「…あ。蛭魔さん、小鳥ですよ、ほら。」
「あん?」
「ほら、窓のところに。…あ、入って来た。可愛いなvv」
「ほお。」
「セキセイインコですよね、これ。わあ、人懐っこいvv」
セナ王子の白い指先にちょこりととまり、王子の柔らかな頬に すりすりと。愛らしい仕草で軽やかな羽毛に包まれた身を擦り寄せる、長い尾羽根もすらりと細い、玉子色した小さな小鳥。
「可愛いな、ん〜〜vv」
「ああ、こらこら。」
小さなクチバシに“チュッvv”と口づけしかかったところを、横合いから、これもまた綺麗な手が伸びて来て。愛らしい小鳥を、なんと…がっしと鷲掴みにしたお師匠様で。
「ひ、蛭魔さん?」
いくら攻撃的なところの強い人だとはいえ、それはあんまりじゃなかろうかと。セナがギョッとし、学習中のお部屋の一隅にて控えていた進もまた、少なからず驚いて眸を剥いてしまった行動だったが、
「感謝しな。もう少しでチビの初物、奪られるトコだったんだからな。」
進へとそんなような言いようをしてから、手の中のインコへ向けて…ちょいと眸を眇めて見せる蛭魔であり。
「お前はなぁ〜〜〜。大人しく待ってられんのか。」
――― はい?
小鳥さんへとそんな馴れ馴れしい“物言い”をした蛭魔さん。そのままパッと手のひらを広げると、ポンッと弾けるような音がして、
「な〜んだ。バレてたのか。」
そこへと現れたのは、亜麻色の髪をした白魔導師さんだったものだから。
「…っ!」
「おっと。」
じゃきんと剣を引き抜きかけた騎士様へ、
「セナくんへの“キス未遂”は、
言っとくけどこっちから仕掛けた訳じゃないんだからね。
そこは誤解のないように。」
宙に立てた人差し指を振り振り、鹿爪らしいお顔になって言ってのけた桜庭くんだったが、
「勉強の邪魔はすんなって、あれほど言っといたろが。」
「あだだ…☆」
背後からごつんと、拳骨を賜ってしまった辺りは、相変わらずのお方であるようで。
「だってサ。抜き打ちテストでもなけりゃ呼んでくれないじゃんか。」
「当たり前だ。これは“学習”の場なんだぞ?」
「進は? いつも同席してんじゃんか。」
「こいつは護衛だ。それに口を利かねぇでいるからな。」
「僕だって黙ってられるさ。」
「どうだかな、お前が混ざると気が逸れんだよ。」
「最初から決めつけるなんて、ひっど〜いっ!」
あらあら。口喧嘩に発展してしまいましたねぇ。
「…しっかりと中断されてしまったな。」
「あはは、そうみたいですね。///////」
極めて冷静な見解を下さった進さんへ、肩をすぼめたセナくんだったが、
「殿下。進も。こっち、出て来て下さいな。」
扉の陰からそんなお声がして、手招きつきで二人を呼んでいる。
「あやや? 高見さん?」
「桜庭くんに乱入してもらったのは、私のリクエストなんですよ。」
「…え?」
「ここんとこ、朝から晩までという勢いで根を詰めているでしょう?」
「あ、えと、はい…。」
「早く早くと焦るとロクなことがありません。息抜きも必要です。」
「…はい。」
「国王陛下が、陽雨国の珍しい果物を贈られたそうです。
一緒に食べましょうとのお誘いですよ?」
「あ、はいっ!」
「進も、ご一緒なさい。陛下からのお誘いですからね。」
「ああ。」
◇◇◇
「…ったく。またカリキュラムが遅れるだろうがよ。」
「なに言ってんの。僕の化けたインコ見たときのセナくん、ちゃんと見てた?」
「???」
「久し振りに肩の力を抜いて笑ってたよ?」
「………。」
「お勉強がイヤな訳ではないんだろうけど、たまには息抜きしないと。」
「…わぁったよ。」
「妖一もだよ? 今日はのんびり骨休めしなさい。」
「そっか。じゃあ、お前の相手も出来んな。」
「え〜〜〜? なんで?」
「体力やエネルギー使わないでいいなら、じゃれてやっても良いが。
………どうだ? それで済むのか?」
「うっ…☆」
*あくまでも“しゃれ劇場”ですので、ご理解下さいませ。

|