リカルバー
Reculver



イギリス中でローマ人時代の遺跡を見ることができるというのはバースランカスターのところでもお話しましたが、イングランド南東部にあるケント州は、ドーバー海峡を挟んでガリア地方と向かい合っているため、イギリスの中ではもっとも早いうちからローマ人の影響を受けたところです。リカルバーの地には、遅くとも紀元後65年までにローマ軍間の連絡施設である信号塔、または灯台が築かれていたそうです。

ローマ人時代の砦は、海の侵食のせいで敷地内の3分の1ほどは海中に沈んでしまっており、また当時の建物たちも現在ではほとんど失われていますが、当時の砦は下階は3メートルもの厚さのある壁に囲まれたおり、砦を取り囲む城壁の高さは6メートルもあったそうです。しかも城壁の内側には、ニ重の堀まで備えられていたそうですよ。当時のイングランドでのローマ人支配は、まだまだ不安定だった、ということでしょうか。

もっとも良く残っている二つの塔を左右に備えた建物は、聖メアリー教会の廃墟です。ローマ人時代のものではなく、ローマ人がイギリスから去った後この地に住みついたサクソン人たちが670年ごろ教会を建て、その教会の跡地にローマ人が残していた砦の石を使って、およそ1200年ごろ建てられたのだそうです。この教会の廃墟は、正面から眺めると立派な教会に見えますが、裏に回ってみるとお芝居の舞台装置のようにぺらぺらになっていて驚かされます。1809年に破壊されたため、こんな姿になってしまったのだそうです。




イングランド スコットランド ウェールズ