ヨハネスブルグ・サミットへの提言

今年(2002年)8月26日から9月4日まで、南アフリカのヨハネスブルグにて国連が主催する「持続可能な開発に関する世界サミット」(ヨハネスブルグ・サミット)が開催されます。(詳細は http://eco.goo.ne.jp/wssd/index.html
1992年ブラジルのリオデジャネイロで開かれた地球サミットで、国際社会は、持続可能な開発を可能にするための地球規模の行動計画「アジェンダ21」を採択しました。ヨハネスブルグ・サミットはリオ・サミットからの10年をレビューし、アジェンダ21のより効果的な実施の為、具体的な計画、目標を定める会議となります。
「アジェンダ21」には、世界規模で深刻さを増すオブソレート農薬問題を解決するためのいくつかの条約・計画が盛り込まれていました。しかし、その後10年間、日本はこの動きに背を向けて食糧増産援助による農薬援助を継続してきました。今こそ、日本は抜本的な政策転換をすべきです。私たちは、ヨハネスブルグサミットに向け、次の提言をします。

国連「持続可能な開発に関する世界サミット」への提言

リオ・サミットから10年。果たされなかった約束。そして問題の深刻化。
今こそ、オブソレート農薬処理に責任を!

2002年5月12日 食糧増産援助を問うネットワーク

現在、所謂途上国において、オブソレート(未使用・使用期限切れ)農薬の問題が深刻化しています。先月末にアジスアベバで開催された国際会議(FAO、ASP、ECA共催)では、これらの農薬の適切な回収と処理の遅れが、土壌汚染のみならず、地下水や河川にも入り込み、食物連鎖にも影響を与え始め、人体にも多大な影響を与えている可能性が指摘されました。なかでもアフリカ諸国は、深刻な状況に直面しており、その状況は「時限爆弾」とさえ表現されています。〔IRIN2002年4月24日〕

FAOは、1994年よりアフリカにおけるオブソレート農薬一掃に取り組んでいますが、それでも全部処理するのに約2億ドルが必要で、70年はかかると見積もられています。オブソレート農薬の量が膨大なだけでなく、大半のアフリカ諸国で適切な処理を可能とする施設がないため、これらの農薬を欧州等に運び出さねばならないためです。適切な処理に手間取っている間に、確実に状況は悪化していきます。

この一因をもたらした農薬援助や輸出を行ってきた所謂先進諸国は、早急に問題を解決すべく抜本的な援助スキームの見直しと、処理にかかる費用に責任を持ち、より持続可能な開発が可能となるような農業支援を行うべきです。なかでも、日本の食糧増産援助は、様々な制度的欠陥(不十分な事前・事後の調査と技術協力などの欠如)によって、オブソレート農薬問題を招いてきました。

実は、リオ・サミットで採択された「環境分野における国際的取組の行動計画(アジェンダ21)」には、この問題を解決するため幾つかの条約と計画が盛り込まれていました。有害廃棄物や有害化学物質等に関する国際条約と、農薬使用の危険性に対する実践的な対処法としてのIPM(総合防除:収穫量を維持しながら費用を減らし、環境にも優しく、農業の持続性に貢献する手法)の重視です。(同アジェンダ、セクションI、14章)

日本は、「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」に1993年9月に署名しました。同条約の第10条では、「締約国は、廃棄物の処理を環境上健全な方法で行うため、主として開発途上国に対して、技術上その他の国際協力を行う」ことが定められています。また、日本政府が1999年に署名した「国際貿易における特定有害化学物質および駆除剤についての事前の情報に基づく同意手続に関するロッテルダム条約」は、「締約国間で有害な化学物質等に関する情報交換を促進すること等を規定しており、有害な化学物質の潜在的な害から人の健康及び環境を保護し、並びに当該化学物質等の環境上適正な使用に寄与する」ことが定められています。(外務省HP http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/

にもかかわらず、1992年以降も日本は食糧増産援助によって、大量の農薬等の危険物資を続け、各国でのオブソレート農薬の蓄積に荷担してきました。1990年代後半以降、オブソレート農薬問題が深刻化しているアフリカ諸国に、日本の食糧増産援助型の援助をしているドナー国はありません。以前に同様の援助をしオブソレート農薬発生に寄与してきたドナー諸国は、これらの処理に巨額の資金及び技術援助を実施しています。しかし、日本政府は、オブソレート農薬発生を招いてきた援助スキームを抜本的に変更させることなく継続させる一方、国際的な条約でも定められている義務を果たしていないのです。

ヨハネスブルグ・サミットは、アジェンダ21の実行状況のレビューや、新たな世界的行動を促すための会議です。同サミットにあわせて、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」の批准が世界中で呼びかけられており、日本でも国会で審議されています。同条約には、「途上国に対する技術・資金援助の実施」が入っております。

日本政府には、ヨハネスブルグ・サミットを機会に、真に「持続的開発」に貢献するための援助を模索し、思いきった政策転換をし、日に日に深刻化するオブソレート農薬の処理に責任を持つことを望みたいと思います。「国際社会」への「側面支援」ではなく、この問題の解決にイニシアティブを取り、重債務や貧困に喘ぐ国々の環境改善と農業発展に積極的にコミットする道を取ることを求めたいと考えます。

以上


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