お城の用語解説
 これは何??



お城の本を読んでいると、時々聞き覚えのないような専門用語が色々と出てきます。「コンセントリック型って何?」「モット&ベイリーって何?」「キープって何?」と疑問を抱きながらこのページを訪問してくださった方々のために、私なりに用語集を作ってみました。なお、このページの説明の大部分は、創元社から出ている紅山雪雄さんの「ヨーロッパの旅 城と城壁都市」を参考にしています。この本はお城のことが分かりやすく解説されていて、お城好きだけどまだまだ知らないことだらけな私にはバイブルのような本です。




時代区分



ローマン・ブリテンスコットランドを除く大ブリテン島がローマ帝国の版図としてブリタニアと呼ばれていた時代のこと。ローマの軍隊がイギリス南東部に上陸した紀元43年から390年頃イギリスを去るまでの約350年間のことを言う。そのため、現在でもイギリス中でローマ人時代の遺跡を見ることが出来る。このページで扱っているものとしては、バースランカスターリカルバーリッチボローなど。ローズマリ・サトクリフの本を読むと、ローマン・ブリテン時代のイギリスの様子が活き活きと描写されていて、「本当にこんな感じだったんだろうな」と実感することが出来ます。お勧め。
イギリス史でいう
中世時代
大まかに分類すると、ローマ人が大ブリテン島を去った4世紀末からばら戦争が終わり、チューダー朝が興った15世紀末頃までのことをいう。アングロ・サクソン人やバイキングたちがイギリス中を席巻した5世紀から10世紀までを初期中世時代、ノルマン人がイングランドを征服した11世紀からヘンリー7世がチューダー朝を興した15世紀末までを後期中世時代といい、イギリス中に城が築かれたのは後期中世時代のこと。その後は、火薬と大砲の発達により城の有用性は失われていった。


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城の様式



ヒル・フォート 紀元前の時代、石器時代や青銅器時代に築かれた丘の上の砦のことで、お椀をひっくり返したように人工的に盛り土した丘の周りを空堀で取り囲んだ様式の砦のこと。イギリスでは約3000ほどのヒル・フォートの遺跡が見つかっている。大きいものだと二重三重の空堀で囲まれているものや、丘の高さが3階建ての家ぐらいのものもあるらしい。

モット&ベイリー11世紀頃から見られるようになる築城様式のこと。人工に盛土した丘の上に木造の塔などを築き木造りの柵を張り巡らした部分がモットで、ベイリーはモットの下に広がる庭のような部分になっており、堀と土塁と木柵を巡らし、入り口部分は跳ね橋などで守られていた。モットの塔には領主と家族などが住み、ベイリーの部分には騎士や召使たちの家、馬屋、家畜小屋、倉庫などが建てられていたらしい。また、モットは敵に攻められたときに立てこもる場所としての意味も持っていた。中世イングランドでは、ノルマンディー公ウィリアムが1066年にイングランド征服を成し遂げた後イングランド中にこのモット&ベイリー式の城が作られた。多くの城は破壊されたり改築されたりしたが、現在でもモット&ベイリー式の城の名残をとどめている城がたくさんある。主なものとしては、ウィンザー、ヨーク、ウォーリック、カーディフなど。

コンセントリック
(同心円)様式
十字軍遠征で学んだアラブ式の築城術を取り入れた、キープを中心にして城壁や塔などの防護施設が周りを取り囲む城の様式のこと。13世紀末ごろからイギリスで見られるようになった。同心円といっても必ずしも円形をしているわけではない。コンセントリック型の城は、二重、時には三重の城壁を備えているのが普通で、二重の城壁の場合外側の城壁と内側の城壁で挟まれている部分を外郭(LOWER BAILEY, OUTER BAILEYなど)、内側の城壁の内側でキープと接している部分は内郭(UPPER BAILEY, INNER BAILEYなど)と呼ばれる。コンセントリック型の主な城としては、ウェールズにあるケルフィリーボーマリスキドウェリーなど。


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城の造り



キープ日本でいうところの天守閣のこと。ただヨーロッパの城のキープとは、居住空間というよりは、有事のときの避難砦や牢獄、貯蔵庫としての役割として用いられることが多かったらしい。初期のキープは木造だったが、次第に石造りのキープに作り変えられていったため、居住性の良くなかったキープよりも、ベイリー内にある別の館に住むほうが好まれたため。

ゲートハウス城門のこと。有事の際、城門は真っ先に敵の激しい攻撃を受ける対象となるため、初期の頃の城門はごく簡単なものだったが、次第に落とし格子や熱湯やピッチや石などを落とす穴などの防衛施設を備えた石造りの強固な建造物へと発展していった。後期になると、経済的な問題もあり、キープとゲートハウスを一体化させたキープ・ゲートハウスという様式も用いられるようになって来た。キープとゲート・ハウスを強固な建造物として別個に建てるよりも一つにまとめてしまった方が築城費を節約できるし、合理的というわけ。キープ・ゲートハウスを持つ城の代表はキドウェリー城。

矢狭間城門、城壁、キープなどの側面に見られる小さな窓のことで、この隙間から敵に向かって矢を放った。

胸壁城壁や塔の一番上に設けられている、漢字の凸と凹を連ねたような形の防御設備のこと。有事の際、胸壁に身を隠して敵に応戦することが出来るだけでなく、城壁に梯子を掛けて城内に進入しようとする攻撃に対してかなり有効だったらしい。

橋頭堡橋の守りを固めるために作られた砦や、また、川・湖・海などの岸近くで、渡ってきた部隊を守り、以後の攻撃の足場とする地点のこと。リッチボローリカルバーは、当初ローマ軍の橋頭堡として築かれた。





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