cordes sur ciel



ゆるやかに隆起した山の上に築かれたCordes sur Cielは、ミディ・ピレネー地方中部Tarn県にある美しい町です。町の名前は、英語ではCordes in the Sky、“天空に浮かぶCordes”。その名のとおり、広い空をバックにそびえ立つCordesの町並みは幻想的で、遠くから眺めると子供のころに見たお話のお城を思い出します。


Cordesの町は、トゥールーズ伯によって、1222年に築かれた要塞都市です。Bastideといわれるこのような様式の町は、13〜14世紀にかけて主にフランス南西部に多く築かれ、現在でもこの地方に数多く残っています。中世の町としては比較的新しく築かれた町で、現在で言うところの都市計画に基づいて設計されており、たいていのBastideでは同じような都市の構造を見ることが出来ます。度重なる戦乱から住民を守るために高台に築かれたBastideが多く、町を取り囲む防壁と、町の中心部には広場(マーケット)と教会が造られました。Bastideは、それまでは点在する村々に離れて住んでいた領民を一箇所に集約したために税の徴収が簡単になり、また職人たちが開く市場のおかげで交易が盛んになり税収が増えるなど、領主にとって利点が多い要塞都市なのだそうです。

現在のCordesには、2重の防壁と分厚い石で守りを固めた4つの門が残っています。一番強固な門は左の写真のPorte de la Jane。両脇に塔を備えたどっしりした門は外側の防壁に作られた13世紀の作です。Bastideの様式にのっとり、町の中心にはマーケットが残っており、当時のCordesの繁栄ぶりをしのばせます。石畳が敷かれた通りは主に2本のメイン通りから成り、その両脇には13世紀後半から14世紀半ばにかけて造られたゴシック式の建造物がいくつか軒を連ねています。

13世紀のCordesは織物業や染物業や皮革業で大いに繁栄したそうですが、それらの職人の中には多くのカタリ派信徒が含まれていたのだそうです。Bastideが作り出した一箇所への人口集中と、盛んになった交易によってカタリ派の教えはまたたくまにCordesの町にも広まり、1233年に一つの悲劇が起こります。カタリ派の人々を改宗させるためにカトリック教会から派遣された3人の異端審問官が、井戸に投げ込まれて殺されるという事件でした。この井戸は、深さ114メートル。現在でもマーケットの脇に残っており、井戸の上に建てられた鉄製の十字架が当時の事件を物語っています。

Cordesは、カタリ派に差し向けられたアルビジョワ十字軍(13世紀)、イギリスとフランスの間で戦われた百年戦争(14〜15世紀)、宗教戦争(17世紀)など、数々の苦難を乗り越えて存続しますが、17世紀後半に完成したミディ運河によって貿易の要所としての役目を失い衰退を始めます。人口が減り、荒廃していたCordesですが、20世紀に入ると中世の面影をそのまま残した町並みが、にわかに芸術家たちの注目を集めるようになります。1940年代から芸術家たちがCordesの町に移住するようになったおかげで町は再び息を吹き返し、現在見られるような美しい町並みへと復活を遂げました。Cordesの町も、“フランスで最も美しい村”の一つとして認定されています。現在では約50人の芸術家や職人たちがこの町で暮らし、創作活動を続けているのだそうです。町の中では、お土産物屋さんに混じって、彼らのアトリエも見ることが出来ます。



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