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グラ
731 2005.8.20
  戦時中、中国人やロシア人捕虜3000人あまりを人体実験に利用し、 細菌兵器を開発していた日本陸軍の非人道的部隊「731部隊」。
  731部隊の実像を告発した、森村誠一著「悪魔の餌食」シリーズを読んだ。 そしてこの夏、731部隊の研究施設のあった場所を実際に訪れてみた。
731   かつて満州国があった中国黒龍江省、 哈爾濱(ハルビン)市から南へバスで30分ほど行ったところに研究施設跡がある。 日本敗戦時に証拠隠滅のため、731部隊自身の手で施設の大半が壊されてしまったが、 本部棟などが残って当時の資料などが陳列されている。
  訪れた日は、快晴で気温30度以上の暑い日だった。 哈爾濱市の中心部から離れたところにあり、雑踏の煩さはなく、 夏の輝く太陽と郊外の長閑な落ち着きが、戦争当時とのコントラストで 現在の平和を強調していた。
  前もって読んだ「悪魔の餌食」はかなり衝撃的な内容だったので、 実際に敷地内に入ると感慨深かった。戦後60年経ったとはいえ、 当時の細菌が残っているんじゃないかと少々恐ろしくもあった。
  陳列された当時の資料を見終わり、外に出て、 捕虜たちが収容されていた建物跡に佇んで当時に想いを馳せていたら、 見知らぬ三人が私に近寄って話しかけてきた。 そのうちふたりは係員らしく同じ制服を着ていた。 残りのひとりは参観している客のようだ。 彼ら私に、普段は参観できない施設へ客を案内するのだがついでに来るか? とのことだった。迷わず着いて行った。
  係員に着いて、施設を象徴する巨大煙突や、地下室への入口、 凍傷実験が行われた建物、菌に感染させた虫類を飼育していた建物などなど、 今はただの廃墟でしかないが、当時の悲惨さをリアルに感じられた気がする。 ふたりの係員の解説も断片的に聞き取れたが、 日本軍の悪行を非難している内容があるかはわからない。 日本軍の悪行の跡を目の前にして3人の中国人と日本人の私ひとりが、 ここでこうして一緒にいるのは、なんか恐縮してしまった。
  悲惨さばかりを感じる訪問だったが、 この731部隊の多くの犠牲の上に築かれた細菌に関する医学的研究結果が、 その後、米軍などに利用されたにしろ、結果的に人類の将来のために おおきなプラスになっていれば、少しでも救われる気がする・・・。


白タク家族 2005.8.18
  中国の空港では毎度のことだが、タクシーの客引きが激しい。 その客引きについて行くとだいたい白タクであり、ぼったくられるのがオチである。 しかし今回は、ある意味では利用価値があったと言えるし、 ある意味ではびっくりする展開もあったが、結果的におもしろエピソードとなった。
  今回の旅行の目的地は中国黒龍江省の哈爾濱(ハルビン)。 哈爾濱へは東京からの直行便が無いため、私は遼寧省の瀋陽を経由するルートを選択した。 経由地の瀋陽の空港で、乗り継ぎ時間が4時間ほどあったので、 瀋陽市内で時間を潰すことにした。
  空港の到着ゲートを出ると、例によってタクシーの客引きが激しく寄って来る。 とりあえず彼らを振り切って、航空会社のカウンターでリコンファームを済ませた。 乗り継ぎまでの時間の余裕は4時間。空港界隈は特に何もないので、 ここから車で40分くらいかかる市内へ出なければ観光ができない。 市内と空港の往復には1時間20分みておかなければならない。 哈爾濱行きの便に乗り遅れないために、 実質観光できるのは2時間40分。あまり時間がない。 ピンポイントで市内のどこを観光するかを検討するために「地球の歩き方」を取り出して、 キョロキョロとベンチを探した。 そのキョロキョロ行為が、タクシーを探しているように見えたのか、 客引きがまた私に寄ってきた。その客引きはさっきも私に寄ってきた同じオジサンだった。 私はまた彼を無視して、ベンチを見つけ地図を見ながら観光地候補を探した。
  短時間で観光ができそうな、青年公園と瀋陽日本領事館に決めた。 瀋陽へは、ちょうど去年の夏も来たので、 そのときプライオリティが低くて行きそびれた所を選んだ。
  2箇所行くとなると充分な時間がとれるかちょっと心配だったが、 タクシーを拾いに空港出口へ向かった。 と、そのとき、またもさっきの客引きのオジサンと目が合ってしまった。 オジサンは手招きして誘い文句を言いながらぐんぐんこちらへ向かって来る。 そこで私は、中国語練習の良い機会だし、短時間で2箇所巡れるか心配だったので、 覚悟を決めて無視せずオジサンの誘いに応えて話をしてみた。
  こちらの時間的事情を伝えてから、地図を見せつつ行きたいところを挙げた。 程なくオジサンは合点した。 けっこうこちらの要求を聞いてくれそうだったし、 哈爾濱行きの便に間に合うようにちゃんと空港まで連れ戻ってくれると言うので、 ぼったくり覚悟でオジサンの車に乗ることにした。
  早速オジサンの車の停めてある駐車場へ向かうのかと思いきや、 オジサンは大声を出して、空港施設内のベンチに座っている誰かを呼んだ。 大声出して何なんだと私があっけにとられていると、 呼ばれた人が立ち上がってこちらへやって来た。 50歳くらいのおばさんと、25歳くらいのおねえさんである。 私は予想外の展開に私は警戒と戸惑いを隠せない。
 彼女たちは別の客で、乗り合い白タクってことなのか!?
 3人目の客である私をつれてくるまで大人しく待ってたってことなのか!?
 それとも彼女たちはオジサンの仲間で、 私をどこかのアジトへ連れてっ行って身ぐるみ剥ぐつもりなのか!?
  ヤバそうな展開だ・・・とテンパっている私をよそに、 オジサンと彼女たちは何気もなく平然とした表情で駐車している車へ向かって行った。 警戒のせいで足の運びが遅くなった私に気付いたオジサンは、 早く早くという感じで、私に対して笑顔で手招きをしている。 私は逃げ出そうか迷ったが、とりあえずオジサンに、彼女たちは誰なんだと尋ねてみた。 するとオジサンは、私の奥さんと娘だと答えた。 この問答を聞いていた彼女たちも、よろしく〜みたいな表情を私に向けてきた。
 あぁ、家族で市内へ帰るついでに客を乗せて金を取ろうってわけね! オジサンもセコイ商売してるね〜。
  私は家族と聞いてちょっと安心した(それでも警戒すべき展開だが・・・)。 乗りかかった船なので覚悟を決めた。
  そしてオジサンは、駐車してある1台の車を指した。 どうやらその車がオジサンの車らしい。 やはり普通の乗用車でメーターなどもなく、紛れもなく白タクである。 オジサンは運転席のドアの鍵を開け、そしてこんどは後部座席のドアを開けに来てくれた。
 ほぉ、白タクのくせにちゃんとお客様に対して、 ドアを開けるサービスはしてくれるのかぁ、
  と感心した直後、 オジサンは徐に自分が後部座席へ乗り込んだ。そして奥サンが運転席、娘サンが助手席へ。
 あれぇ〜、オジサンが運転するんじゃないの〜?
  先入観から、客引きを頑張ってたオジサンが運転するものだと思い込んでいたので、 ちょっと意外で笑ってしまった。私は後部座席のオジサンの隣へ乗り込んだ。
  そうして我々一行は、奥サンの運転で市内へと走り出した。 道中は雑談しながら平和に進んだ。 オジサンは腹をボリボリ掻きながらしゃべってるし、 娘サンは鼻歌を歌ってるし、奥サンは堅実なハンドル捌きで、 これといったハプニングは起きずに市内へ到着。
  車を降り、まずは青年公園を散歩。 オジサンたちは車で待っていてくれるのかと思いきや、 奥サンと娘サンは車に残ったものの、オジサンは当然のようについて来た。 あっちの景色がいいとか、あれはテレビ塔だとか、シャッター押してやろうかとか、 私がゆっくり散歩に集中できないほど、充分すぎるお節介をやいてくれた。 しかもオジサンは携帯電話を片手に、逐一私の行動を奥サンに報告していたようである。 比較的広い青年公園はいくつか出口があるのだが、 常に私が居る最寄の出口に車が先回りして来ているというサービスっぷりである。 私が飽きずに公園を散歩し続ければ、 また次の予想される出口へ車を回すよう指示を出しているようなのだ。 そんなことを傍目に見ながら、青年公園散歩は気も漫ろのまま切り上げることにした。
  車に乗り込み次に向かったのが日本領事館。 3年ほど前、脱北家族の駆け込みで有名になった領事館である。 ニュースで見たこのビーチパラソルが象徴的。 ちょっと駆け込んだらおもしろいかなぁと思ってみたがもちろんやる勇気は無い。
瀋陽   記念に写真を撮りたかったので、守衛の青年にオジサンが交渉しに行ってくれた。 しかし守衛はダメダメの一点張りで撮影の許可は下りない。 オジサンは私を指しながら、 この日本人が日本領事館で撮りたいと言ってるんだから撮らせてくれよ、 という感じで日本繋がりというカードを切り札に根気よく交渉を続けている。 しかしオジサンの努力も虚しく許可が下りそうもないので、 領事館の門から少し離れた所の、守衛の死角でパチリ!
  青年公園と日本領事館へ行った後、まだ時間が余っていたので、 テレビ塔の展望台へ登ることにした。 駐車場に車を停め、テレビ塔の入口へ行くと、 オジサンは展望台まで登るか否か躊躇していたが、 私が一緒に行きましょうと誘った。すると喜んでついてきた。
  展望台の高さは205m、景色はまぁまぁだったが、 工業発展もめざましい中国の都市部のせいか空気が黒ずんでいて爽やかな気分になれなかった・・・。
  一方、オジサンのはしゃぎっぷりはおもしろかった。 展望台によくあるコイン投入式の双眼鏡を覗きながら、 あれがどこどこだ、そしてあれがなになにで俺は行ったことあるぞ、 東京はあっちだな、などと自分が楽しみながら私に解説してくれる。 それから下を覗きこみ、下に駐車している車で待っている奥サンと娘サンに携帯電話をかけて 下から俺が見えるかーと言いながら手を振っている。 奥さんが車から降りてきて上を見上げたのが確認できたので、 私も思わず手を振ってしまった・・・。
  テレビ塔を降り、時も熟したので、空港へ帰ることになった。 オジサンは、哈爾濱からの帰りにまた瀋陽に寄るんだろ、また私に連絡くれよ、と言ってきたが、 残念ながら帰りは瀋陽ではなく大連経由で日本に帰るので、連絡先は聞かなかった。
  空港に着き、いよいよ支払いである。 正規のタクシーで空港と市内の往復なら相場は180元(JPN\2700)ぐらいである。 ぼったくり白タクの値段は果たして・・・
  奥サンが提示したのは400元!(JPN\6000)
 おぉ相場の倍で来たか!私もいろいろガイドしてもらって感謝しているので、 払ってもいいかと思ったが、交渉してねばって300元(JPN\4500)までプライスダウン! 市内でもあちこち乗り回したし、オジサンの観光ガイド付きと考えれば、 ぼったくられた感は全くなかった。 むしろまた機会があれば瀋陽を案内してもらいたいくらいだ。
  ところで、オジサンと奥サンで協力して白タク商売してるにしても、 娘サンはなんのために乗車してたのだろうか。 空港から市内へ帰るついでに乗ったわけでもなく、 結局私たちとずっと一緒に行動していた。ただ暇だったから乗っていたのだろうか。 ホステスの役割りなのだろうか。もしそうだとしても、 私とはひとことふたことしかしゃべってないし、ルックスは褒められたものじゃないし・・・。


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