6.鳥籠の少年篇  04.6.28.
 



「…あ。蛭魔さん、小鳥ですよ、ほら。」

「あん?」

「ほら、窓のところに。…あ、入って来た。可愛いなvv

「ほお。」

「セキセイインコですよね、これ。わあ、人懐っこいvv

 セナ王子の白い指先にちょこりととまり、王子の柔らかな頬に すりすりと。愛らしい仕草で軽やかな羽毛に包まれた身を擦り寄せる、長い尾羽根もすらりと細い、玉子色した小さな小鳥。

「可愛いな、ん〜〜vv

「ああ、こらこら。」

 小さなクチバシに“チュッvv”と口づけしかかったところを、横合いから、これもまた綺麗な手が伸びて来て。愛らしい小鳥を、なんと…がっしと鷲掴みにしたお師匠様で。

  「ひ、蛭魔さん?」

 いくら攻撃的なところの強い人だとはいえ、それはあんまりじゃなかろうかと。セナがギョッとし、学習中のお部屋の一隅にて控えていた進もまた、少なからず驚いて眸を剥いてしまった行動だったが、

  「感謝しな。もう少しでチビの初物、奪られるトコだったんだからな。」

 進へとそんなような言いようをしてから、手の中のインコへ向けて…ちょいと眸を眇めて見せる蛭魔であり。

  「お前はなぁ〜〜〜。大人しく待ってられんのか。」

  ――― はい?

 小鳥さんへとそんな馴れ馴れしい“物言い”をした蛭魔さん。そのままパッと手のひらを広げると、ポンッと弾けるような音がして、

  「な〜んだ。バレてたのか。」

 そこへと現れたのは、亜麻色の髪をした白魔導師さんだったものだから。

  「…っ!」

  「おっと。」

 じゃきんと剣を引き抜きかけた騎士様へ、

  「セナくんへの“キス未遂”は、
   言っとくけどこっちから仕掛けた訳じゃないんだからね。
   そこは誤解のないように。」

 宙に立てた人差し指を振り振り、鹿爪らしいお顔になって言ってのけた桜庭くんだったが、

  「勉強の邪魔はすんなって、あれほど言っといたろが。」

  「あだだ…☆」

 背後からごつんと、拳骨を賜ってしまった辺りは、相変わらずのお方であるようで。

  「だってサ。抜き打ちテストでもなけりゃ呼んでくれないじゃんか。」

  「当たり前だ。これは“学習”の場なんだぞ?」

  「進は? いつも同席してんじゃんか。」

  「こいつは護衛だ。それに口を利かねぇでいるからな。」

  「僕だって黙ってられるさ。」

  「どうだかな、お前が混ざると気が逸れんだよ。」

  「最初から決めつけるなんて、ひっど〜いっ!」

 あらあら。口喧嘩に発展してしまいましたねぇ。

  「…しっかりと中断されてしまったな。」

  「あはは、そうみたいですね。///////

 極めて冷静な見解を下さった進さんへ、肩をすぼめたセナくんだったが、

  「殿下。進も。こっち、出て来て下さいな。」

 扉の陰からそんなお声がして、手招きつきで二人を呼んでいる。

  「あやや? 高見さん?」

  「桜庭くんに乱入してもらったのは、私のリクエストなんですよ。」

  「…え?」

  「ここんとこ、朝から晩までという勢いで根を詰めているでしょう?」

  「あ、えと、はい…。」

  「早く早くと焦るとロクなことがありません。息抜きも必要です。」

  「…はい。」

  「国王陛下が、陽雨国の珍しい果物を贈られたそうです。
   一緒に食べましょうとのお誘いですよ?」

  「あ、はいっ!」

  「進も、ご一緒なさい。陛下からのお誘いですからね。」

  「ああ。」





         ◇◇◇




  「…ったく。またカリキュラムが遅れるだろうがよ。」

  「なに言ってんの。僕の化けたインコ見たときのセナくん、ちゃんと見てた?」

  「???」

  「久し振りに肩の力を抜いて笑ってたよ?」

  「………。」

  「お勉強がイヤな訳ではないんだろうけど、たまには息抜きしないと。」

  「…わぁったよ。」

  「妖一もだよ? 今日はのんびり骨休めしなさい。」

  「そっか。じゃあ、お前の相手も出来んな。」

  「え〜〜〜? なんで?」

  「体力やエネルギー使わないでいいなら、じゃれてやっても良いが。
   ………どうだ? それで済むのか?」

  「うっ…☆」



    *あくまでも“しゃれ劇場”ですので、ご理解下さいませ。


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