シャモニでの最初の朝は雨。昨日我々が列車で移動している間、シャモニは大雨だったということです。この旅のハイライトと言ってもいいエギーユ・デュ・ミディ展望台とエルブロンネル展望台の日。しかしこの空模様ではせっかく上ってもまず展望は無理、明日の好天に賭けて急遽予定を変更してバルム山を周回するハイキングとなりました。

雨支度でホテルを出てバス停へ。ル・トゥール行きのシャモニ公共バスに乗車、終点がゴンドラの山麓駅前。雨はしとしとと降り続いています。ゴンドラとリフトを乗り継いで山頂駅まで上るとそこは標高2190mの高原放牧地、20頭ほどの牛が草を食む長閑な風景が広がっていましたが雲は垂れ込めたままです。幸い雨はやんでどうやら雨具は不要になりそうです。

スイス・フランスの国境に建つバルム小屋はすぐそこ、平坦道を10分ほどで到着。緑の草原が起伏しながら大きく広がっていて、天気がよかったらさぞ気持ちよかろうと想像できます。国境標石の写真を撮ったりしてからハイキング開始、バルム山の山頂は踏みませんが、山腹を時計回りに周回するコースで、前半はほぼ平坦な道です。左手にエモッソン湖が望めるあたりから下のほうに見える牛小屋目指しての下りに入ります。牛小屋が4棟ほど建っている窪地状の最低部は大きな雪田になっていました。ここから目測で250メートル前後の登りに変わります。山慣れない人は一汗かかされるでしょう。このツアーでのハイキングでいちばんの登りでしたが、落ちこぼれもなく全員そろって登って行きます。残雪のトラバースに突き当たりました。踏跡もついていてどうということはありませんが、なにしろハイキングは始めていう人も何人かいます。ツアーリーダーは安全を重視、結局残雪の縁を回りこんで行くことになりました。登りついた稜線のコルで昼食、おにぎり3個で千何百円。ちょっと高すぎます。
みんなが食べ始める前に、私一人だけ目の前のピークを往復することにしました。ピークには山頂標識らしきものが見えます。急げば10数分で登ってこられるでしょう。これまでのハイキングでピークを踏むコースは一度もありませんでした。せめて一つくらいはという思いもありました。半ばランニングでピークへ駆け上がると標識には『L’Arolette 2001m』と書かれていました。

バルム小屋まで戻ると周辺にはピクニック気分の若者たちなど20人ほどがいました。雨が心配なこんな日でも上って来る人がけっこういるものです。スイスの人たちはハイキング好きなんでしょう。自転車の人もいます。リフトやゴンドラ、登山電車、あるいは列車でも自転車を携帯している人をよく見ます。ハイキングをしていても山の中をマウンテンバイクで走る姿や、列車・バスの中からもスポーツタイプの自転車で疾走する姿をたくさん見かけました。スイス、イタリアなど自転車競技の強い国の底辺を見る思いでした。
モンブランやドリュなどの展望はかないませんでしたが、雨に降られなかったのは幸いでした。
リフト、ゴンドラを乗り継いでル・トゥールへ下山。普通に歩けぱ1時間半ほどのコース、休憩込みで3時間余のハイキングでした。明日はエギーユ・デュ・ミディ展望台となるため、予定していたラックブランのハイキングは割愛となるがこれは仕方ありません。小さなハイキングでもホテルに一日閉じ込めということよりましでした。

この旅で夕方ゆっくりとした時間が持てたのは今日がはじめて、妻と二人シャモニの街を散策しながら買い物などを楽しみ、夕食は各自自由ということで道路に面したテント掛けのカフェテラス風のレストランに蛮勇を奮って入り、あとは身振り手振りでオーダー、ワインを飲みながらヤギのエサほどもある野菜サラダや肉料理などを楽しみました。

天気はすっかり回復して、気がつくとシャモニの街からドリュの針峰が青空の下に姿を見せていました。明日に期待が高まります。
宿泊は当初予定のアルピナホテルへ移り、ここに2連泊。このホテルからは純白のモンブランや鋭い針峰がのぞめました。

シャモニも美しい町だった

ハイキングの起点バルム小屋

バルム小屋前の国境標石。スイス、フランスと記されている

一人で駆け上がったピーク

夕暮れ前のシャモニで

どの建物も花で飾られている
   
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