月夜に、もしも逢えたなら… E
 



          




 本日二度目の奇遇にて、こんな思いもよらぬ場所で出逢えたその人は。屈強精悍な肢体によく映える、濃青のTシャツに白地の開襟シャツを重ね着て、ボトムはカーキ・チャコールのワークパンツという、軽快な私服姿に着替えており。てっきり…こんな人気のないところへ呼び出されたセナが、髪を染めた一端(いっぱし)の不良に絡まれているものだと思ったらしく。そんな瞬時の判断の下、何の躊躇もなく必殺の"鬼神の槍
スピア・タックル"を繰り出している人である辺り…このまま野放しにしといて良いのでしょうか。どこからともなくマシンガンを取り出して乱射する誰かさんといい勝負なくらいに、十分"危険人物"なんではなかろうかと思うのですが。う〜ん 一般人からの"後出し見解"はともかくとして、
「あの、十文字くんです。」
 遅ればせながら…と、セナが自分の連れを鬼神様へと紹介すると、
「ああ。」
 先程は慌てていたから気づかなかったらしいが、よくよく見れば…一年の秋大会からデビルバッツの不動のラインの要を務めていた顔だと、思い出すことが出来たらしい清十郎さんで。あらためてセナから紹介され、覚えているさと短く顎を引いて頷いて見せた。一方で、一応は年上の"先輩"だからと、口の中で小さく"うっす"と挨拶した十文字ではあったものの、
「何でこんなトコに…。」
 怪訝そうな表情は隠し切れない。1年違いの先輩さんで、しかも十文字は泥門のアメフト部に参入したのが春季大会が終わってからだったため、公式の試合では一年生の年の秋季大会でしか手合わせはしていないが、彼の側とて、この偉丈夫が何者なのかは重々心得ている。学生アメフトの世界のみならず、先々で日本のアメフト界を背負って立つとまで言われているほどの実力とネームバリューを誇る、日本最速のラインバッカー・進清十郎。確か大学選手権の最上級ランクにあたる"一部リーグ"にその名を連ねているU大学へと進学したと聞いていて。だというのに…何でまた関東の住人がこんな遠くにいるのだと、腑に落ちないという表情をして見せたため、
「あ、えっと。進さんたちは、こっちの大学のチームと恒例になってる練習試合があったんだって。」
 あのね、実は昼間のうちにも逢ってたの。それでお話も聞いていたのと、セナが先んじて説明をした。
「…ふ〜ん。」
 この青年が相当に寡黙な御仁であるらしいというのは、彼を多少なりとも見知る者には知られていること。それもまた、彼の年齢離れした威容を際立たせている要素の一つなのではあるが、そんなラインバッカーさんに手間をかけさせまいとするかのような、小さなセナの見せた気配りは少々意外で。とはいえ、

  "…ま、いいんだけどよ。"

 彼らの事情だ、自分には関係ないかと。薄く笑って、それ以上の詮索はよした十文字だ。そんな彼と入れ替わるように口を開いたのが、
「こんなところでまたまた逢えるなんて、奇遇というよりこれはもう相性の問題なのかもねvv」
 楽しそうに"にこりん"と笑ったマネージャーさん。
「こんな中に居ただなんて。真っ暗だったでしょう?」
 怖くはなかった? 小さなセナのふかふかな髪をぽふぽふと撫でて下さりながら、そうと訊いて下さった。岩屋の外側にいた彼らには、波や風の音が邪魔をして、中でお友達の名前を呼ばわっていた二人の声は全く聞こえなかったらしい。ただ、彼らが出て来た岩壁の裂け目から、一瞬だけ聞こえたセナの声に、進が反応して足を運んで来たタイミングと、こちらの二人が出て来たそれとがかち合ったらしくって。彼らの側ではそういう状況展開だったらしいというのは まま分かるとして、そうと運ぶ前の段階。なんでまた、こんな照明さえない足元も覚束無いような寂れた場所にいた彼らだったのだろうか。…まさか、デートとか?

 "いえ、それはないと思います。"

 おおお、セナくんたら自信ついて来たもんですねぇ♪ ほんの半年ほど前は、倒れるくらい気に病んだりもしたクセに。
(苦笑) まあ、この朴念仁な仁王様が"二股"なんてややこしいこと、出来る筈がありませんからね。そんな不器用さんでありながら、セナくんの気配を本能レベルでピピンと素早く察知出来るよになったその上へ、他にも心惹かれている対象を同時に持っているとも思えない。
"な、なんか、言いたい放題してませんか?"
 だってホントのことだものvv
こらこら 茶化してばかりでは話が進まない。キョトンとして小首を傾げたセナくんへ、

  「あ、もしかしてお迎えに来たのね?」
  「え?」

 お迎えって…。な、なんか縁起でもない言い方に聞こえるのですけれど。






 こっちよと先導されて、もう少し高みになってる辺りまで足を運べば。岩場の乾いたところに腰を下ろして、のんびりと缶ジュースなぞ飲みながら星でも見ていたらしきお友達二人の姿があって、
「よお。」
「…よお、じゃねぇ。」
 こいつらはよぉと、自分たちにさんざ心配を掛けて下さった彼らへ、ついつい拳を固めつつ唸ってしまった十文字だったが、
「ごめんなさいね。あたしたちのせいなのよ、これ。」
 マネージャーさんが拝むように手を合わせて謝ってくるのへ、
「はあ?」
 何がどうしてこの人のせいなのだろうか。依然として話が見えない十文字とセナへ、
「実は…俺たち、洞窟の奥まったところで妙な声を聞いちまってさ。」
 雷門くんが言うには、洞窟の中を順調に進んで、一番奥の祠とやらの前まで来たところで…ぼそぼそひそひそという、女の人と男の人の何か神妙そうに話している声がどこからか聞こえて来て。これが例の心霊現象かとびっくりした拍子、足元不注意から黒木が岩と岩の間に足を突っ込んでしまった。こりゃあ無理すると筋を傷めかねない。でもでも、うわあという大声を上げたもんだから、謎めいた話し声の主たちがこっちに気づいて様子見にと近づいて来て………。

  「その声の主ってのが、あたしたちだったの。」

 てへへと笑ったマネージャーさんの向こう、進さんと同じくらいに恰幅のいい男の人がもう一人いて、
「ウチのキャプテンの池上くんです。」
 バスガイドさんが名所を示すように、片手を肩辺りへ掲げて紹介して下さったマネージャーさん、
「この人がサ、ここいらで携帯を落としたなんて言うもんだから。」

  "………あ。"

 ここでセナが思い出したのが、昼間逢った時の彼女の言動。一緒にお買い物しようって言ってたキャプテンを此処いらで見なかったかと探していたが、そうだ、お互いが携帯を持ってるのなら相手へ掛ければ良いことなのに。無論、そうしなかった筈はなく、けれどどういう訳だか繋がらないか出てくれないかしたから、仕方がないなぁと歩き回って探していた彼女だったのだろう。そして、
「こんな時間になっても戻って来ないじゃない。それで彼を探しに来てみれば、ずっと此処で探してた、なんて言うんだもの。」
 何しろ、簡単に諦められるものではない。結構いい値であることも理由の1つではあるが、それよりも。住所録代わりに使っていたメモリーやら、これまでに貰った大切なメール、お気に入りの写真や動画のデータなどなど、大事なものが一杯詰まっている代物だったから、どうしても諦め切れずに探してた。そこへ、何組かが町中へと放たれた捜索隊のうち、進とマネさんとの組が本人を此処にて見つけた…という運びであるらしく、お陰様で電話も無事に発見出来たそうではあるが、
「そんなあたしたちが外で話してた声が、岩壁を挟んで中へも聞こえてたのね。」
 輪郭の曖昧な女性の声。中の声は外には聞こえにくいが、外の声は結構届いて、それが…もしかしたら幽霊の啜り泣き?と、雷門くんたちやセナたちに錯覚させたものの正体であったらしくって。
「そろそろ満潮になっちゃうからね。ほら、ここまで続いてた道がもう見えなくなってるわ。」
 小手をかざした彼女が示した方を見やれば、
「あ。」
 島の周囲、少なくとも町の灯が見える方向にあった乾いた道が、今はすっかりと潮の下になっており、月光を受けた細波が光って見える。
「あっちは渡れないほど深くはならないらしいけど、この洞窟の中はどうなるか、あたしたちにも判らなくてね。それで、とりあえずここまで引っ張りあげたの。」
 だから。戸叶たちや自分たちの呼びかけも聞こえず、返事のしようもなかったと…。
「…っ、それにしたってよ。」
 事情は判ったが納得が行かないと、十文字が"この野郎が〜"と唸り声混じりに黒木の傍らへと屈み込み、胸倉を掴んで見せる。
「携帯で連絡くらいしてこんかい。」
 そういえば。戸叶くんが携帯を掛けてみたと言ってもいたのに? 外にいたのにどうして通じなかったのかと、セナも遅ればせながらそれを思い出したところへ、
「あ、それは無理。」
 黒木があっさりと答えて見せて。はあ?と目許を眇めたお兄様へ、
「俺のもサルのも、バッテリーが上がってた。」
 ほら、昼間の内に写真撮りまくってたし、なのに充電しないで此処に来ちまってたからさ。俺も俺も、いやぁ〜不覚だったよなぁ〜と、結構明るい様子でいる能天気な彼らであり、
「お前らなぁ…。」
 こっちは心配してだな、宿まで往復して駆け回ったりしたし、セナはセナで怖い思いもしたってのになと、ぎりぎりと歯軋りするお兄さんの傍らで、

  「…良かったぁ。」

 捜索隊の片割れのセナくんが、自分のお胸へと小さな手を伏せ、心からの安堵と共に、大きな溜息を零して見せたのでありました。







            ◇



 お迎えも来たことだし、先生方も心配してらっしゃるでしょうし。足元濡れちゃうけど、あたしたちが送ってくから、お宿へ帰んなさいと。マネージャーさんがそうと言い、足を傷めた黒木くんは十文字くんと、畏れ多くもU大学アメフト部の現キャプテンさんが肩を貸して下さったのへ、両側から支えてもらって宿まで戻ることとなった。先導役は身軽な雷門くんと屈託ないマネージャーさんとが並んで務め、誰かさんが ちらと肩越しに振り返った後方には…背中から月光を受けて逆シルエットになった大きな陰と小さな陰が、とぽとぽという歩調でゆっくりとついてくる。少しばかり距離があるせいで、何を親しげに話している二人なのかは、あいにくと誰の耳にも届かなくって。

  「怪談…か。」

 ただ暗かったからってだけじゃない。あの場所を舞台にした因縁話を聞いていたからとっても怖かったんですと、小さな肩を窄
すぼめつつ、祠にまつわるあのお話をしたところが、
『怪談ぽい解釈ばかりじゃないと思うけどな。』
 一緒に聞いていたマネジャーさんは怖がるどころか、あっけらかんとそう言った。
『そのお姫様がいまだに土地に憑いて迷って出るってことは、自分が死んだってことに気づいてない訳でしょ? それって何も恨みからばかりじゃないと思うの。』
 ピンと立てた綺麗な人差し指の先を宙に振って見せ、
『愛しいお相手にただ逢いたいってだけじゃないのかしらね。』
 だから、その並外れた思い詰めの結果である業の深さが恐ろしいのだがと。そう思ったセナだったが、悲しい想いを恐ろしいと思うのは却って怖いものを招きはしないかと思い、その場では敢えて口には出さなかった。恐ろしかったのもあるし、それに…。

  「どうして昔話って悲恋ものが多いんでしょうか。」

 問われて"多いだろうか?"と男らしい眉を顰める清十郎さんは、シンデレラとか白雪姫とか人魚姫とか、メジャーどころしか知らないからだろう。民話や伝承には、家が敵同士だったからだとか、身分違いや昔からのしきたり、天罰などなど、さまざまな妨げによって、想い合う恋人たちが添い遂げられなかった話がごまんとある。めでたしめでたしの方が少ないという印象になってしまうほどに沢山。今回のお話を先に鈴音から聞いた時にも思ったのが、

  "逢いたい人に逢えないのって、ホント、辛いものね。"

 何となく。自分の身に迫って理解出来た、身につまされたセナであり、
「好きな人に逢いたいって想いだけで、海の神様を説き伏せちゃったお姫様って凄いじゃないですか。」
 相手は人ならぬ神様なのに。しかも地上から自分を攫って行ったほどの異能力を持つ存在なのに、月に一度、一晩だけでいいから帰してと説き伏せたんですものね。セナはそうと言い、
「そんな気丈なお姫様が、逢えない寂しさに身が細って亡くなっただなんて…。」
 いくら信じていたとしたって恋焦がれる想いは別物だから。心変わりを恨んだ訳ではなく、寂しかったから逢いたくて迷い出るというというマネージャーさんの解釈もセナには理解できたけれど。それならそれで、やっぱり悲しい話だなと思ったらしい。寂しそうに表情を曇らせたセナの様子に、
「…悲しい境遇の人が多かったからじゃないのかな。」
 辛い身の上にあまりに幸せな話は受け入れにくくはなかろうか。それよりも、辛いことの何と多いことかと我が身にダブらせて口にした"おとぎ話"が、同じような境遇の人々には身につまされて受け入れ易かったとか。進からそうと応じられて、だが、

  「悲しいお話は嫌いです。」

 セナは ゆるゆると首を横に振る。辛い話や悲しい話は、赤の他人の身の上のことでも心に痛い。
「辛いお話を最後まで聞けるほど、ボク、辛抱強くないです。」
 いじめや意地悪がテーマになっているようなドラマや人生相談なんかは、思うより早く、手が素早くチャンネルを変えている。
「心根が強い人じゃないと、聞けないんじゃないかって思いますもの。」
 我が身に照らしてだなんて、そんな辛いことの疑似体験をしたいという人の気が知れないとまで思う。眉を寄せた少年に、

  「…小早川は優しい子だからな。」

 青年からの静かな声が届いた。
「そんなことは…ないです。」
 ただの臆病者ですよ。痛い思いするのから逃げてるだけだし。口許だけで小さく笑ったセナの肩を、頼もしい手が引き寄せて、

  「可哀想にと同情するより深く、
   自分の身に添わせて相手のことを考えてやれるから。
   だから…辛くなるんだろうさ。」

 ただ案じてやる程度の疑似体験では済まないから辛い。本当にそういう立場の人の身になってしまうから、気持ちがひりひり痛いことまで実感してしまう。昔、勇気が足りなくて独りぼっちだった時期があったから。そんな状況がどれほど辛いか、誰よりもよく判ってしまうセナ。
「昔の人たち、殊に、昔話を語り継ぐ階層の人たちは、幸せで豊かな生活よりも、何かと苦労も絶えなくて、恵まれてはいなかったことの方が多かっただろう。」
 でも。それでも頑張って掻いくぐったから。小さな幸いを大切に手のひらに温めて。それを代々語り継いで。何故 悲しいお話なのか、何が正しいのか、何が理不尽なのか。それをお前は見失わないでと、そんな気持ちで子供や孫に語り継いだのかもしれないな。そんな風に言葉を紡いでから。

  「………柄にないな。」

 こんな話、自分から口にしたなんて初めてだと、口許へ拳を当てて小さく咳払いをした進さんの横顔が…気のせいか、ほんのりと赤くなったような気がしたセナであり、

  "はやや…。///////"

 ただただ、セナの気持ちを理解してやりたくて、そして。そういう悲しい理不尽が横行するよな、仕方がない世情だったに違いないんだよって、だから、お前が気に病むことはないんだよって、そう言いたい彼なのだろうなというのが朧げながらも伝わって来て。こういうジャンルのお話を深く解析してみただなんて、きっとこの偉丈夫には初めてのことだった筈。柄にないという以前、関心さえ向かなかったことだろに。肩を落として"哀しいことですよね"なんて打ちひしがれてしまったセナを、そぉっと真摯に慰めてあげたくなったから。作り話だろうに下らないとか理解出来ないとか、そんな格好で一蹴したり関わりないで片付けず、慣れない方面だったろう思慮深さを巡らせてくれたのが、小さなセナにはとっても嬉しい心使いで。

  "進さん…。"

 ホントはね、逢えない寂しさに身も細って亡くなってしまった二人の恋人たちに、怖いと思うより可哀想だなって思ったセナだったから。でもね。不自然な身分の差や情勢さえ乗り越えて、互いに強く強く想い合えるのは、それが自然に発生した気持ちだからで。たとえ容易には逢えないくらい引き離されても、強く信じてさえいればその想いは絶えることはない。もしかしたら、このお話はそれをこそ伝えたかったのかもしれない。何だかそんな風に思えて来たの。そして、

  "贅沢だよね、ボク。"

 ちょこっと逢えないからって、寂しいとくよくよするなんて、なんて贅沢だろうかと思い知ったような気がしたの。だってこんなに優しい人。それにそれに強靭な心のままで、セナのことを信じてくれる人。

  "………。"

 恋情には色々あって、その人が大好きだから、大切にしたいからと、なのに遠くで見守ることしか出来ないなんて考え方をする場合だってあるだなんて。自分を同じように好きでいてと望まない、見返りを欲しがらない、そんな辛い恋情もあるだなんて、恐らく彼には理解出来ないことだったかも知れない。でもでもね、柄にないと言いながら、それでもちゃんと考えて答えてくれた。慣れないことだったろう繊細なことへも、最初こそ"困ったな"とおろおろしもしたろうに、自信がなくて人一倍臆病なセナへ彼なりに頑張って"優しい"とか"柔らかい"とかを身につけて、真っ向から手を出してみてくれた果敢な人。ちょっぴり拙い、そこがまた、何とも温かくて心に染み入る。

  「………怖かったか?」

 ふと。あらためて訊かれて。あまりに短い一言へ、
「幽霊ですか?」
 訊きかえすと"いや…"と口ごもる進であり。それで、それならああと気がついて、

  「…ちょこっと怖かったです。」

 有無をも言わせず容赦なくという勢いで、唐突に繰り出された"鬼神の槍
スピアタックル"ばりのストレートパンチ。合気道も嗜む進さんだから、当たれば半端な破壊力ではなかった筈で、今にして思えばとんでもない無茶をしたなと自分でも思う。自分程度の微力で止められるものではない筈のものが、すんでのところでピタリと止まったのは、進本人が状況を素早く把握したからであり、そんなずば抜けた反射をこそ"やっぱり凄い人だな"と、感嘆したセナであったのだが、

  "誤解していると読み取られたのだからな。"

 月を背にして尚のこと読めなかった筈だのに。不意に飛び出して来た人物がこの進であるということと、そこへと加えてこちらの誤解を…セナが絡まれているのだと勘違いし、余裕もないまま本気で殴りかかろうとしていた進であったということをも察知して、言葉では制止仕切れないと判断して、勢いよく飛び出して来た彼であり、

  "鉄面皮が聞いて呆れる。"

 彼にかかっては形無しだなと、苦笑をこぼす仁王様でございました。………って。いや、それってもともと"褒め言葉"じゃないんですが。そうじゃないと否定された方がいい形容詞なんですよ? 判ってますか?(苦笑)鬼さえ仕留める小さな少年。そんな彼がふと、自分の頭上を見上げてほわりと笑った。

  「星が…。」

 言われて同じように視線を上げれば。街路を照らす灯火が少ない分、それはそれは濃密な黒の夜陰を敷き詰めた夜空の深みの中に、大量の星たちが満遍なく撒き散らかされているではないか。
「ウチの近所では、晴れてたってよ〜く探さないと分からないほどしか見えないんですのにね。」
 飽かず眺めていると、そのまま意識が上空まで吸い上げられてしまいそうなほどに、魅惑的な星々、また星…の群れが、果てしなく広がる初夏の夜空。ほわ〜っと薄く口許を開きかけつつ見上げていたセナが、
「…あややっ。///////」
 反っ繰り返り過ぎて、後方へとたたらを踏み。ばたばたと腕を回しかかったところを…進さんの懐ろにまたしても"ナイスキャッチ"されたのは、もうもうお約束ってやつでしょうかvv
(笑) また一つ、微笑ましい思い出が増えた、かあいらしい恋人さんたちでございましたvv








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  *おまけがありますvv もちょっとだけお付き合い下さいませvv

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