「ガキに差別と偏見を持たせたくない…」
「でも…」
「このキャンプには魔族のガキもいるんだぞ…」
ブレーダはレミナを睨んだ。
多少、脅しが入っている。
「大体、何であんな詐欺師を…」
「!コリーア様を馬鹿にしないで!!」
ブレーダは軽く愚痴ったつもりであった。
しかし、その発言はレミナを激昂させる事となった。
子供達は木陰から飛び出そうとする。
「来ないで!」
だが、レミナは子供達を制した。
「貴方に…コリーア様の何が分かるの!?」
ブレーダを強く睨み付けながら彼女は言った。
真剣な眼差しだ…ブレーダには到底、理解できない。
「何も分かりゃしない…」
ブレーダはそんな彼女を睨み返して言う。
「…分かりたくもない」
何か人生を悟りきっているような口調である。
積み重ねてきた年月が、レミナを威圧する。
レミナはそれでも気丈にブレーダを睨み続ける。
「…お前、子供は好きか?」
レミナから視線をそらし、ブレーダは木陰から様子を伺う子供達の方を見て言った。
「…好きです。さっきも言いましたよ…」
一瞬、レミナはとまどったが、息を整え、落ち着いて言った。
「じゃあ、魔族の子供は?」
「え…?」
ブレーダの問いに、レミナは言葉を詰まらせた。
内に秘めていた道徳という名の自信が揺らぐ。
「…どうなんだ?」
「それは…」
「…ハッキリしろ」
泣きそうなレミナをブレーダは容赦なく問い詰める。
「…コリーア様の教えでは…」
「お前個人の意見でだ」
ブレーダは更にレミナを追いつめた。
レミナは口は動かすものの、声が出ない。
深刻に悩んでいる。
「ガキにある区別はな…」
ブレーダはレミナの瞳を覗きながら言う。
「かわいいか…ムカツクかだけだ…」
それだけ言って、ブレーダはレミナに背を向け、町外れの方へ歩いていった。
その後で、子供達は一斉にレミナの所へ駆けつける。
「レミナ姉ちゃん、大丈夫?」
レミナを心配して声を掛けたのは、魔族の子供だった。
「大丈夫よ。心配しないで…」
レミナはそう言うと、その子に優しく微笑み掛けた。
それから、少しだけ泣いた。
 
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