お留守番
    
 『蜜月まで何マイル・その後』


  ◆◆ おまけ ◆◆◆◆

 飛び切り美味しい夕食と、お留守番組へのお土産として供された高級なシャンパンと珍しい果物の山が、二日振りに顔が揃った一家?団欒を大いに盛り上げた。双方で色々とあった土産話に座も沸いて、それがお開きになったのは結構夜も更けたろう頃合いだった。明日はいよいよこの島から離れることとなる。本当に用事のみで立ち寄っただけな土地だったが、これからの先々で思い返す時には思い出深い場所となるのかも知れない。
「じゃあ、おやすみな。」
「おやすみ〜。」
「おやすみなさい。」
「明日は早いんだから、とっとと寝るのよ?」
 廊下で皆から手を振られ、船首方向へと向かう。"あ〜ふ"と欠伸をしながら部屋に入り、麦ワラ帽子を脱ぐと、壁のラックから突き出したペグに引っかける。一緒に戻って来た剣豪は、サイドテーブルのランプへ燭台からの火を移していて。その慣れた手際と、仄かな明かりに照らし出されている見慣れた横顔へ、うっとりしつつも"ああ、いつもの夜だ"と実感する。胸が裂かれるほどまで寂しかったという訳ではないが、借り物のような夜は…目一杯に気を遣ってくれたろうサンジには悪いが、やっぱりどこかで落ち着かなかったし、早く過ぎ去れとだけしか思えなかったから。そうしてやっと二人きりとなった途端、
「…っ。」
 背後からきゅっと抱きすくめられた。腕組みの中へと取り込まれたような、たいそう密着した抱き方をされていて、後ろ向きなまま首の付け根へ軽くキスを落とされた。
「…あっ。」
 それから…肩口からうなじへかけての、シャツから露出している肌の上、唇の先を掠めさせるようにして撫でられて、久々の甘やかなくすぐったさに小さく身じろぎして見せる。
「や…、ゾロ。」
 身を縮めてくすがったがるルフィの様子に少しばかり満足してか、そのままひょいっと軽々抱き上げ、ベッドに腰掛けながら、向かい合うよう腿の上へ抱え直してくれた。腰に下げていた刀は三本とも、戸口近くの椅子の脇、いつもの定位置へ外して立て掛けてある。掻い込まれた広くて深いゾロの懐ろは、温かくていい匂いがする、ルフィの一番お気に入りな場所だ。頼もしい胸板に頬をつければ、深みがあって響きのいい彼の声が直に伝わって来て、何とも心地がいい。一方で、
"…あんまり露骨かな。"
 随分と気が急いている自分に内心で苦笑するゾロだ。皆が居る場では、いくらほぼ公認(とされているらしい)とはいえそれなりに気も遣う。ともすれば…一刻も早く、頭の先から爪先までの全てに触れて、何の変わりもないか、変わらず愛しいままかと確かめたかったほどだのに、まさかいきなり掻っ攫って部屋へ籠もる訳にも行かないと、そこは我慢を強いた剣豪殿だった。そんな想いを耐えていたこの数時間は、すぐ手の届く傍に本人が居ただけに、離れていた二日より、ある意味もっと酷だったかも知れない。ちらりちらりと目が合うのさえ、どんなに飢えた眼差しをしている自分かを悟られやしないかと思うせいで、ひたすらに苦痛だったし。そんなこちらの胸中を知ってか知らずか、
「ゾロも寂しかったのか?」
 そんな暢気?なことをまず訊いてくる。まだまだ初心
ウブな船長さんなだけに、まるで女の子を扱うのと同んなじで、こういう会話から手順を踏んで、エスコートなりアプローチなりをしなくてはならない。男同士なんだから生理的なもんはお互い様で判るだろうというズボラは利かないのだ。おいおい とはいえ、そこがまた…以下同文なこらこら 剣豪殿なんだから、特に気の毒がる必要はないのだが…という"口出し無用さ、大きなお世話"的な彼らの事情はともかく。いきなりのように愛撫に近い触れ方をして来たゾロの胸中を彼なりに察したのだろうが、それにしては随分と可愛らしい表現で尋ねてきたルフィへ、
「それもあったがな、それよか心配したさ。」
 こちらも努めて"ずぼらに走らぬように"と、包み隠さず心情を連ねることにする。
「心配?」
「何か起こっちゃいないかってな。俺がいないところで何かあって、お前を守れないっていうのが一番つらい。」
「………。」
 低く潜められると、いつもの深みの中に何とも言えない甘い響きが混じる。柄にない、こんな声が出せるゾロだと知っているのはルフィだけ。他の誰とも交わしはしない"密やかな語らい"というものを囁き合う、所謂"恋人"同士であればこその特権のようなものというところだろうか。そして、その声を聞くと、何だかドキドキの度合いがずっと増して、じわじわと頬が赤らんでしまうルフィでもある。
「勿論、コックを頼り
あてにしちゃあいたが、お前は本当に目が離せない奴だからな。うっかりって形で、とんでもないことを引っ張り込むし。」
「何だよ、それ。」
 言い返すと、紅潮し始めている顔を覗き込まれた。
「ちょっとの怪我でも、ただ寂しいって思うだけでも、お前が辛けりゃ俺にも辛いってことさ。」
 鼻先同士を擦りつけて、これ以上はないぞというほど潜められた甘い声で囁くゾロであり、
「…ん。これからは気ぃつける。」
 もう既に身体中が芯から蕩けそうになっていて、ゾロの胸板へかろうじて凭れているルフィだ。声だけでこれなのだから、そのままそっと食
むような口づけをされて、離れがてらに耳朶の端を"甘咬み"なんぞされた日には、
「あ…。」
 髪の先から爪先までのどこを掠めて触れられても、ぎゅうっと身を縮めて感じ入ってしまいそうなほど、全身のいたるところがひくひくと敏感になっているのが自分でも判る。これはちょっと…何をするにしても時間を置いて熱を冷ましてからでないとと、思っていたのに、
「じゃあ、二日分、な。」
「え? あ、ちょっと、待って………っ。ねえ、まだ話そうよ。
 あ、ランプ消すなんて狡い、ゾロ、あ、や………っ。」

   いいかげんにしなっさい。


    〜今度こそ Fine〜



 *なんだか変てこりんなお話になりましたが、いかがでしたか?
  (お初の連載ものにこれを選ぶか、自分。)
  他のバージョンと違って、
  既に一線を越えているという設定の彼らだのに、
  ちっとも色っぽいお話にならない…。
  何でだろうかと、誰よりもMorlin.が一番納得がいかなかったです。
  あれですかね、
  そこまで持ってく過程が、
  スリリング?だったり切なかったりするんですかね。
  いやはや奥が深いなぁ。
  このシリーズの二人は、
  これからも、ただもうベタベタし続けることと思います。
  リクエストがあればまた出てくるかも知れませんが…
  誰か読みたいですか?
  (こらこら、煽る奴があるかい。)  ↓あれあれぇ〜?

  さて、ここまでお付き合い下さった方々へのプレゼント。
  実は…当サイトお初の"裏ページ"があったりなかったりします。
    *裏への入口は、『蜜月まで〜』TOPへ移しました。
     どうしても見つからない、分からない方は
     Morlin.までお問い合わせ下さい。
    

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