想い 〜きっかけ編



「晴天の霹靂」

まさにこの一言につきる。

今までも此の船の船長には散々困らされたが、今回は本当に参った・・・。





「うるさい!!! ゾロなんかもう知らん!!! 近寄んなっ!!!!! イーーーっだ!!!!!」
「はァ????? ルフィ、一体何なんだよ!!!」

 秋空の広がる此の日、珍しくゾロとルフィが後甲板で喧嘩をしていた。否・・・、喧嘩と言うより我儘坊主が駄々を捏ねて其のお守りが困り果てているってカンジ・・・。口の両端に人差し指を引っ掛けて「これでもか!!!」という位横に引っ張るものだから、ルフィのゴムの皮膚が伸びに伸びて・・・、恐らく其の長さは自分の身長と同じ位にまで伸びきったと思われる。
「ガキかよっ、お前は・・・っ!!!」
 呆れて物が言えないと言わんばかりの口調のゾロだったが、本当はルフィが何を怒っているのか皆目見当が付かないのだ。困り果てて碧頭をボリボリと掻き毟る。そして、少しずつ考え始める。



 今より時を遡って数分前・・・。
後ろ甲板で一人、トレーニングに励む自分だった・・・。其処に突如現れた船長がこれ見よがしに言って来た。
「退屈だ〜〜〜・・・。」
「あァ!?」
『何で何時もおれに言うんだ?』
とは口が裂けても訊けなかった。自分がルフィにとって一番の理解者であるとの自負もあったし、ルフィが甘えに来る事は日常茶飯事的な事であったから・・・。


 確かに不機嫌そうな顔をしたかも知れないが、此の程度のやりとりは普段から当たり前だったと、今更怒る理由にはならないと思うゾロ。



『じゃァ、一体何を怒っているんだ・・・??』
 普段は言葉無くとも全て判るルフィの事が一切解らない・・・。そう思ってルフィを見ると更に大声で叫んでいる。
「ゾロなんか、ゾロなんかっ!!! 絶交だーーーーーっっっ!!!!!」
 息が続く限り叫んだ後、血管の浮いた顔のまま走り去る。そして、
「ゴムゴムのーーー・・・っ、ロケットーーーっ!!!」
 メインマストの上方の見張り台にぐぐっと腕を伸ばして手を掛け、あっという間に飛んで行ってしまう。
「おい、ルフィ!!」
 下で呼び掛けると、ひょこと顔を覗かせて怒りを顕わにするルフィ。
「だからゾロなんかもう知らん!!!!! あっちへ行け!!!!!」
 相当怒っている表情だ・・・。困った事にゾロにも・・・、ゾロにさえもルフィの怒りの原因が判らない。
「チっ・・・。 本当に何なんだ・・・。」
 ゾロに滅多に怒る事のないルフィがこうまで怒りを表現している。あっちへ行けと言われても行ける訳がないとマストを背もたれにして座り込む。今無理してルフィの傍に行く事は些か憚れる。だが、如何して良いかはやはり判らない・・・。ルフィの怒りの原因は何なのだろう・・・・・。


「ねぇ、あれもこの船では常識なの?」
 不思議そうにロビンが蜜柑畑のナミに訊いている。
「いいえ、あんなにゾロに怒ったルフィを見たのは私も初めてよ・・・。」
 ゾロに判らないルフィの事が自分に判る訳がないと肩を竦めて見せる。
「ええっ? ルフィ、ゾロに怒ってんのか??」
 船室から出て来たチョッパーは思いっ切り驚いている。
「は・・・? ゾロでさえルフィに近付けねェ事って初めてだろう?」
 ウソップが目をまん丸くして誰に問う訳でもなく言う。
「待て待て、クソゴムはメシの匂いで絶対ェ来る!」
 サンジは颯爽とキッチンに向かう。


 だが、どんなにサンジが美味しそうな匂いを漂わせても、甲板へと運んでみても、ルフィの反応は「うるさい!!!!」の怒号のみだった。結局誰も近付けず、時だけが無情に過ぎて行く・・・。



「何とかしろよ! 異常だぜ!? 腹が減ってない訳ねェだろう? あの食いしんぼが何意地張ってんのかは知らねェが、メシを用意したおれにまで怒りをぶつける程なんだぜ!!」
 サンジは座り込んでいるゾロに悪態を吐く。だが、其れは無理もないだろう・・・。 「ルフィ、メシだぞ!」の一言に、「うるさい!! 誰も来るな!!!!!」という返事だったのだから・・・。



『おれにどうしろってんだよ・・・!! ったく・・・・。』
 長い溜息を吐いて重い腰を上げる。皆に突き刺さる様な視線を送られ続け、正直困っているゾロ。ゆっくりとマスト上方の見張り台へと移動する。
「ルフィ?」
 覗いてみると怒り疲れたのか眠っていた。腹の上に帽子抱える様にして両手を乗せている。
「ルフィ・・・・・。」
 腰を下ろし、額に掛かった前髪を静かに梳いて囁く様に呼び掛ける。
「ん・・・ぞろ・・・。」
 半分寝言の様な返事・・・。だが、うっすらと瞼を開けて覗かせた瞳はしっかりとゾロを捉えている。
「悪ィ・・・。おれが何かしたか? 判らねェ・・・。頼むから怒りを静めてくれねェか・・・?」
 どんなに考えても判らなかったと、偽りのない気持ちを困った様に告げる。
「ゾロ・・・。 あの・・・な・・・・?」
 ゆっくりと起き上がりゾロと向き合い、少し躊躇しながらまたゆっくりと言葉を選ぶ様に喋る。
「ごめん・・・。おれ、無茶苦茶だったよな・・・・・。最近・・・、ゾロと二人っきりの時間過ごせてねェと思ったらさ・・・・。」
 チラリチラリと窺う様な目つきで自分を時々見上げて来る態度でやっと理解する。もどかしさをどう伝えれば良いのか迷っている内に心とは反対の行動に出ただけだと・・・。
「今夜は一年中で一番綺麗な満月が見られるんだってよ・・・。 誰にも邪魔させずに・・・、二人だけで見ねェか?」
 ふわりとルフィの頭に乗せた手で優しく髪を梳いてからそう言いながら顔を近付ける。ルフィだけに向ける笑顔を見せて・・・。 
「おう・・・! 二人っきりだなっ・・・・!! 約束だ・・・・・。」
 やっと素直に嬉しそうにして、瞳を閉じるルフィに想いを告げた。





   今回は本当に参ったが、否・・・、コイツには何時も参ってるか・・・。

   だが、其れもまた悪くねェな・・・・・。



取り敢えずFin.


「波の随に」のMorlin.様へ
8888番のゾロ番ゲット、有り難う御座いました<m(_ _)m>
おいおい・・・な内容で申し訳なく・・・(泣)
えと・・・、お題はクリア出来てますでしょうか?(おどおど・・・)
こんなんで宜しければ持って行って下さいませねv

20020921 SAT AM   byヒロ


 ヒロさまのサイト『WITH』へGO!→ 
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*ヒロ様、凄い凄いっ!
 あのですね、このお話はヒロ様ご自身が仰有ってるように、
 Morlin.がヒロ様のサイトにてゾロ番を踏んだそのご褒美に頂いたものなのですが、
 ほんの一日、ううん、半日で書いて下さったということなのです。
 しかもこの内容vv
 リクしましたテーマは、
 『何にだかゾロへと怒って、
  メインマストに立てこもり、ハンストしてまで喧嘩しているルフィ。
  但し、ゾロには原因が判ってない』
 という、我儘一杯な代物だったのに、まあまあなんて素晴らしい。
 ルフィは可愛いし、ゾロは男臭くって大人でステキですしvv

 しかも、おまけとして、
 先にUPされてらした『想い』まで付けて下さる、大盤振る舞いvv
 もうもうお腹一杯にさせていただきましたですvv
 ありがとうございますvv 大切に読みますね?


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