<プレスリリース>
ODA「食糧増産援助」 外務省・JICA現地調査(レソト・スワジランド)にNGOが参加


2003年12月26日
食糧増産援助を問うネットワーク(2KRネット)



●無償資金協力の一環である食糧増産援助(略称2KR)は、十分な現地調査もなく 大量の農薬・化学肥料・農業機械を途上国に供与することにより、農薬による環境汚 染、化学肥料への依存の助長、不公正な分配による社会矛盾の拡大、不透明な「見返 り資金」の存在など様々な問題を引き起こしてきました。


●昨年末に外務省は2KRの見直しを行い、農薬供与の原則中止と予算規模の縮小、 モニタリングの強化を決定しました。今年度については「要請国については必ず現地 調査を行い、問題があれば援助しない」と表明し、実施候補16ヶ国にJICA調査団 を派遣しました。

●この中で、南部アフリカのスワジランド、レソト両国への調査団に2KRネットが 参加を申し入れ、11月17日から27日まで当ネットワークから津山直子(日本国際ボラ ンティアセンター南アフリカ事務所代表)がオブサーバーとして調査団に同行しまし た。外務省によれば、このような調査へのNGOの参加は初めてのケ−スとなりま す。

●両国に対しては2KR援助としてそれぞれ年間2〜3億円の化学肥料や農業機械(ト ラクター等)が供与されてきましたが、今回の調査で次のような問題点が明らかにな りました。

    (1)使われていない農業機械(レソト) 灌漑用ポンプ63台(95〜97年供与分)と歩行用トラクター37台(99〜00年供与分)、 合計約1億 1千万円相当が使用されず在庫として残っている

    (2)トラクターの購入希望者は農民ではない(レソト) 乗用トラクターはレソト政府が民間に販売する予定だが、購入希望者の大半は農業省 OB、政府高官およびその親族、ビジネスマン/ウーマンであり、明かにトラクター 賃貸ビジネスが目的の購入。農民への支援にはなっていない。

    (3)見返り資金の記録不在(スワジランド) 93年以前の「見返り資金」に関する記録が存在せず、使途不明。(見返り資金:被援 助国政府が援助物資を国内で売却することにより積み立てられる資金。一定金額を積 み立てて社会開発に活用することが日本政府との間で義務付けられている)

●外務省改革「変える会」は今年4月の最終報告で2KRを「廃止の方向で更に検討す べき」と提言しました。資機材の大量供与に偏重した2KRが現地農民の支援につな がっていないことは今回の調査でも明らかです。外務省はこのような資機材偏重の2 KRを取り止め、途上国農民の飢えを解消し自立を支援するための現地のニーズに 合った農業協力に転換すべきだと私たちは考えます。

<今回の調査結果についてのコメント>

食糧増産援助を問うネットワーク(2KRネット)

1.私たちは、資機材大量供与(政府間移転)に偏重した2KR援助の問題を指摘して きましたが、今回それが外務省・JICAの現地調査でも実証される形になりまし た。供与した資機材を相手国の市場で売却し、見返り資金を積み立てるという2KR スキームは現地農民の持続可能な農業生産につながっていないことが明らかになって います。

2.その意味で、2KRスキームの存続を決めた昨年末の外務省による「見直し」 は、現地を充分に調査した上での抜本的な改革にはなっていません。

3.2KRの本来の目的は「農業生産の増加によって飢えを解消する」ことであり、 このために51億円(2003年度)の予算があるのなら、これを、飢えに直面する確立が 最も高い農村女性を含む貧農あるいは小規模農民の自立的で持続可能な農業生産の向 上のために活用すべきです。すなわち、ローコストで再生産可能な身近に手に入る資 源の活用奨励とそのための技術協力、地域で培われた土地事情にあった技術の向上と 普及を中心とした協力、農民自身のエンパワメントと組織化を促すような支援です。 これらは、農業生産性の向上だけでなく、飢えの低減に役に立っていることが、国際 的に実証されており、国際機関や他のドナー諸国、NGOなどによって奨励されていま す。

4.現状の2KRを取り止め、こうした方向への転換を可能にするべく、2KRネット は、現地NGOや農民団体、国際機関などと協力しつつ、今後も外務省等との意見交換 を続けていきます。

以上



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