法人と個人とどちらがいいか、いろいろポイントはあるのですが、一般的には下記のような点が問題になります。
対外的な信用 ⇒ 法人の方が有利
税金負担 ⇒ 法人の方が有利(ただし、設立の仕方が重要になります)
社会保険負担 ⇒ 個人の方が有利
税理士報酬 ⇒ 個人の方が有利
以上のようになりますが、個人事業者で継続してある程度の利益が出ている方は、法人形態にした方が有利だと思います。
やはり、税金面での節税メリットがかなり高いです。以下、法人形態の方がなぜ有利か、まとめてみます。
- 1.社長個人に給料が払える
- 例えば、個人事業者で年間利益1,000万円の方が法人成りし、その利益1,000万円をまるまる社長の給料(役員報酬)としますと
個人事業者 → 1,000万円が課税対象になる
法人 → 利益はゼロなので、税金はほとんどかからない
給与所得者 → 780万円が課税対象になる
となります。
つまり、法人成りすることにより、1,000万円が課税されていた社長は780万円の課税ですむようになるのです。
これは、給料は一定額が非課税になるからなんですね。
この一定額の非課税制度を給与所得控除といいます。
これがあるため、これまでは法人成りしたほうが税制的には有利といわれてきました。
しかし、これからはそう単純な話ではなくなってきます。
それは税制上の不備ではないか(法人組織にするメリットが大きすぎるのではないか)ということで平成18年の税制改正で特殊支配同族会社の損金不算入制度という法律が制定されました。
かなり話題になった税制ですので、みなさんも一度は耳にされたことがあるかと思います。
詳細は割愛しますが、この規定によりかなりの同族会社が増税になるという試算が出ました。
それが法人化を考えている人に少なからず影響を与えたようです。
ただ、この制度については反対論も根強く、その結果平成19年の税制改正で同制度の適用される会社が少なくなる改正が行われました。
具体的にいいますと、社長1人の給料+会社の利益が1,600万円までなら適用されないこととなったのです。
例えば社長の役員報酬が年額1,500万円で会社の利益が50万円ですと、両者で1,550万円となりますので、適用されません。
社長の給料が月100万円(年額1,200万円)でも、会社の利益が100万円くらいでしたら、この規定による調整はなくなったのです。
利益がある程度になるまでは法人組織化することによる節税メリットが保証された、ともいえます。
では会社組織にすると、どれくらいの節税効果があるのか、具体的に見ていきましょう。
例えば売上1,800万、仕入・経費1,080万の場合ですと以下のようになります。
|
個人事業 |
会社 |
売上高 |
18,000,000 |
18,000,000 |
仕入・経費 |
10,800,000 |
10,800,000 |
役員報酬 |
0 |
7,200,000 |
事業利益 |
7,200,000 |
0 |
個人事業
青色申告控除 |
650,000 |
0 |
給与所得控除 |
0 |
1,920,000 |
扶養控除 |
1,140,000 |
1,140,000 |
所得金額(利益) |
5,410,000 |
4,140,000 |
 |
 |
 |
個人所得税・
住民税 |
1,193,000 |
812,000 |
法人税・
法人住民税 |
0 |
70,000 |
個人事業税 |
215,000 |
0 |
法人事業税 |
0 |
0 |
税金合計 |
1,408,000 |
882,000 |
差額 |
0 |
526,000 |
次に、売上3,000万、仕入・経費1,800万の場合を見てみましょう。
|
個人事業 |
会社 |
売上高 |
30,000,000 |
30,000,000 |
仕入・経費 |
18,000,000 |
18,000,000 |
役員報酬 |
0 |
12,000,000 |
事業利益 |
12,000,000 |
0 |
個人事業
青色申告控除 |
650,000 |
0 |
給与所得控除 |
0 |
2,300,000 |
扶養控除 |
1,140,000 |
1,140,000 |
所得金額(利益) |
10,210,000 |
8,560,000 |
 |
 |
 |
個人所得税・
住民税 |
2,914,500 |
2,216,000 |
法人税・
法人住民税 |
0 |
70,000 |
個人事業税 |
455,000 |
0 |
法人事業税 |
0 |
0 |
税金合計 |
3,369,500 |
2,286,000 |
差額 |
0 |
1,083,500 |
以上のように、会社設立による節税メリットはやはり大きいといえるでしょう。
詳細につきましては、お問い合わせください。
- 2.事業税負担の減少
- 上記と同じく、年間利益1,000万円の個人事業者が法人になり、利益=役員への給料としたと前提で計算しますと
個人事業者 → 事業税355,000円
法人 → 事業税0円
上記の通り、かなり差がありますね。
- 3.損失の繰越控除の期間の差
- 損失の繰越控除というのは、会社(個人)の事業等で赤字になった場合に、その赤字を翌年以降の利益と相殺して、税金を計算するという制度です。
法人税や所得税は利益に税率をかけて算出するのですが、
1年目 → 赤字100万円
2年目 → 黒字200万円
であると仮定しますと、
1年目 → 税金ゼロ
2年目 → (200万ー100万)×税率=税金
という風に計算します。
上記の例では2年目で1年目の赤字を上回る利益になりましたが、赤字額が大きい場合、その穴埋めをするのに、数年かかることがあります。
何年にもわたって赤字を繰越して黒字と相殺する制度を損失の繰越控除というのですが、この赤字を繰り越せる期間が
個人 → 3年間
法人 → 7年間
と大きな差がありますので、万が一大きな赤字が出てしまったときでも、法人の方が税金の計算上有利になるのです。
- 4.損益通算の有無
- 損益通算というのは、所得税の制度でして、発生原因の異なる収入間の利益と損失を相殺して税金を求めることをいいます。
どういうことかといいますと、所得税では所得(=利益)の発生の仕方によって所得が10種類に分類されています。
利子ならば利子所得、給料ならば給与所得、といった感じです。
それぞれの所得の中にプラスのもの、マイナスのものがあった場合、そのプラスマイナスを相殺して計算することができます。
これを損益通算といいますが、所得税では差し引きできる所得に一定の制限があります。
例えば個人商店を営む人が株式投資もされていて、
個人事業 → 赤字
株式投資 → 黒字
の場合に、事業の赤字と投資の黒字を差し引きして全体では赤字だったとしましょう。
結論からいうと、この場合は税金を払わないといけません。
(正確にいうとかからない場合もあります)
なぜならば、事業での所得と株式投資での所得では相殺ができないことになっているためです。
個人事業 → 赤字だから税金発生ゼロ
株式投資 → 黒字だから税金発生
となり税負担が生じるのです。
これが法人の場合ですと、全体でマイナスということですので、法人税はかかりません。
法人にはそもそも所得の分類ということがありません。
利子であろうと本業であろうと株式投資であろうと、そのすべての損益を含めて税金を計算することになっています。
どうしてちがうのかというと・・法律でそうなっているからです。
こんな面でも法人の方が有利な税制になっているのです。
- 5.税務調査の確率
- これは法人の方が手間がかかりますが、一般的には法人の方が税務調査を受ける確立が高いといえるでしょう。
やはり法人と個人では圧倒的に個人の方が申告される方の数が多いわけでして、税務職員の数には限りがありますから、個人の場合はフォローしきれないわけです。
また、法人の方が個人よりも帳簿をしっかりつける必要があります。
逆にいいますと、個人の方はどんぶり勘定でもけっこう通ってしまう面があります。
>>このページのトップへ
|