ES細胞
「全能性」か「多能性」か、再生医療が私たちに問いかけるもの
東京大学教授・生命倫理調査専門委員 島薗 進
http://homepage2.nifty.com/embryo/shimazono.htm から引用
1. クローン羊の誕生
新しい技術が開発されると、それを追っ掛けて研究にしのぎが削られ、更にそれが経済的なものにと結びつくと、各政府も予算をつけ研究支援に乗り出してくる。研究成果にはそれぞれ利益を約束する特許が付いて、国家間の競争が激しくなる。そういうなかで、生命倫理委員会は、「今度はこれを決めてください」と言われて、一つ一つを既成事実化する。これは、非常に問題があると思います。
人間の歴史のなかでは、人類が経験したことがないような新しいことが次々と起こってきます。
とくに一九九六年にイギリスのロスリン研究所でクローン羊ドリーが誕生したことは、世界中に衝撃を与えました。両性の融合による受精というプロセスを経ないで、一頭の雌の羊と同じ遺伝子をもった羊が誕生したのです。これまで不可能と思われていた高等哺乳動物である羊で可能だったことは、人間のクローンも可能だと考えられる。事実、人間で実験を試みたという情報もあります。
世界各国で禁止の動きがありますが、人間のクローンをつくるということは、何か穏やかならぬことです。
日本も、「クローン技術による人個体の産生等に関する基本的考え方」(二〇〇〇年十一月成立)、「クローン法」(二〇〇一年六月成立)で禁止しています。