フジェールは、ブルターニュ一の大都市レンヌから北東に48キロのところにある町です。フジェール城は、ナンソン川を見下ろす岩壁の上に悠然と立っています。ブルターニュがかつて公国だった時代、フジェールから東へわずか10キロほど行くだけでフランス王国領だったこともあり、強固な城塞が築かれ、長年に渡り国境を超えて侵入してくる外敵と対峙し続けた防衛都市でもあります。フジェールの南に位置するヴィトレやシャトーブリアンの町も、フジェールと同じように国境警備の町として堅固な城塞が作られています。これらの町は国境線に沿って一直線に配置され、ブルターニュの独立を守るための最前線基地として重要な町でした。
フジェール城の歴史は、築城、敵による破壊、再築城の繰り返しでした。10世紀にこの地に最初の城が築かれたそうですが、絶壁によってキープを守るという自然の要害を利用した簡単な造りの城だったそうです。12世紀半ばに石造りの城へと作り変えられましたが、1166年、イングランド王兼アキテーヌ公でもあったヘンリー2世に率いられた軍に包囲され、フジェール城は3ヶ月の篭城に耐えた後焼け落ちてしまいます。その後すぐに城は再建されたそうですが、1307年にフジェールの領地はフランス国王の所有となります。フジェール領主権がブルターニュ公爵によって買い戻されたのは、1428年のことでした。現在見られる城は15世紀後半に建てられたものだそうなので、きっとブルターニュ公爵の手に戻って間もなく城の改築が始まったのでしょうね。
現在のフジェール城は、外郭、中郭、内郭と3つの郭を持つ城塞です。キープを擁する内郭が一番古く、時代と共に外側へと拡張していった様子が良く分かります。中郭はかなり広く、この敷地内に礼拝堂や日常生活を営む建物が建てられていたのだそうです。外郭に備え付けられたゲートハウスは、当然ながら堅固な塔によって守られています。フジェール城には、ゲートハウスの塔を含めると、全部で13の塔が配置されているそうです。しかも、城をすっぽりと囲む分厚い城壁によって守られ、陸に面した側には大きな堀が設けられています。国境を守る城塞として、強固な防衛設備が必要だったのでしょうね。
もっとも近い外敵フランス王国ににらみをきかせてきたフジェール城でしたが、1532年にブルターニュ公国がフランスに併合されてしまうと、もはや国境警備としての役割は必要なくなり、刑務所として使用されるようになったそうです。18世紀には個人所有の城となりますが、1892年に町が購入し現在に至っています。現在のフジェールはのどかな町に見えますが、第二次大戦中の1944年6月9日、町を占領していたドイツ軍との間で戦闘が起こり、ドイツ軍の爆撃によって多くの人が命を落としたそうです。修復されたお城を眺めていると、とても信じられないですけどね…。
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