Little AngelPretty devil 〜ルイヒル年の差パラレル

    “アルティメッド・バトル in 運動会”D
 



          





 昼食後は、腹ごなしにというフォークダンスや、上級生リーダーたちによる、学ラン姿やチアガールもどきの仮装も可愛らしい、紅白それそれの応援合戦が挟まってから。今度は主に上級生たちの駆けっこが競技種目を埋める、午後の部が始まって。下級生たちはほぼ出番がなくなったとはいえ、その間もホントならクラスごとに指定されてる所定の“応援席”に居なけりゃいけないところだが、広々ゆったりの“特別観覧席”は思いの外に居心地がいいもんだから。まだ何とか緑を保ってる桜の梢が風に揺れてる、そんな涼やかな木陰に敷かれた、クッションのいいマットへと直に座った進さんのお膝の上。出番も済んで、美味しいご飯もいっぱい食べて。それですっかりと気が緩んだか、大きな瞳をゆるゆる潤ませ、大好きなお兄さんへ“はにゃ〜ん”とくっついて懐いていたのもほんの一時のこと。すぐにも うとうとと転寝し出したセナであり、そんな彼を起こしちゃ可哀想だ…なんて言いつつ、そのままちゃっかりと自分まで居着いてる妖一坊やだったりし。
「低学年はもう終わりなの?」
 のんびりするのは構わないが、他の子と一緒に出る競技がまだあるのなら、連絡係の先生が困りゃしないかと思ったらしい桜庭が訊けば、
「んと、後は父兄参加の競技の“お着替えレース”があるだけだ。」
 児童と一緒に参加する、所謂“ご観覧の皆様もご参加くださいませ”というアレで、
「えっと。お子様と手をつないでコースの半ばまで駆けてゆき、台上に散りまかされた衣装の中から指定の職業のお仕着せやユニフォームを子供に着せてゴールへ向かう、紅白対抗のレースです。」
 パンフレットにはそんな説明書きがあり、
「いやに突飛なアトラクションゲームだな。」
 芸能人がバラエティ番組でやりそうな、いかにも“色物”っぽい競技だったから、こんなごくごく普通の小学校でやるなんてちょっと意外だなと総長さんが応じれば、そのお膝へ“よいしょ”とよじ登りつつ、
「フツーの二人三脚もあるにはあるんだけども、それだと低学年にはキツいんで、今年からはこっちだけに変更になったんだって。」
 そっちもそっちでこのガッコじゃあ伝統の目玉競技らしいぜ…と、まだ二年生の小さな坊やが言う言う。
(苦笑) 何でも、結構有名な児童劇団がご近所にあるんだそうで、そこで使ってた衣装のお古を譲っていただき、学芸会なぞで使わせてもらっているのだが。所詮は学芸会の劇だけに、どうしても使う衣装に偏りが出る。御伽話にはまず出て来ないような職業の衣装は全く着ないままになってしまうのが何となく勿体ない。そこでと“こんな競技はどうでしょうか”なんて思いついた先生がいたらしく、
「去年はセナが昔の大工さんっていうカードを引いて、ハッピと腹巻きにニッカポッカーのズボンはかされて、そんでも一等賞を取ってサ。」
 自分の名前が出たからか、はにゃ?とうっすら目を覚ました小さなセナくん。傍らから桜庭さんに、
「去年は一等賞だったんだって? 凄いね〜vv
 思わぬことで褒められて、ちょっぴり含羞みが出てか、大きな進さんの懐ろにふかふかの頬を擦りつけながら“うにゃ〜いvv”と笑顔を見せるところがまた可愛い。で、
「お前は?」
 自分たちにはそれが定番のポジション…といいますか。葉柱のお兄さんが腰掛けてると、そのお膝へ跨がるのがいつものことだから。そんなに意識もしないままのお膝抱っこ態勢、随分と間近に向かい合ってた金髪の坊やへと総長さんが訊けば、
「俺は二人三脚の方に出たんだ。」
 あん時はムサシと組んだから、まあ速かったのなんのって。隣りのコースの親父が足も括らないまんまで、子供を小脇に抱えてのダッシュなんて反則やらかしやがったんで、こっちは俺がムサシにしがみついての走りで対抗してよ、見た目はこっちの方が正当だったし、ゴール自体も勝ってたしな。うんうん、凄かったよねぇ〜と、昨年の奮戦を語るお子様たちの頭上にては、

  「で、今年は誰が組むのかな?」

 本部の傍らにはそれを使うのだろう、問題の“お着替えレース”用の準備が引っ張り出されているのが此処からも見えて。バーゲン会場なんかでお目見えする、乗せたものが落ちにくいよう、四方に浅い縁取り板が打ち付けられてある広々とした台が、先生方数人がかりにて引き出されており。その上には、一応は子供の着るものというサイズらしき衣装があれやこれやと盛ってある。今のところは整然と、それこそ洋品店の売り場よろしく、一式ずつ畳んで重ねてあるものの、競技が進めばごちゃりと掻き回されての混沌を見せようから。順位が伯仲してくる後半にそんなややこしいところから衣装を探さにゃならなくなって、そのもたつきがまた観客には大受けという、結構人気の競技でもあるのだが、
「それって、進よりボクが出た方が有利じゃない?」
「む…。」
 小さなセナくんへのお着替え競争。機転とか器用さも必要な競技らしいよと桜庭さんが声を掛けたが、
「ダイジョブですよぉvv
 セナくん、けろんと笑って見せる。
「セナ、ボタンもチャックも、お靴の紐も、自分で留めれるようになりましたものvv
 だってもうお兄ちゃんですしと、ヒマワリのような笑顔で自信のほどを口にする彼ではあったが。そしてそして、
「〜〜〜。」
 敢えて心の声を代弁するなら“何ていい子なんだっ”と言いたげに、自分の懐ろで屈託なく笑ってる小さな天使をぎゅううっと抱き締めちゃった仁王様でもあって。きゃ〜〜〜いVv 擽ったいですようvvとはしゃぎつつ、自分の方からも むぎゅ〜〜っvvと進さんの硬いお胸へ抱きつき返しているおおらかさ。
「………ホンットに大丈夫なのかな?」
 大きく不安になったアイドルさんへ、
「任せろ。俺が奴らの出走順をせめて早い目になるようにって、直前にちょちょいと細工して来てやっから。」
 小悪魔坊やが“やれやれ”という表情のままに、そんなことをば言ってのけ。
「………ふ〜ん。」
 どうやってそんなこと出来るのかしらと思いつつ、でも、何か、細かいトコまで聞いちゃいけないような気がした桜庭さんだったりしたそうです。それがこの、とんでもない坊やとお気楽なままに長く付き合うための、一番の秘訣なのかも知れないですね。
(苦笑)





 やがて、白熱の高学年によるクラス対抗リレーが始まる前の熱冷ましを兼ねてでもいるのか、いよいよのアトラクション競技が始まるらしく、
【父兄参加競技へ出場される父兄の方々は、入場門前のテントまで届け出て下さい】
 そんなアナウンスが流れて来たので。すっかりと眠気も覚めたセナくんは、大好きな進さんとお手々をつないでお先に出発。そして………こちらはこちらで、
「当然、ヨウちゃんは俺と出るんだよね?」
「え〜〜〜、どうしよっかなぁ。」
 競技が競技なだけに、こちらさんも器用で手際も善さそうな阿含さんの方が有利かも…と、居残ってた桜庭さんのみならず蛭魔くんご本人も思わないでもなかったが、

  「〜〜〜〜〜。/////////

 駄々っ子みたいだし、何より…どこか求愛とか告白にも近い言いようみたいだとでも思ったか。あからさまに“自分と一緒に”とまでは言い出せない、妙なところでシャイな総長さんの…含みの重々ありそうな黙んまりにも気がついており。
“ガキを相手にそうまで照れてどうするよ。////////
 ただのガキ相手なら照れないよなと、そうと思えばこその“ち・しょうがねぇなぁ”という苦笑をその小さなお胸の裡に噛み締めながら。
「阿含が競技に出てどうすんだよ。」
「…はい?」
 ここは自分が仕切るかと、そんな風に言い出して。何でだようと、こちらさんは堂々の あからさまに不本意そうなお顔になった、精悍で洒落者の歯医者さんへ、
「だから。阿含は“助っ人医療スタッフ”ってことで来てんだろ? 父兄参加競技なんて、怪我したり捻挫したり不整脈が出たりって、一番具合が悪くなる人が出やすい駆けっこじゃんか。」
 だってのに、肝心な医者がトラックに出ててどうすんだと、理路整然、きっちりした道理を並べての説得…のようにも見えはしたけれど、

  “…見え見えですよね。”
  “まあな。”

 桜庭くんが苦笑をし、それを見やった阿含さんもまた、唇の端っこでの苦笑返し。いかにも子供っぽい、感情優先の我儘は持ち出さず、あくまでも冷静にと一丁前に振る舞って見せていても。そんな坊やに慣れている二人には、奥の本心までもがあっさりお見通しというところか。そして、

  “ま、ヨウイチが主役の運動会だしね。”

 どうでも良いだなんて言ってたのへ、子供がそんなことを言い出すもんじゃありませんと諭した張本人としては、ここで強情を張ってもなという理解もすぐさま追い着いて、
「判りました。」
 引き際もきれいにとあっさり引いたまでは良かったものの、
「せいぜい頑張って、あ、でも、ヨウちゃんや総長さんが担ぎ込まれて来ないようにね?」
「………余計なお世話だ。」
 まったくだ。
(苦笑)





            ◇



 強情を張ることでヨウイチ坊やに嫌われたくはなかったからか、それともここは大人として一歩引いて下さった彼なのか。

  「前者に500円。」
  「俺は1000円賭けても良いぞ。」

 こらこら、あんたたち。
(笑) その金髪の小悪魔坊やが何らかの小細工をしたお陰様で…大方、出場者へと配られる出走順の色分けリボンを素早い手際にて勝手にくすね、後から来たにもかかわらず早いめの組でスタート出来るようにとつけさせたのだろうけど。一番最初の組にて無難にスタートした進さんとセナ坊やは、お祭りというお題に合わせて、祭りハッピにねじり鉢巻きとウチワ。体操服の上へ素早く重ね着して、お見事な一等賞でのゴールインを決めている。そのまま、出場者が多いということで いち早く戻って来ていた余裕から、言いたい放題状態になっていた桜庭くんや進さんの大胆な発言へ、

  「ヒユ魔くん、何にお着替えするのかなぁ?」
  「そうだね。判りやすいお洋服だったら良いのにねぇ。」

 ちゃんと聞こえてんだよ、こらと。そういう意思表示も含んでのことか。こちらさんは真剣に集中して観ている小さなセナくんを、ちゃっかりとお膝に抱っこしての観戦態勢になっていた阿含さんであり。
「〜〜〜〜〜。」
「………し〜ん、穏便にね? 穏便に。」
 ややこしい揉め方
(?)になりつつある応援席の方を覗くのはそのくらいにして。(あはは) 結構 参加者が多かったのと、進さんたちへの小細工にと暗躍(?)していたがため、列からちょっぴり離れていたせいもあって、終盤の方の組になってしまった葉柱のお兄さんと妖一坊や。
「さっきチラッて覗いて来たけど、制服とか小道具とか判りやすい組み合わせになってるし、カードにも どれとどれって書いてあるみたいだからサ。」
 台の上で小道具探すのが大変なだけだ、走り出しゃあ俺もルイも速いからぶっちぎりだぜと、余裕のお言葉で説明してくれた坊やであり。成程ねぇと話を聞きつつ、坊やの顔ばっか見ている総長さんにはさして感じるものもないらしかったが。そんな二人を取り巻く周囲では、上級生のお父様やらまだまだ若いぞと孫と走りに出て来たお爺様やらといったご年配組も、はたまた、妖一坊ややセナくんのお友達のご父兄らしき、ずんと若々しいお父さんたちまでも。妙に貫禄のある、しかもいかにもな特攻服もどきの白い長ラン姿の若いお兄さんが同座しているという違和感満載の現状へ、
“な、なんでこんな人が混ざっているんだろう。”
“絡まれたらどうしようか。”
“ヨシキ、眸を合わせてはダメだぞ。ダメったらダメ。”
 ややもすると戦々兢々。待ってる間はどの人も、競技への集中どころじゃなかったようでございまして。
(苦笑) 後になってから、あれは二年の蛭魔くんていう男子のお兄さんみたいな人で、子供好きで(え?)そんな怖くはないんだよと自分チの子に説明されるまで、びくびくと怯えてらした方が過半数だったそうですが。………お騒がせなのは小さな坊やたちだけじゃあないみたいです、この集まりは。(まったくもうvv

  「次の五組、コースの列について下さい。」

 この競走の進行を任されていたのは、妖一くんたちの担任の姉崎先生で。彼女はさすがに、葉柱のお兄さんの素性もよくよく知っているので、当然のことながら、怖いなんて身構える筈もなく。あらと気づいたそのまま小さく会釈をしたくらいなのへ、周囲が“???”とますます混乱していたけれど。
“…♪”
 そんな空気を醸してる原因に、素知らぬお顔のその裏で実はし〜っかり気づいてた金髪の坊や。遊園地の人気アトラクションの、順番待ちを思わせるような行列の中。恐持てのお兄さんに手を引かれ、さながら…行き交う人々が怖々と道を空けるだろう、獰猛な土佐犬でも曳いてるかのような自慢げさで(それもどうかと…)意気揚々としていた彼であり。
“こういう薄っぺらいことで、ホントは偉そうにしてちゃいけないんだろけどもな。”
 本当に必要に迫られてのことならば、まだ非力な子供だという自分の力量を冷静に断じた上で…巧妙にも虎の威を借るのを辞さないだけの、徹底した合理主義者ではあるものの。それと同時に本物の誇りというもの、その価値をちゃんと知ってる坊やでもあるからね。皆が誰の威容に圧倒されているのかは重々判っていながらも、周囲からの畏敬の波動は…その感覚へと生に直にびんびんと響く快感だっただけに。ついつい嬉しくて堪らなかったそうでして。
「位置について、用意・・・・スタートっ!」
 前の組の最終親子が衣装や小道具の台から離れるのを見計らい、次のグループが出発するという段取りで、もう何組がゴールしたものか。子供の所属する組の得点にもつながるだけに、参加するからには一生懸命勝たなきゃねと、子供は特に奮起を見せてるそんな中、いよいよ出走が近づいて来て、

  「位置について、用意・・・・スタートっ!」

 昨年は二人三脚に出た妖一坊やであり、大人と手をつないで、半ば曳かれて走るのだというのが思えば初体験。急ぐ時などは“てぇ〜い、面倒だっ”と いつも抱えられてたからね。あ・今日はそれはダメなんだって、ハッと思い出すすぐ直前、双方ともに“抱えましょう、抱えてもらおう”という態勢に、息ぴったりで入りかけてた二人だったので。
「あ…。」
「あやや。」
 顔を見合わせ、吹き出してしまって、さあ仕切り直し。こっちの手をきゅうと掴んでる大きな手のひらが、凄っごく暖かで頼もしく。必死でついてってるこちらに合わせてくれつつも、少し先を杖代わりになって、速足で駆けるお兄さんが。ちらちらとこっちを見やってくれるのも、坊やには初めてのこととて照れ臭いやら…嬉しいやら。
“何だよ。心配しなくたって、そうそう転んだりしねぇって。”
 そんな憎まれを胸の裡にて思いはしても、睨むことさえ出来ないままに、問題のお着替えゾーンへと一番乗りで到着する。
「何を着るんだ?」
「えと“駅員さん”だって。」
 抽選箱に入ってた封筒を引き、そこに入ってるカードに指定されたテーマの服を着、小道具を持つ。駅員さんと書かれたカードには、制服の上着と制帽と紐付きの笛…と書かれてあって。小道具の方を探そうと、ごちゃごちゃ取っ散らかってた台上を坊やが掻き回していると、お兄さんが引っこ抜いた上着を肩のところで持って“ほれ”と示して見せたのだが、
「…それのどこが“駅員さん”なんだよ。」
「え? けど、いかにもな制服じゃないか。」
 濃紺のぱりっとした上っ張り。袖口のみならず、両肩にも…勲章帯を留めるためのタグのようなベルトと金ボタンとがついていて、いかにもお堅い営団地下鉄辺りの制服を思わせるような仰々しいデザインだけれど。
「大きさを見ろよ。こりゃどう見ても大人用だ。」
「あれ?」
 先にも述べたが、この競技、ご近所の児童劇団から譲り受けた衣装を使ってのゲームなので、どのお洋服もそれほど大きくはないだろう子供サイズばかりの筈なのに、総長さんが掘り返した上っ張りはその御本人でも着られそうな身丈であって。
「それに…。」
 これって“駅員”というよりも…と、別な職業を口に仕掛かった坊や。ふと、
「………お?」
 どうぞと広げてかざされた格好になってたその上着の…何かに気がついたような顔になる。結構しっかりした生地の、たらりと降りてた袖口を手に取り、それからおもむろに、
「…これ、着る。」
「え?」
「いいから。…ほら、少し遅れた、おぶってけ。」
「あ、ああ。」
 何を急に気が変わったやら、今度はやたら真剣なお顔になって、早く着せろと急っつく彼であり。ここからは背負っても抱えても良いというルールになっているからと、お帽子をかぶって手にはホイッスルという、一応の3点セットを身にまとった坊やを背負って、白ランを翻しての疾走を見せた総長さん。鮮やかな走りで、一等でゴールインして、だが。確認担当の先生から、
「ああ、これは“駅員さん”じゃありませんね、失格です。」
「え〜〜〜? だってこれって制服なのにぃ。」
 ………おや?と。総長さんが眉を震わせた。そうだよな、さっき、坊や本人もそう言って怒ってなかったか? それを急に“これで良い”と言い出したのは、探し直すよりも速くて済みそうな、何か巧妙な言い訳でも思いついたからかしらんと思っていたのだが。そこへは無策だった彼らしく、しかもその上、
「う〜〜〜。」
 不意に、背中に乗っかったままでもじもじとし始める妖一くん。
「どした?」
 訊けば、勢いよくも返って来たのが、
「トイレっ。しっこ漏れるっ!」
 これ以上はなかろう、分かりやすい一言で。
「急げ、ルイっ! 漏っちゃうからっ!」
「…分かったよ。」
 いかにも低学年の小さな子供が言い出しそうなことだねぇと。可愛らしい駄々へついつい苦笑していた進行役の先生があっちですよと指差した方、校舎の端を目指して、坊やをおぶったまんまで駆け出した葉柱のお兄さん。

  「………で? この次はどうすんだ?」

 走りながら低い声で訊けば。それへと返って来たのが、

  「さっすが〜vv

 こちらさんも…全く逼迫してなんかしていない、それどころか“くすくす”という楽しそうな含み笑い混じりのお声でのお返事だったりし。何がどう間違ってもあんな“子供らしい物言い”をするような子ではない。しっこなんて言いようも あまりにも露骨で、だから却ってハッとしたほど。となれば、何かしら裏があると思う連想も、それへとお伺いを立ててみる連携も、もはや慣れたもののお兄さんへ、
「このままルイのゼファーまで行け。そいから後は、そうだな、幹線道路に出てから指示するから。」
 葉柱のお兄さんが乗って来たバイクが停めてあるのも、校舎の方角。それでの“おトイレに行きたい”発言であったらしく、
「良いのか? そのカッコのままで。」
 家へ帰るのか、それとも急な買い物でも思い出したか。どっちにしたって、そんな突飛な正に“借り物”のいで立ちで良いのかと訊けば、

  「このままじゃないと意味がねぇんだよ。」
  「??」
  「これを追って来る奴がいる。
   つか、この上っ張りを餌にして、ガッコから引っ張り出すんだからな。」

 おやおや。何に気がつき、何を企む彼なのか、またもや何かしらの騒動が起きそうな雲行きですが、

  “…ま、そんな理由でもなきゃあ、
   あんな楽勝レースを棒に振ったりはしねぇよな。”

 まあ奥さん、お聞きになりました? 元はといえば、ご自分が衣装を間違えた張本人のくせに、このお言いよう。
(笑) ともあれ、お元気はつらつ、平穏なままに進んでいたはずの運動会が、何だか波乱含みとなって来て、はてさてどこ行く二人であるやら。次の話を、待てしばしっvv











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  *さあ、此処からこそが本題のドタバタなのですが。
   思わぬ時間がかかっているので、なんとも寒そうな逃避行になりそうです。
   十月の初めが舞台ですので、どうかどうかご理解くださいますように。
(笑)