません。日本はこのための資金をODAとして拠出すべきです。
  6. 日本に求められているのは「飢え」の問題を解決するための長期的、積極的なコミットメントであり、上記のような転換が図られるのなら援助はむしろ増額すべきです。

2.意見交換会の要請

上述した私たちの考え方を説明し、食糧増産援助の問題点の認識を共有し、今後の農業・農村開発協力のあるべき形を建設的に議論するため、以下の通り意見交換会の開催を要請致します。

  1. 今後の半年間に3回程度(目安として5月、7月、10月)の会合を設け、継続的な意見交換を行いたい。
  2. 第1回目の開催までに、6ヶ国調査の報告書を公表されたい。
  3. 意見交換会は、当団体だけでなく、広範な市民・NGOの参加を保障されたい。

以上



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