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by.大久保美籾&狐月

見果てぬミドリ・作者補記

 そっとしといてあげようよ、シスター。
 あんたが誉めた今回の成績優秀者は。
 7問分もエンピツ転がしたんだよ?
 いちまんロクセンさんびゃくハチジュウよん、ぶんの、いち。
「万に一つ」以下の勝負をひっくり返したのは。
 偶然でも奇跡でもなく。
 さあ、何でしょう?

 テストのあった日。
 それは、とってもいい天気の日だった。
 テストが返ってきた日。
 それは…。
 どしゃぶりだったと思う?
 とってもいい天気だったと思う?
 
 「決まってるでしょ!! 大久保美籾さん!!」
 うわあっ!
 あ、ど、…どうも。
 工藤さんじゃ、あ、ありませんか。
 あ、あの、もう作品終わってて、ここ、作者補記なんですけど。
 き、気にしないで、って。
「今回、めずらしくハッピーエンドだったから、ちょっとお礼に来たの」
 すいません。いつも悪く書いてしまって。
 べつに恨みはないんです。
 ただ、ちょっと、わたしあなたがニガテで…。
 まさかお礼ま…。
「何か言った?」
 なんでもありませんっ!
 ところで、ほんとは何しにいらしたんです?
 じつは?a
「ひとつだけ、言わせてね」
 な、なんでしょお。
 キャラのくせに作者に文句言いにくるなんて。
 やっぱマリは怖いよう。
「あたし、今度のテスト、ほんとにがんばったの」
 ええ、知ってます。ほっぺに氷あてて徹夜してたの。
 でも、氷嚢ずっと持ってたの、リ。
 あっ。
 ひどいじゃないですか!
 いきなり平手ぱんちなんて。
「そうよ。それくらい痛かったんだから」
 はい。痛いですね。…とっても。
「眠かったんだから」
 はい。
「がんばったんだから」
 はい。
「くやしかったんだから!」
 それはちょっと違…、でも、お察しします。
「なのに、アレはさっさと寝ちゃってたんですって?」
 はい。
 ミドリはさっさと寝てました。
 神経ぶっといですよね。
 オトモダチとケンカしても平気で寝付けるなんて。
 トーヘンボクもいいところですよね。
(一夜漬けするほどバカじゃないって言ってたとは、…言えない)。
「エンピツ転がさなくても、65点だったのよ、あたし!」
 ろくじゅーごてんよ。
 赤点じゃないのよ。
 ふだんよりデキ良かったんだから!
 どうして作中に書いてくれないのよ!
 それはその、字数の関係とか、その、いろいろと。
 ずっと氷嚢持ってた方は、両手しもやけで保健室送りで、再試験で外出日ぶっ潰れたって話も書かなかったんですよ? その日はリエへのおわび探しに、ミドリとマリがケンカしながらサンリオショップへ行った、って話も。
「いいのよ、そんなさらに数日後の話なんて」
 大切なのは、あたしが勝ったってことよ!
 それも、あたしの華麗なる勝利には、リエの応援が貢献したのよ!
 決め手は、リエの応援よ、リエの!
 あの吊り目女が何点だったか知らないけど。
 しょっちゅうフけてる不良は赤点スレスレに決まってるじゃない。
 実力でもあたしの勝ちだったんだからね。
 肝心なトコ、もっといっぱい書きなさいよ!!
 …そうですね。
 勝てば官軍、って言葉、わたしも大好きです。
 原爆や東京裁判に文句言うやつは、歴史無知の大たわけだと思います。
「それと、ね」
 ひとことだけって言ったくせに。
「何?」
 なんでもありませんっっ!
 どうぞ、はやく(言ってお帰りくださいっ)!
「偶然でも奇跡でもないなら、ひとつしかないでしょーが!!」
 絶対唯一神の意志、ですか?
「違うわ。神様なんかいるわけないでしょ?
 ミドリなら分かるけど、工藤さんも無神論者ですか?
「オトモダチの愛を信じられない、あの極悪インケン吊り目女が実在するのがいい証拠よ!」
 はぁ。
 その件に関しましては、わたしからは何とも。
 べ、べつにえこひいきなんかしてませんっ!
 わたし原作者なんか知りません!
 では。
 マリア様のご加護、ですか?
 近い?
 小松崎さんのご加護ですか?
「そうよ(どきっぱり)! それは愛のチカラよ!」
 どっかーん。
 ああ、なぜ後ろで秩父な採石場が大爆発してるんだ。
 しかも5色スモーク!
「リエの愛に祝福された聖なるあたしが、悪魔に魂を売った邪悪なミドリを撃破粉砕したのよ!」
 りんごーん、りんごーん。
 鳴り響く天の鐘がうるさいんですけど。
 どうしたんです突然、中世フレスコ画なお祈り姿勢で。
 うるうるお目目なさってる上空で天使がラッパ吹いてるのはいいんですけど。
 透過光のキラキラ明滅、やばいです。
 ポケモンチェックって、80年代のあなた知ってます?
 すいません。
 博識でいらっしゃる。
 え?
 んなもん、少女マンガのヒロインだけが使える、無敵の呪文でぶっ飛ばすから、心配するな?
 イヤな予感…。
「ぜったい、大丈夫だよ!」
 ぶりっこな微笑みどアップ!
 うわっ。
 なんか星がいっぱい飛び散って。
 髭髭…;須須須^^須……髭須髭。
 たいへんだ。
 あちこち初期化(イニシャライズ)されて、文字化けしてる。
 80年代のヒロインがなぜ、00年の破壊魔法を使えるんだ?
 それも、ふたつ同時攻撃!
 「CCさくら」と「コレクター・ユイ」なんていつ見たんだ?
 マリでもNHKなんて見るのか?
 いや、そんなことより。
 ふたつ同時攻撃。
 これは、なんとかに刃物状態、では?
 まずい。
 このままでは、作者補記が破壊されてしまうっ!
 でも、アレに近寄りたくないなぁ。
 だって、基本的にニガテなんだよぉぉ。
 少女マンガの主人公って。
 葬式の最中でさえ平気で微笑む躁病患者の「飴玉飴玉」以来、トラウマだわ。
 だって。くじけないもん泣かないもん負けないもんっとか言って、大日本帝国まっつぁおな空転努力だけで高望みを実現させちゃうひとでなし(あんたら人間じゃない!)たちは、わき役たちのささやかな“ひとつだけ”の願いを粉砕しまくって、たくさんの不幸を下敷きにひとりだけ幸福になるんだもん。
 エスカキャラでいちばん、くじけないもん泣かないもん負けないもんっ、て方は…。
 なんでもないですっ!
 マリは少女マンガの主役みたいだって言っただけです。
 はい。誉めてます!
 ふつう、リエみたいのは、主人公をひきたてるための頭脳派友人Aで。ミドリみたいな極悪インケン娘は、いつも最後に泣くアテ馬娘で。ナオミおねえさまはあこがれのひとで。
 やはり、くじけないもん泣かないもん負けないもんっ、ができる工藤さんこそ主役にふさわしいですよね。
 なんでマリがNHK見てるんだ、なんて絶対に言ってません!
「失礼ね。あたしNHK、それもNHK教育、よく見るわよ。悪い?」
 あ、そっか。
 親切に後輩の面倒見てるんですよね。
 むりやりTVの前に、アリサちゃんお行儀よく座らせて。
 後輩ダシにそれしか、…なんて死んでも言ってませんっ!
「どうして、逃げるの?」
 だだって、笑顔がとってもこ…キュートですねっ!
 何だかベタだらけの、怜悧な絵柄にイニシャライズされてませんか?
 そりゃわたし、篠原千絵の絵って大好きですけど。
 つくねんと置かれたポリバケツが怪しいトコまで、真似しないでくれます?
 それにこのBGM、「海の闇、月の影」の「Lunatic Diana」ぢゃないですか。
 恐いなあ。
 あのマンガ、登場人物ほとんど惨殺されたんですよ。
 双子の姉妹で、一人の男を好きになって。
 でも、姉は選ばれなくて。
 同じものはふたついらない、って。
 嫉妬に狂った姉は、片っ端から横恋慕のジャマ者を、ひしゃげた肉塊に変えてった……。
 あ。
 工藤さんて、じつは小松崎さんと瓜二つ、なんでしたよね。
 黒目がちにして髪型変えると、じつは…、って公式設定にありました。
 ……。
 工藤さん?
 あなた、満月の夜に宙に浮いて壁を抜けたり…できません、よ、ね?
 やーね、って。
 逆光ベタフラッシュでにっこり微笑まれても、ぜんぜん説得力ないんですけど。
 だって、わたし、あなたのこと大嫌いで、いつもいつも悪く書いてるし…。
 あの。
 後ろ手に、何か、持ってませ…ん?
「やーね。あたしたちオトモダチでしょっ!!」
 うわー。やめてください恥ずかしい寄らないでっっ!!
 山になれ! 河になれ! 流沙になれ!
 ぜーはーぜーは。
 お札3枚とも使い切りました。
 ナオミ和尚さま、追っ手は、釜ゆでにしてくださいっっ!!
 …逃げ切りました。
 釜ゆでじゃなくて、泡風呂の刑で悩殺したそうです。
 ナオミ和尚さま、ありがとうございました。
 少女マンガの世界から、いちど日本昔話の世界に逃げ込んで、戻ってきました。
 こ、殺されるかと思った。
 あの必殺キメ台詞。
 本心と違うなら「…闇、月…」な怖いことになるし。
 本心で抱きつかれたら、もっと怖いよう!
 正義とか善とか愛とか、オトモダチとか。
 シラフで振り回せるマリは、わたしはニガテだ。
 でも。
 わたし、ほんとにマリ大嫌いでミドリ萌えなんだろーか。
 ミドリばっかひどい目に遭わせてる。
 ちょっと最近、自信ないです。
 調子悪いとパソコンも調子悪くて。
 白痴って、変換されなかったし。
 下賤、も。
 差別用語は単語登録されてないって都市伝説、ホントかも。
 がりゅーてんせーってのも変換されなかったし。
 ATOK13っておバカー。
 中学受験の小学生だって書けるのに。
 とに。めんどくさいよね。
 が、りゅう、あっぱれ。
 れ、だけ削除してできあがりっと。
「ばーか。アッパレなのはてめーのトウフな脳ミソだ!」
 う、…如月さん。
 お言葉より。
 その冷ややかな視線のほうが痛いです。
 バカのくせにあたしの話を書くなんて100万年早い?
 ひどいな、如月さん。
 やっぱ、怒ってます?
 次回はぜったいリエとらぶらぶ、にするから。
 それでおこってるんじゃ、ない?
「…もういい。バカには期待しない。寝る」
 いいんですか?
 また礼拝さぼると誰かさんが泣きますよ?
「余計なお世話」
 すいません。
 ごめんなさい。
 次回はもっとがんばります。
「ったく。なんであたしが」
 大久保美籾は小学生以下だわ。
 自分がひどい目にあう小説の誤字…。
 でも、ほっとくとおねえさまにもリエにも恥かかせちゃう。
 こんな汚れシゴト、あのふたりにやらせるわけにはいかないし。
 あのバカに手伝ってもらうのだけは死んでもヤだし。
 結局、自分でやるしか。
 んしょ。
 もー、こんなこと、ばっか。
 あーあ、また、あとが厄介。
 ウソは直感で見破るし、黙ってるとぴーぴー泣くし。
 あれ?
 如月さんまだいたんですか?
 ぶちっっ、て?
「あんた、クイズの正解書くの“も”忘れてたでしょ」
 は?
「正解は、血の雨が降ってました、よ」
 あっ!!
 平手ぱんち、さっき食らったばっか、なのに。
 あうう。
「悪かったわね。さっさと消えてやるわよ」
 次回らぶらぶじゃなかったら、ひどいよっ!
 しくしく。
 なんであのひとはいつも不機嫌なんだ?
 こんなにもわたしはミドリ萌えなのに。
 あうう。
 ほっぺ、痛いよう。
 では、また。
 どこかでお会いいたしましょう。
    −了−
 

あとがき

 いまどきのアニメを知る者はエスカレーションを知らないし、エスカレーションを知る者はいまどきのアニメを知らない。
「海の闇、月の影」を知る者はエスカレーションを知らないし、エスカレーションを知る者は海月を知らない。
 世界中で何人に通じるでしょうか?
 いいんです。いわゆる自己満足なんだから。ええ、いかにもアタマの悪そうなファンフィクションです。
 おかげさまでぺしゃんこにならずに済みました。

 あ。
 「リエとマリの差は髪型だけ」は公式設定です。キャラ絵設定資料中で富本起矢が自分でそう書いてます。

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