秋の七草

 

山上憶良という歌人が秋に咲く草花を七つ選んで,次のような歌を詠みました。

    『秋の七草』 (「万葉集」より)

萩の花

尾花くず花

瞿麦の花

女郎花また藤袴

朝貌の花

 

これがいわいる「秋の七草」とよばれているものです。

「春の七草」のように食べられるものではなく,見た目に「秋らしい」草花が選ばれているようです。

 

ヤマハギ

ヤマハギやマルバハギなどをまとめて萩とよんでいます。萩(はぎ)は草ではなく低木で,紅紫色の小さな花をたくさん咲かせます。

現在,身近なところで秋を象徴する萩といえばアレチヌスビトハギでしょうか。花は小さいながらも典型的な「蝶形」でかわいらしいですし,群生しているとなかなか見ごたえもあります。

ススキ

尾花(おばな)とはススキ(イネ科)のことです。イネ科の植物は地味であまり人気はないのです(?)が,ススキは別格!知らない人がいないくらい有名です。ただし,ススキによく似たオギという野草があり,それをススキと思っている人は結構多いようです。

クズ

クズはいたるところにつるをのばし,花もグロテスクな印象があるため,どちらかといえば嫌われ者ではないでしょうか。しかし,花をよく見てみると,その形といい,濃い紅紫色に黄色というアンバランスさといい,どこか神秘的な感じを受けます。

ナデシコ

瞿麦(なでしこ)は身近ではほとんど見ることができませんが,形も色も申し分のない可憐さをもっています。花は秋に咲きますが,春を連想させる暖かな感じがします。

オミナエシ

女郎花(おみなえし)も街中に生えているのを見ることはありませんが,お盆の頃になると,お供えする花として花屋さんで売っているのを見かけます。

花は黄色ですが,タンポポやノゲシのような鮮やかな黄色ではなく,やや淡い感じの黄色で,秋らしさを感じます。

フジバカマ

藤袴(ふじばかま)が野生に生えているのを見ることはまずありません。ただ,そっくりな花を咲かせるヒヨドリバナは里山などでよく見かけます。

花は一見,地味な感じですが,よく見ると花火のような華やかさがあります。

キキョウ

朝貌(あさがお)とはキキョウのことをいうようです。キキョウも野生に生えているものより,栽培されているものをみることが多いです。

身近なところではキキョウを小型にしたようなキキョウソウを見かけます。こちらは帰化植物で,街中でも広がりつつあるようです。ただし,花が咲くのは秋ではなく,5月から7月頃です。