播州葡萄園復興事業


播州葡萄園とは  播州葡萄園の意義  播州葡萄園の気候

播州葡萄園復興事業  謝辞  播州葡萄園報道記事

平成15年春、遂に約束の地に葡萄樹は植えられた





 
 播州葡萄園とは
播州葡萄園醸造場遺跡の所在地を示す看板 播州葡萄園は、明治13年(1880年)に兵庫県加古郡印南新村(現在の稲美町印南)に開設された、国営のワイナリーです。30ヘクタールに及ぶ広大な敷地には、ブドウ畑だけでなく、地下室を備えた醸造所や、ブランデーをつくるための蒸留設備まで備えた、日本史上唯一の本格的ワイナリーだったのです。このようなワイナリーが国策として造られた背景には、鹿鳴館に代表される欧化政策だけでなく、米の節約(ワインを普及させることで清酒醸造を減らして米を食糧に回す)や、ワインの輸出による外貨獲得までをも視野に入れた遠大な計画があったのです。

播州葡萄園の隅に残る、疎水事業による給水設備 しかし、当時世界的に流行したブドウの害虫、フィロキセラによって播州葡萄園は壊滅的な打撃を受けてしまいました。そして、政府の政策転換(農業→重工業)、疎水事業による水田化などのため、播州葡萄園は僅か十数年で頓挫し、明治の終わりには跡形もなく消え去ってしまいました。現在播州葡萄園の跡地の大部分は水田あるいは減反で転作した畑となっており、左の写真のように疎水事業による給水設備が私たちの葡萄園の隅にも見られます。

  解説:フィロキセラとは

 
 播州葡萄園の意義

 播州葡萄園は政策としては失敗に終わりましたが、日本のワインづくりを考える上で貴重なデータを残してくれたはずです。ワインづくりはワイン用の良質なブドウを作ることが殆ど全てなのですが、播州葡萄園ではまさにそのブドウ作りが実践されていたのです。播州葡萄園ではフランス各地のワイン醸造に向いた品種を中心に、百種類ほどのブドウが栽培されていました。そして、その栽培方法は、垣根作りで1ヘクタール当たり5000本近いブドウ樹が植えられるという本格的なものだったのです。

 しかし、残念なことに、播州葡萄園でのワインづくり・ブドウ作りが後世に伝えられることはありませんでした。それ以降日本のワインづくりは、山梨県を中心とした、日本在来の半野生種である甲州ブドウや、ワインづくりには向かないアメリカ系ブドウ品種を用いたものに限定されて行ったのです。そして、ワインづくりのために必要な垣根作りは忘れ去られ、「日本の風土には棚作りが適している」という誤った知識が普及し、日本のワインは長い暗黒時代を迎えます。播州葡萄園の資料を発見し、稲美町へ度々足を運ばれたワイン評論家の故麻井宇介氏は、いみじくも「播州葡萄園の閉鎖から、日本のワインづくりの進歩は百年間停止した」と述べています。

 欧米では、ワインはワイン用のブドウ品種を密植栽培して作ることが常識となっていますが、日本では長い間そのことを意識的に無視して、生食用ブドウの残りの廃物利用でワインをつくっていたのでした。近年のワインブームで、日本の消費者も欧米の本格的なワインに目覚め、単に「甘ければ売れる」などという時代は終焉を迎えました。これから日本でも本格的なワインづくりが盛んになるでしょうが、既に百数十年前に、日本政府が運営する播州葡萄園で本格的なワインづくりが行われていたことに想いを馳せたいものです。

  コラム:本当のワインづくりとは

 
 播州葡萄園の気候

 ワインの教科書を見ると、ワインづくりに適しているのは北緯30度〜50度、年間降水量500〜800mm・・・などと記載されています。播州葡萄園は北緯約34度45分ですが、この土地は温暖で雨が非常に少ないことで知られています。降水量は年間1000mm以下と、日本では例外的な少雨でブドウ栽培にとって理想的な気候と言えます。

  解説:播州葡萄園の気候

 
 播州葡萄園復興事業

 播州葡萄園のかつての土地を全て葡萄園に戻すことは現実的ではありません。当面は一応の本格的なワインづくりを行うのに必要な量のブドウを収穫するだけの面積にブドウを植える予定です。

播州葡萄園に植えられたカベルネ・ソーヴィニョンの苗木 播州葡萄園の栽培試験では、「ボルドー・ノワール」、「ボルドー・ブラン」、「ブラッキ・ジンフヰンデル」が良好な結果であったと記録されています。「ボルドー・ノワール」はカベルネまたはメルロー種、「ボルドー・ブラン」はセミヨンまたはソーヴィニョン・ブラン種、「ブラッキ・ジンフヰンデル」はジンファンデル種であると考えられます。私たちの播州葡萄園復興事業では、これらのブドウ品種を順次植樹して行く予定です。

播州葡萄園記念公園予定地に立てられた看板 平成15年春には、約10aの土地にカベルネ・ソーヴィニョン500本が植樹されました。これは
神戸新聞(全県)にも掲載され、話題になっています。平成16年春には隣接する約20aの土地にメルロー、セミヨン、ソーヴィニョン・ブラン、ジンファンデルを合計約1000本植樹し、同じく神戸新聞(東播版)で紹介されました。
 また、この畑と隣接する区画で醸造場の遺構が発掘されていますが、その敷地を稲美町が買い上げ、「播州葡萄園記念公園」を整備する計画も進められています。現在のところ播州葡萄園復興事業に対して稲美町の協力は得られていませんが、播州葡萄園を現代に蘇らせたいという思いは官民を問わず一つです。

  解説:播州葡萄園のブドウ品種

 
 謝辞

播州葡萄園に完成した垣根 播州葡萄園中心部の貴重な土地を御提供戴き圃場整備にも御協力戴いております美樹庭石株式会社社長厚見和保氏、播州葡萄園設立時に尽力された戸長丸尾家の末裔で播州葡萄園におけるブドウ栽培に関して御助言・御協力戴いております葡萄園池土地改良区理事長丸尾俊三氏、本復興事業の計画段階から御助言・御協力戴いております稲美町町会議員赤松弥一平先生に感謝します。また、ブドウ苗木の手配に関して無理なお願いにもかかわらず御協力戴きました植原葡萄研究所植原宣紘所長に感謝します。




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