Little AngelPretty devil 〜ルイヒル年の差パラレル

    “アルティメッド・バトル in 運動会”B
 



          




 さてさて。小学校の校庭は、生徒会の子供たちが頑張ってティッシュでこさえたお花をたんと、その縁取りにと飾った入場門と退場門が立てられたグラウンドが、いかにもの活気に満ちてる賑やかさ。業務連絡…もとえ、先生方や児童たちへの様々な連絡を告げる校内放送がおおらかなテンポで、されど引っ切りなしに流れているので、慌ただしいんだか穏やかなんだかな朝ぼらけの中。児童たちの着席する応援席を、低学年席と高学年席とに分けて左右に従えるように割り振ったその中央には、先生方が詰めていて放送ブースもある本部テント。それから、PTAなど来賓の方々のための特別席のテントが据えられており。そういった学校サイドの座席が途切れたところ、丁度2つの大門から向こう側のスペースは、父兄の方々に解放しての観客席がぐるりとトラックを縁取っているのだが、
「おお、今年もまた“満員御礼”みたいだな。」
「まんいんのオレ?」
 どこのサンバですか、そりゃ。そう思ったらしきセナくんの言いようへ、こちらさんは思わずのこと“クスス…”と可笑しそうに笑い、
「満員御礼。ぎっしりと満員になるほど、お客さんが詰め掛けてるって意味だ。」
 そんなことも知らんとは、やっぱりセナはガキだよなぁと。人差し指にてついついと、真ん丸なおでこをつついてやるヒル魔くんで、
「う〜〜〜〜。///////
 やんやん・やーのと、からかわれたことへ ぷく〜っと膨れて見せたセナくんだったが、

  「………すげぇよな、セナってば。」
  「うん。ヒル魔にあんなタメグチ利けるヤツって、上級生にもいないのに。」

 知ってっか? セナを苛めようとしたらヒル魔が出て来るんだと。そんなもん、とっくに皆が知ってるサ、センセーたちだって知ってるぞと。それだとそれで別な問題ではなかろうかというような風説までもが実
まことしやかに流れているせいで。今では小さなセナくんまでも、上級生からこっそりと、一目置かれているとかいないとか。まま、今回はそれもさておいて。
「…あ。あれって、あごんさんのじどーしゃじゃないの?」
 もう少ししたら開会式と全校生徒による一斉ラジオ体操が始まろうかという時間帯。一応の汚れ防止にとビニールシートを敷いた上へ、低学年生は先生が並べたパイプ椅子にと着席していたものが、背が小さくて一番前にいたセナくん、すぐお隣りのヒル魔くんへとお声を掛ける。まだそんな、誰が観に来ているやらというところまでは気持ちが移ってはいなかった小悪魔くん。セナくんの小さなお手々が指す方へと視線を向ければ、

  「…また絶妙なトコに停めてやがんのな。」

 校舎側に本部テントがあって、そっちが会場正面、野球で言うところのバックネット側に当たるとすれば、丁度それへと向かい合う格好のセンターゾーン。一応は本部席の側を“正面”と見立てて競技は行われ、それが徒競走であるのなら、トラックの手前にスタートやゴールは設けられるし、お遊戯も組体操も、基本体勢では校舎側へと顔を向けて並んで始めるのだけれど。ロングビューにて競技を観戦しようというのなら、ここもまた絶好の位置であり。だからこそ…建前は“移動がしやすいように”と観客席を幾つかに区切った裂け目の内の、誰にも不公平がないようにと敢えて真ん中を空けておいたその空隙なのに。その絶好のビューポイントの、少し後ろ、心持ち後ろ。やや控えめに下がっているフェンス寄りという位置に、いつぞやに賊徒学園のグラウンドにて見た覚えがある、小型バス風の移動診察車らしき白っぽい車輛が、で〜んとさりげなく停められている。父兄のみならず、来賓も教師陣でも。今日に限らずのこととして、校庭内への車の乗り入れはご法度な筈なのだが、フロントガラスの内側に『許可をいただいた医療用特別車です』と書かれたボードを出しているらしく。しかもガララ…ッと開いた、昇降口のスライドドアからは、白衣を羽織った女性が出て来た。日頃はちょいとクールで凛とした印象の、きりりとしたお顔のセンセイだのに、今はほんのりと頬を染めていて、何だか妙に女っぽくも艶やかなムードをまとっておいでのような気が。
「あれは保健医の伯井センセーだな。」
 一体どういう特別仕様のそれなのだか。携帯電話を写真撮影モードにしたそのまま、何かしら操作をした坊やの手元の液晶画面には、かなり離れている筈の大向こうが、まさに手に取るような大きさと鮮明さとで拡大されて映し出されており。愛想よくも会釈しつつ、こちら側へと戻って来る校医さんを、やっぱり愛想のいい笑顔で送り出した、上背のある男性が、その画面の中、これまたよくぞ気が付きましたという感じでこっちに向けて大きく手を振って見せたもんだから。
「凄い〜〜〜vv あんな遠いのに、あごんさんのお顔、こんな大っきく映ってるの?」
 セナくんは素直に喜んでいるものの、
“あの野郎めが…。”
 そかそか、そういう段取りかいと、金髪の小悪魔坊やにはもっと奥まった手筈までもが飲み込めたらしい様子です。すかさず…実はもう1個あるんですよの、別なケータイを取り出して、素早く短縮ボタンを操作すると、
【 ヨウちゃんでしょ? 約束通り来たからね〜〜〜vv
 画面の中ではそちらも携帯電話を頬に当て、ますますぶんぶんと大きく手を振ってる歯医者さんであり、やっぱりこっちからの目線には気が付いておられた模様。凄い凄いと喜んでいるセナはともかくも、
「お前、さては伯井センセに何か持ちかけたな?」
 何処まで手広い色事師なんだと、相変わらずの子供らしからぬお言いようをしたところが、
【 やだなぁ、人聞きの悪い。伯井さんとは前からの顔なじみなの。】
 彼女とは出身の医科大が同じだったしと続けて、
【 大丈夫だとは思うけど、万が一にも熱中症とかで倒れる子やお年寄りがたくさん出たらば、彼女一人じゃ対応が大変でしょうが。それで“お手伝いにウチの診療車出しましょうか?”って申し入れてただけだよん♪】
 歯医者のクセにかよ? あ、馬鹿にしないでよね、一応は基本の知識や実習やら、全部の部門のをこなした身でないと国家資格や免許は取れないんだぞ? それに俺ってば勉強家だからサ、他の診療科の最新の治療技術とか学説とかも、研修に出てまできちんきちんと会得してるし〜〜、と。何処まで信用していいのやらな言いようがしゃあしゃあと帰って来たところへ、
「あ。きゃい〜〜〜vv
 すぐ傍らから、セナくんが愛らしくも黄色い歓声を上げて見せ。どしたどしたと彼に渡した方の携帯を覗けば、そこに映っていたのは、
「進と、さくらば…?」
 診療車の窓からお顔だけ出した、これまた顔見知りの青年二人。後半は小声で呟いた妖一くんへ、
【 見えた見えた? 今日の特別アシスタントさんたちだよ?】
 そうか、一緒に来たのか、あんたら。
“なんてまた、むさ苦しい医療班だ、そりゃ。”
 何しろ、顔を揃えた どの御仁も…上背はあるわ、手は大きいわ、肩幅がっつりのスポーツマン体型だわ、ですものね。医者がムサいばっかなドレッドのお兄さんだったなら、せめて助手にはキュートな白衣の天使だろうがと、坊やは普通に辟易しているが、絶妙な位置に駐車している不審な診療車が…その割に人だかりを集めていないのは、

  「奥さん奥さん、あの診療車vv
  「見ました? 凄いイケメンが乗ってるのvv
  「ええもうvv 今日だけ特別手配されたセンセイなんですってね。」
  「助手の男の子たちも、何だか可愛くてvv」(…そっか年下だもんな。)
  「うふふふふvv とんだ目福ですわよねぇvv

 ………そうか。今日びの奥様方は“韓流ブーム”の余波から、若い子にキャッキャ言うのにも抵抗が薄いんだな。それでも一応のたしなみからか、それとも人目がありすぎてか、遠巻きどまりになってるらしく。妙な方向へ“成程な〜”と感心していれば、
【 ヨウちゃんもセナくんも、そっちの応援席が窮屈だったら、こっち来て寛ぐといいからね〜〜〜?】
 こらこら、あんたは一応は“お医者様”として来ているんだろうに。そんな風にお子様をわざわざサボタージュへと誘
いざなってどうするよと。間近にいた桜庭がこっそり苦笑をし、進の方は方で…何かしら言うか言うまいか、でもこんな人であっても一応は目上の人だしなと、彼には珍しくも逡巡してしまったそのタイミングへ、

  「何をまた、悪さをわざわざ唆
そそのかしてるんだ、この不良歯医者。」

 予想外な方向からのお声が掛かったから、臨時医療スタッフの皆様が えっとそちらを見やってみれば。
「あ、葉柱くん♪」
「…♪を付けんのは辞めろ。」
 そこまで“仲良し♪”な間柄になった覚えはないとでも言いたいのか、桜庭からの呼びかけに一応のクギを刺した、今日も一応はといつもの白い長ランを着た、賊学カメレオンズの総長さんが、やっとの登場でございまして。…ゼファーは校舎裏の駐車場に停めて来たらしいです。来て早々に一端の箴言を掛けた彼へと、

  「他の人から言われるならともかくも、
   ケッコ 授業とかサボってるんだろう人からは言われたくないやねぇ。」

 一応は医師としての清潔な格好のつもりか、彼の普段着には珍しい、淡い水色のワイシャツを腕まくりし、ボトムの方もごくごくありきたりなストレートパンツといういで立ちなれど。髪の方はいつものドレッドをうなじ近くで束ねただけという扱いだし、シャツにしたって胸元のボタンを3つもはだけているのは外し過ぎ。陽に灼けた赤銅色の肌が男の色香を匂わせて、チラリングしていて何とも嬋っぽかったりし。態度に至っては…片側の肩だけをぐいと引き上げ、大きな両手をズボンのポッケに突っ込んだままという、見るからに不遜で挑発的な姿勢。そんな阿含さんに対するは、

  「それは自分の責任範囲でやってることだ。あんたから指導されるこっちゃねぇ。」

 こちらも思い切りの不遜な姿勢。直立してはいるけれど、片側の脚にだけ重心を掛けての、肩をいからせた…やはりいかにもな挑発態勢であり。いで立ちの方は先程もご紹介致しました、腰の辺りに壁を這うよなトカゲのシルエットが刺繍された、脛までありそな丈の長い白い詰襟制服に、今日はシックな黒地に赤のインナーを着ていて。この模様は確かえっと…、
“花札の十一月の一枚じゃなかったかな?”
 そうそう黒地を背景に赤い柱みたいのが立ってるアレ。………アレ?
「自分の責任範囲でって、つまりは“追試上等っ”てことなんでしょ? 威張れたことじゃないじゃない。」
「どっちにしたって、そうと持って行くのは詭弁であって、そもそもの物の順番が違うんじゃねぇのか? まだ小さい子供へいい大人が悪事奨励してどうすんだって話の筈だろうがよ。」
 おお、葉柱くんたら結構 道理
スジの通ったことを言うもんだ。桜庭さんが感心し、進さんも少しは意外だったのか、さっきまでの戸惑いを引っ込めて二人のやり取りを見守っている。そんなやり取りにまたまた割って入ったお声があったりし、

  「いい加減にしな、二人とも。」

 おやおやおや。背丈の高いお兄さんたちの只中に、いつの間にやら割り込んで来ていたのは、
「進さん、おはようございますvv
「ああ。おはよう。」
 まずはと大好きな進さんへいい子のご挨拶をしたセナくんを引き連れた、
「ヨウちゃんたら、わざわざ来てくれたの?」
 さっそくのお運びだねぇ歓迎するよんと、阿含さんが喜んで見せ、一方の総長さんが苦々しげなお顔になりかけたところの…本日は恐らく一日中、この二人からの引っ張りだこ状態となるのだろう金髪の麗しき美少年、カッコ 但し中身は途轍もない辛口小悪魔vv カッコ閉じる。
(笑) 妖一坊やご本人がわざわざと駆けつけた模様であり、
「…ったくよ。こんなところでガンのつけ合いするなんて、大人げないったらねぇだろがよ。」
 これが俺の身内だなんて、いくら俺自身がぴしっとしてたって意味ねぇんだもんな、恥ずかしいってもんじゃんかと。
「う…。」
「それは、まあ…。」
 どちらもが一応は、場数も踏んでりゃ場慣れしてもいる筈の恐持て二人を、まずはと…それはあっさりと押し黙らせちゃった手際の素晴らしいこと。二人ともが自分を大切に想ってるらしいことをちゃんと把握していての、これ以上はなかろう的確な運びであり、
「顔を合わせたんなら丁度いいから、ルイもここで観戦してな。」
「何でまたこんな奴と…。」
 不平丸出しのお声と、長い指にて、歯医者さんを指さした総長さんへ、
「こっちだって…。」
 歯医者さんの側でも何やら言い掛かってたみたいだが。やっぱり有無をも言わせずに、
「ばらばらに離れてられっと、俺がいちいち面倒なんだよ。」
 あっちばかりに愛想を振ったとか、こっちにも目線くれないと不公平だとか。後になって文句言われてもナンだしよ。
「だから、一つところに固まってろ。いいな?」
 これが聞けないなら、俺、このまま運動会自体をボイコットしちまうからな。事態の根幹を見失わず、きっちりと英断しちゃえるところもおサスガであり。これにはさしものお二人も、

  「…はい。」×2

 渋々ながら、従わざるを得なかった模様でございます。
(苦笑) のっけからこの騒ぎですものね。果てさて、一体どんな運動会が展開されるのでしょうかねぇ。








            ◇



 阿含さんと総長さんと。坊やからの厳命には一応従い、同じ場所からの観戦&応援と相成って。片やが最新鋭のハイビジョンDVDで開会式への入場風景を撮影すれば、片やは大声での声援…はさすがにまだラジオ体操の段階では恥ずかしいらしかったが、こっちへと坊やからの視線が来るたびに、懸命の凝視や手振りを送るのを絶やさずにいて。
「最初から飛ばすねぇ、二人とも。」
 今回は微妙に“蚊帳の外”というか、傍観者でいられる桜庭が苦笑することしきり。とはいえ、当の本人は特に嫌がってる風でもなく、
「凄いもんだね。ヨウちゃんたら列の中からこっちへ手ぇ振って返すほど余裕だもん。」
 最初の種目の徒競走。一年生から始まって、すぐにも二年生の出番となるからと、一緒に入場して、今はまだ、本部前にて整列中なんだけれども。こうなると葉柱のお兄さんの方も、自慢の長い腕、大きく振り回しての応援を始めて。それがまた、目立つこと目立つこと。競技が始まってしまえば、父兄の皆様も妙な医療スタッフになんぞ構っていられず…の筈が、結構こちらを見物して面白がってる人も多く。僕でもこれはちょっと、応援されてる側としても恥ずかしいところだろになと、桜庭さんは呆れていたものの、
【 でも。セナもあんな風にして応援してほしいですぅ。】
 こちらさんは、こっそりと…携帯でのお喋り中の小さなセナくんと進さんで。もうすぐスタートだからドキドキするのと、ギリギリまで進さんのお声が聞きたいですと掛けて来たセナくんであり、
【 あのね? ぢつはセナも駆けっこだけは、今年は自信あるですvv
 ヒユ魔くんとそれから、体育教室に通ってる陸くんとにコツを教わって、お昼休みに一杯一杯特訓したから。だからね、よ〜く見てて下さいネ?と。何とも健気な言いようをするセナくんだったものだから、
「……………。」
「あ? ああ、はいはい。判ってますってvv
 さすがは長年の付き合いで、じっと見つめられればそれが何を言いたい凝視なのか、進さんからの無言のアイコンタクトが結構通じる桜庭さん。先進の小型AV機器とはどうあっても相性が悪いらしい進さんに代わり、桜庭さんがやっぱりハンディカムを構えてあげて、

  《 位置について。…よーい・・・・ドンっ!》

 低学年は50mの直線走。次々に飛び出してくお子たちの、ちまちま・とたとた、寸の足りない腕や脚を懸命に振り回しての駆けっこの、何とも微笑ましいことか。あまりに遠いのへと業を煮やした誰かさんが、トラックへ飛び出して行ってもなんだと思ったか、
「おい、進。」
 声を掛けた阿含さんが、こんこんと少しほど曲げた人差し指にて診療車のスライドドアをこづいて見せたら…あら不思議。普通に白い塗装を施されたボディーだった筈が、どういう仕掛けかサッと濃灰色の大きめな四角が表面へと現れ、そこが次には…大きめサイズのモニター画面へ変貌したから、
「どういう仕組みなんですか、それ。」
「高見んトコの研究所が開発中の、特殊な透明樹脂が張ってあんの。」
 一見透明だけど、極細レベルの配線が印刷されてあって、電気を通すと液晶画面と同じように画像を映し出せてね。動画もこの通り。これは携帯からPCを経由させたもんだけど、結構クリアに映し出せるんだよね。
「バスの側面に動画の広告とかが映し出せたらSF映画みたいだよなって、ヨウちゃんが言ってたのを、何とか形にしたんだってサ?」
 おやおや、まだまだ“妖一くんフリーク”には事欠かないみたいで。そうこうする内にも、一年生の部は終わったらしく、二年生たちがスタート地点へ並び始める。あまりにタイム差が出ても不公平だからか、体格が同じくらいの子供たちを配した組み合わせとなるらしく。まずはセナくんが3番目の組でスタートし、練習の甲斐あって6人中の二等賞をゲットvv そして、次の組ではいよいよの、金髪頭に赤い帽子を乗っけた小悪魔くんの登場で。
「わぁ〜、何なに、あの子。」
「モデルさんかそれとも子役かしら。」
 観客席がさわさわとどよめいたのも無理はなく。何しろ、プロポーションからして群を抜いている。身長 120センチとはいえど、小さいくせしてバランスが絶妙な頭身なのに加えて。少し大きめの体操服の、袖や裾から伸びている、腕も脚もすんなりと、撓
しなやかにして伸びやかで。それにそれに、素のお顔でいる分には、何とも玲瓏可憐な愛らしさ。少しほど目尻が吊り上がった大きな金茶の眸の力みも、今はまだそんなに鋭さを強調してはおらず。柔らかそうな小鼻や頬。バラか何かの蕾のように、品のいい形の立った口許が、ちょっとは緊張してのことか、何度も噛みしめられてる様子もまた。稚いとけない中に健気さが滲んで…そのくせ、妙に蠱惑的なもんだから。人々の視線を、もはや独り占めにしている末恐ろしさ。

  「…危っぶねぇ奴だな、まったくよ。」
  「それに関しちゃ同感だな。」
  「大体、あの大きめの体操服がいけない。」
  「そうなんだよな。」
  「何でもお母さんが、もしかしたら痛む前に大きくなるかもって思って
   それで大きめのを買ったらしいんだが。」
  「う〜ん。過ぎるほどには大きくない、微妙なバランスなのが困りもんだよな。」
  「そうそう。」
  「いっそ笑えるほどデカきゃあ、可愛いってところは誤魔化せるもんを。」
  「お母さんはヨウちゃんが罪なほど可愛いってことに、
   あんまり自覚がないらしいからなぁ。」
  「あんたは付き合い長いんだし、一度ちゃんと言っといた方が良いんじゃないか?」
  「う〜ん。でもなあ、ヨウちゃんのお母さんて、妙なところで天然だからなぁ。」

 そゆ人って実はちょっと苦手でと、ドレッド頭の歯医者さんが苦笑をすれば。俺もあの人だけはなぁと、恐持ての総長さんもまた困ったもんだと苦笑して見せ、

  「…仲良いじゃん、あの二人。」
  「感情の方向が同じな対象への見解だからだろう。」
  「そ、そうなの?」

 セナくんの走りは終わったのでと、ひとまずは傍観者の仲間入りをした進の、案外と的を射た言いようへも、桜庭さんが少々たじろいだところで。ようやくお待ち兼ねの妖一くんが出走の模様です。


  《 位置について。…よーい・・・・ドンっ!》












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  *早速一悶着の応援団席でございます。(笑)
   この先も、果たして無事に進行するのでしょうか。