聖オーガスティン修道院跡
St.Augustine's Abbey




イギリス南東部ケント州にあるカンタベリー大聖堂の近くに、もう一つの世界遺産、聖オーガスティン修道院跡があります。

現在ではケント州となっているイギリス南東部は、かつてはアングロ・サクソン七王国の一つ、ケント王国があったところです。この地方は、ドーバー海峡を挟んでヨーロッパ大陸と向かい合っているという場所柄、早くから大陸とイングランドをつなぐ窓口であり、大陸との交易によって豊かな地域でもありました。

ローマ人が5世紀末にイングランドから本国へと引き上げて行ったという話は、いくつかのローマ遺跡のページでお話しました。その後のイングランドは大陸からやってきたアングロ・サクソン人たちが各地に大小様々な国を建て、戦国時代のような混乱期に突入します。イングランドにやってきたアングロ・サクソン人たちは、当初はキリスト教徒ではなく独自の宗教を信奉する集団でした。そんな彼らをキリスト教に改宗するという使命を帯びてローマ教皇から派遣されて597年にイングランドに来たのが、聖オーガスティンでした。

聖オーガスティンはイングランドに到着後、ケント王国の国王エセルベートのキリスト教への改宗に成功します。ケント王家の保護のもと、聖オーガスティンはこの地に修道院を建て、布教活動を行っていったのでした。そのため、聖オーガスティン修道院跡はキリスト教国イングランドの発祥地として、イングランド史上重要な場所の一つとなっています。聖オーガスティン自身この地に眠っており、ケント王国の国王たちの墓所でもあったそうですよ。

1540年、聖オーガスティン修道院はヘンリー8世が行った修道院解散法によって破壊され、かつては栄華を誇った修道院も現在では廃墟と化してしまっています。いくらローマ・カトリックが嫌いだったからって、聖者や歴代の国王が眠っている修道院をぼろぼろに破壊するなんて、ヘンリー8世はひどい奴ですね〜。

聖オーガスティン修道院跡は、 現在ではイングリッシュ・ヘリテッジの管理にあります。




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