モザンビーク緊急援助に関する要請

市民から日本政府への要請

私たちは,今年2月と3月に起きた大洪水によって多大な被害を被ったモザンビークに対して,日本政府が3000万ドル(約30億円)の緊急援助を約束したことについて一定の評価をしている。

しかし、この緊急支援の内容について市民の立場から問題があると考える。特に,およそ10億円近くが計画されている食糧・食糧増産援助の中でも,食糧増産援助の内容について懸念している。

農薬・化学肥料・農機具の供与といった所謂2KRに沿って計画されている食糧増産援助は,紛争終結後のカンボジアに対して行われ国内外から批判された援助と同じ問題を有する。「緊急援助」の名のもとに,地元への長期的な影響が十分に検討されないまま,援助する側の都合で実施されようとしている。また,農薬に関しては,日本政府がモザンビーク政府に贈った農薬が,何年間も倉庫に放置されて危険な状態となり,デンマーク政府からクレームが寄せられるという事態となっている。

大半のモザンビーク人が,農薬・化学肥料・大型農機具に頼ることなく自給自足のための農業を営んできた中で,これらの物資を大量に供与することは,被災地の自然環境及び社会環境に多大な影響を及ぼすことになる。これらの供与が,大洪水によって苦しむモザンビークへの緊急援助として,真に有効な援助となり得るとは思われない。日本の農業や大規模農営をモデルとした「食糧増産援助」は、従来伝統的な自給自足のための農業活動を続けてきたモザンビーク国民の生活に,長期的な悪影響を及ぼす可能性がある。日本政府がODAの基本方針とするようになった「持続的な開発」という点からも問題である。

巨額の「緊急支援」を日本が行なう根拠は、日本が近年大規模な自然災害を経験してきたことにあろう。だからこそ,納税者たる日本市民も世界各地の被災地への緊急支援におおいに賛成し,関心を寄せているのである。このような国内での経験こそを,国外の緊急支援の基本方針へ本来いかすべきところであるが,それがなされているとは思われない。

阪神・淡路大地震でも,被災地及び住民のニーズをきちんと調査しないまま、送る側の都合でなされた緊急援助が多くあった。余分な混乱を招いたり,「長期的」な視野を欠いていたために現在でも解消されていない弊害も見受けられる。援助が送り手側の都合を優先して実施される時,災害によって脆弱となった受け手側に悪影響を及ぼしかねないことは既に経験済みのはずである。

しかし,今回の緊急支援内容に関して,このような点について十分考慮されていると思えない。過去の農薬供与の問題については,受入側(モザンビーク政府)の問題とされているが,援助の有効活用に関する調査と実施状況に関するモニタリングについては,援助する側の責任ではないのか。また,今回の供与の国内配布は問題がないといえるのか。納税者としては,徹底して当然と思われる点である。

私たちは,賛同する個人及び団体とともに,以下のことを要請する。

  1. 緊急援助を十分な検討なしに決定し,実行しないこと。
  2. 被災者および被災地に悪影響を及ぼす可能性のある援助ではなく,持続可能な発展に寄与し,真に役に立つ支援を再検討すること。
  3. モザンビーク農業の主体である自給自足住民向けの援助とすること。
  4. 検討している援助内容を公開し,協議の機会を設けること。

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