10.鳥籠の少年篇 ? 05.02.27.

不思議な能力がまた増えて(というか明らかになって)、
大好きなセナ王子に…姿から着ているものから、全てすっかりとそっくりに変身出来たりするよになった、
実はスノウ・ハミングな ドウナガリクオオトカゲのカメちゃん。
シリーズで一、二を争うほど小さな身でありながら、肩書きや但し書きが ほんにいっぱいな子であることよ。(笑)

「でも、ボクってこんななんですか?」
「??? 何か何処か気に入らないトコでもあるのか?」

今日は王子の咒の先生でもある導師の皆さんとご一緒に、温室にてのお茶会で。
セナ様と護衛官さんと、それから3人の導師様が顔を揃えて、ハーブのお茶とスコーンにクッキー。
南国のフルーツを使ったケーキやジャムも用意されての、一足早い春めいた暖かさの中での集いとなっていて。
そんな場で、ついのことだろうが ぽろりとそんなことを言い出したセナ様だったものだから、
同座していた蛭魔さんや葉柱さんがちょっとばかり怪訝そうなお顔になった。

「どっから見てもそっくりだけどもな。」
「そだね。」

葉柱さんの感慨へ桜庭さんも頷いて見せたが、当の王子様はといえば。
ふんわりした黒髪の、それは可憐な小さな男の子が嬉しそうに擦り寄り凭れ掛かって来るのを、
こちらでも可愛いなぁと抱えてやりつつも、

「あのその、こんな可愛いかなって思って………。////////」
「おやおや。」

後半部分はいやに小声になって。何とも微笑ましいことを言い出すから、見ているこっちが照れてしまうったら。

「セナくんてあんまり鏡は見ないんでしょ。」
「身の回りの世話は、進が全部こなしてそうだしな。」

髪を整え、着替えを手伝い、襟やら袖口やら丁寧に確認してもらいと来ては、
自分で確かめる必要もないというもので。それで、さしてナルシストではないセナ様、
鏡を使ってまじまじと自分を見る機会が激減したに違いなく、

「えと…。////////」

図星だったか真っ赤になって含羞はにかんでしまった王子様へ。
カメちゃんのセナくんが、小首を傾げもって“きゅうぅ??”と心配するよな声を出す。
どうかしたの?といたわるようなお顔や所作が、これまた何とも言えず愛らしくって。
それを見て、

「あんまりからかって困らせると、カメが暴れるぞ?。」

気遣ってるような言いようの割に、こちらさんもやはりクスクスと楽しそうに笑っている蛭魔さんであり。
ほのぼのとしたお茶会は、
温室の中でなくとも構わなかったのではなかろうかというほどに、それはそれは温かい雰囲気。
本当にひょんな拍子から、こんなことも出来るのだと判ったカメちゃんであり、
のっぺりしたイグアナさんみたいな姿から、一変して…愛らしい少年へと変身しちゃえるなんてと、
今だに感嘆の声が出てしまう皆様だったりし、

「いつものカッコでも、十分に愛嬌はあったんだがな。」

時々、マンゴーを餌に吊るしての
“カメちゃん釣り”などというとんでもない遊びをやって下さった蛭魔さんがくつくつと笑えば、

「セナくん自身は、オオトカゲのカメちゃんの方が好きなんじゃないの?」

桜庭さんもそんなお言いようをなさるものだから、

「そんなことないですよう。」

どっちだってカメちゃんですものと、
肩口にふにゃりとした笑顔で擦り寄っている相手を、小さな“弟”みたいに撫で撫でと愛でつつ言い返すセナ様で。
でもね、

「ねえねえ、カメちゃん。」

間近になった愛らしいお顔の、大きな琥珀の瞳へと向けて、セナ様、こんなことをお訊きになった。

「ボクにしかなれないの?」

どういう仕組みなんだか、色々な姿になれるカメちゃん。
もしかしてまだ何か、もっと変身出来ちゃうのかもと思いつき、
セナ様としては…何の気なしに訊いてみたのだけれど。

「………。」

う?っとと、
お口の傍に小さな指を添えるようにして考えてみている仕草も、実はセナ様とそっくりなカメちゃん。
少しほどの間をおいてから、

「♪♪♪」

きゅいきゅいvvと嬉しそうな笑顔になって何度も頷いて見せたから…って、
おおっと、まだ何かに変身出来ますってかい?

「凄い凄いvv」

にこ?っと笑ったまま無邪気にはしゃぐセナ様の様子に励まされ、
同んなじお顔のカメちゃん、そぉっと眸を伏せると何かを念じるような顔をする。
思わぬ話の成り行きに、導師様たちや護衛官の進さんまでもが、ついつい固唾を呑んで見守れば、

  ――― ぱあぁ…っと、

柔らかな光が広がってセナ様そっくりな姿を包み込み、
一瞬だけながら…その輪郭までもを掻き消してしまう。
周囲の木々の梢に留まっていたインコたちまでもが、見守っていたそんな中。
薄紙をそぉっと剥ぐように、視野の明るさがどんどんと元とに戻って来て。
セナ王子と向かい合ってた位置に、さっきとは違う姿になったカメちゃんが座っており………。

  「きゅ?いっvv」

相変わらずにお話は出来ないままながら、
さっきと変わりない屈託のなさにて、小さなセナ様に抱きついたもんだから。

「あやあや…。///////」

姿はどうあれ、中身はやっぱり“カメちゃん”なんだから。
さっきまでとは逆になり、頼もしい懐ろに掻い込んでもらって…どうしたもんかと戸惑うご本人はともかくも。
そんな“二人”を眺めやり、

「…良かったなぁ、お前。」
「そだね、一応は好かれてるからこその、あの姿の選択なんだろうし。」

無責任な言いようにて、心にもない“祝福”をする黒・白双方の魔導師様たちの見解に、
苦々しいお顔で“う???っ”と唸ったのは………葉柱さんである。
そう、カメちゃんが他にと選んで変身してみたのは、本来の自分の飼い主である彼の精悍な姿であったりし。
セナ様になったのと同様…お顔という風貌のみならず、
背丈も体格も表情までもが あまりにそっくりさんなものだから、

「阿呆っ。納得済みの当人同士はともかくもだなっ!」

自分にまったくの瓜二つ、それはそれは男臭い青年になってしまったカメちゃんから、
きゅううっと抱き締められて“いい子いい子vv”と撫でられる側になってる小さな王子様のその後方。
先程と何ら変わらず、黙って控えてらっしゃる護衛官さんの。
無表情のままの俯き加減のそのお顔が…何故だか微妙に怖いじゃないかと。
故郷を離れてたった一人で、当て処ない長旅を続けてた、それなりに腕に覚えがある筈のお兄さんが。
覚えなく、されど ぶるると震えてしまったほどの殺気を放つのは。
後生だから辞めたげて下さいです、護衛官様。


「他所様ならいざ知らず、ここでの“ルイセナ”ってのは初めて見たね。」
「…そうだな。」(←あっ。もしかして妖一さんたら、ちょっとムッとしてるとか。)
「無責任に煽るのは よせ?っ。」



   ――― 平和なんだか、物騒なんだか。
        とりあえず、
        相変わらず 仲のいい皆様ではあるらしいですよvv



  *あくまでも“しゃれ劇場”ですので、ご理解下さいませ。




戻る