スキー衝突事故の顛末-裁判をやってみた-    

裁判をやってみた!


 ホームページが全く更新されないなー、管理人はさぼっているぞ!と
感じていた皆様も多いことでしょう。そうです。たしかに骨折のwebページ更新はさぼっていました。
でも、2004年は2003年の骨折に続き、またも未知の世界に足を踏み入れてしまい、てんやわんやしていたのでした。

 そう、骨折の後始末、民事裁判です。

【目次】
  1. 背景
  2. 証拠を確保せよ
  3. 弁護士の先生をさがせ!
  4. えっ自分でやれって!!!
  5. 訴状および陳述書を書く
  6. 裁判所でどっきどき
  7. どうしよう、訴状がとどかない
  8. 被告訴訟代理人登場
  9. えっこれだけ? -第1回口頭弁論-
  10. 法廷って結構いいかげんしてもいいものなのね? -第2回口頭弁論-
  11. 弁論準備手続っていうのでやるんだって
  12. 裁判長ちゃんと読んでよ!(本人訴訟はつらいよ)
  13. 絶対許さん!(請求額増額)
  14. 和解額200万円ってかなりおおざっぱね。
  15. 最後まで行きますよ(by 被告代理人) 
  16. 証人調べ
  17. 被告訴訟代理人逃亡
  18. 被告がこない
  19. 裁判長殿、判決が早口でわからないのですけど
  20. ストーカーのようなヒステリックな電話が...
  21. お願い何事もなく、2週間たって
  22. いきなり大金Get
  23. 番外編 
【提出書面】
  1. 訴状
  2. 原告陳述書(甲1号証、甲2号証)
  3. 証拠類
  4. 準備書面1,    準備書面2,    準備書面3,    準備書面4
  5. 証拠説明書,証拠類2
  6. 準備書面5
  7. 上申書
  8. 準備書面6
  9. 証拠申出書尋問事項書
  10. 準備書面7
  11. 証拠調べ調書     (F証人),    (原告本人尋問),    (被告本人尋問
  12. 準備書面8(原告最終準備書面)
  13. 判決文

【裁判進行状況】
  1. 03年 1月 1日(水) 新潟県神立高原スキー場で受傷
  2. 03年 1月下旬  相手から損害賠償する意思がない旨の連絡あり
  3. 03年 6月末迄  治療に専念
  4. 03年 7月から  裁判準備開始(年内訴状提出を目指したが無理だった)
  5. 04年 2月 3日(火) 訴状提出
  6. 04年 3月18日(木) 第1回 口頭弁論(5分、 被告代理人欠席、答弁書のみ)
  7. 04年 4月22日(木) 第2回 口頭弁論(5分)
  8. 04年 6月 4日(金) 第3回 弁論準備手続(30分)
  9. 04年 7月 1日(木) 第4回 弁論準備手続(30分)
  10. 04年 7月29日(木) 第5回 和解の話(30分)
  11. 04年 9月 6日(月) 第6回 和解の話(30分)
  12. 04年10月28日(木) 第7回 証人調べ(90分、証人尋問1人、当事者尋問2人)
  13. 04年11月 5日(金) 第8回 和解の話(30分、被告代理人辞任)
  14. 04年12月 3日(金) 第9回 口頭弁論(5分、 被告欠席で結審できず)
  15. 05年 1月21日(金) 第10回 結審(5分)
  16. 05年 3月24日(木) 第11回 判決(5分)
  17. 05年 4月13日(水) 判決確定
  18. 05年 4月15日(金) 損害賠償金受領

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1.背景
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 2003年1月1日にスキー滑走中の私の後ろから猛スピードで衝突してきて、私に骨折を負わせた人は、スキー場でこそ非常に誠実な印象だったのですが、 「骨折していたこと」を書面で知らせても全く連絡がない状態でした。
 衝突相手からの突然の電話、それは骨折の手術を終えて退院後数日たった1/24(金曜日)の深夜でした。それはとてもとても屈辱的なものでした。そもそも24時近くに電話をしてくる神経も私は理解できませんでしたが、手術後数日で衝突相手とシビアな話をする体力・気力がなかった私は、まだ帰宅していないがるぅと土曜日の昼間に話あって欲しいと依頼したのですが、相手は「夫は関係ない!」と声を荒げて勝ち誇ったように高らかに宣言し、携帯電話番号はおろか年齢さえも開示せず 「スキー場という遊び場での事故はお互いさまで賠償などする必要はなく、今後一切連絡をとるつもりはない」と言い放ったのでした。

そう、そして、この日、彼は怒らせたらがるぅよりずっとずっと恐ろしい私を怒らせてしまったのです。(失敗したねぇ、君。。。)

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2.証拠を確保せよ
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その夜、私は、事故当日神立パトロールが作成してくれた「事故報告書」の内容をはじめてきちんと確認し、そこに重大な問題があることに気づきました。事故報告書は、こんなふうに書いてあったのです。

「Aさん(衝突相手)がプロキオンから滑ってきて左前方よりBさん(私)が来るのを確認。ブレーキをかけて止まろうとしたが間に合わず衝突した。」(甲2号証)

えっ、たったこれだけ?
そう、これでは、私が後ろから一方的に衝突されたことが全然わからないではないか!
現地では、衝突相手は誠実そうだったので、まさか骨折したと聞いても何もしないなんて思いもしなかったので、記載内容をきちんと確認せずにサインしてしまっていたのでした。

これは大変!と、その日衝突相手と話し合う気力すらなかった私が、突如パワーを取り戻し、深夜24時から徹夜して、事故当日の記憶を箇条書きにし、神立パトロール隊に覚えていらっしゃる項目に○をつけて欲しいと依頼FAXを送付したのが翌日(1/25)昼でした。(甲8号証)
神立スキーパトロール隊はびっくりするほど迅速に対応くださり、1/26には私の作った箇条書きFAXに○をつけて返送くださいました。 比較的早い時期にこの事故について文章にしたことで、パトロールの方に私の事故の記憶を一旦整理してもらって再認識してもらえた直接的な効果のほかに、この文章になにげなく記載したあった内容が後から被告側が主張してきた「私の飛び出し」を否定する材料にできたことがとてもラッキーでした。
(もっと整理して書ければなおよかったんですけどね、急いでいたからまぁ70点)

人間の記憶は時間とともに薄れるもの。「もう遅い」と思ってもその後の長〜い裁判の時間経過から考えれば、その時点は全然遅くはないのです。きちんとメモにとって当事者以外に確認してもらうことはとても重要だと思いました。

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3.弁護士の先生をさがせ!
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 すでに私の心の中では裁判をすることは決めました。
でも次に解決すべきとても大きな問題があったのです。そう、裁判をお願いする弁護士さんの知り合いがいなかったのです。
ちゃの家もがるぅの家も親戚筋は電機業界・自動車業界が大勢を占めており、さらにちゃもがるぅもずっと理科系の学校をすすんできたため、1度あっただけ程度の友人まで入れても、お医者さんはたくさんいても、法曹関係の知り合いは皆無でした。
 どうしよぅ、区役所の法律相談から始めるかぁ〜と頭をかかえていたところに、がるぅが耳よりな情報をもってきました。がるぅの会社の労働組合が契約している弁護士さんの法律相談が月に1度あるとのこと。
さっそくすすがるしかない!と、事故後2カ月弱の2月22日には松葉杖をつきながら、弁護士の先生(お、またI先生です!)におすがりするために先生の事務所のある表参道に出かけました。(松葉杖が表参道のスクランブル交差点を闊歩したのはこの時です!)

その時先生に確認しなければならないと思ったことは以下です。
・今やっておかなければならないことは何か?
・時効はいつか?
・年齢など相手の情報を得るためにはどうすればよいか?

それに対して弁護士の先生からいただいたアドバイスは以下です。
(1)結果として裁判が一番経済的なケースが多い
 今回の衝突相手のような人は、根気強く賠償の必要性を説明しても応じないことが多く、交渉のエネルギーを無駄に使ってしまうだけになりがち。このような 人の対応は結果として裁判をすることが一番経済的であるケースが多い。
(2)裁判をすることとしても、開始されるまで相手に全く連絡をとっていないと裁判所の心証が悪くなるので、1カ月に一回程度「治療経緯と誠意をもって対応してください」程度の手紙を送っておくこと。
(3)時効は3年。(裁判が開始されればその間延長される)
(4)裁判は治療が完了してからとなる
 裁判をする場合は、医療費などの請求金額を確定させる必要がある。
 →従って、今は治療に専念し、治療が完了したら再度相談に来ること。

そして、衝突相手の年齢の確認と居場所が不明になることを防止する目的でI先生の名前と弁護士登録番号で、スキー場で衝突相手が書いた住所から戸籍の附表を入手してもらう手続きをしてもらいました。

なおその結果、衝突相手は20代後半であることと、事故報告書に衝突相手が記載した住所は実家の住所で住民票の住所は全く別であることが判明しました。

一般人が自分以外の戸籍を入手することはできません。この時はI先生のお手を煩わしましたが、裁判を開始してから送達ができなかった際には裁判係争中であることを示すコピーを同封して役所に依頼したところ、取り寄せ成功しました。(無関係にも思いますが、この時は個人情報保護法は成立していないので、2005年4月以降も同じ方法で入手可能かは?です。)

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4.えっ自分でやれって!!!
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 私たちは、裁判をするからには当然弁護士の先生にお願いするものと思っていました。しかし、I先生はその日思いもかけないこんなことをおっしゃったのです。
「横浜の裁判所ですることになると思うのだけど、横浜まで出向いてやるのはちょっと。。。指導してあげるのでご自分たちでおやりなさい。」

 「裁判には絶対に弁護士が必要」と思っていたのですが、日本の裁判制度では民事裁判では訴訟代理人たる弁護士は必須ではなく、本人自身が法廷に出廷して裁判を行うことが可能だったのです。
 その時、がるぅはI先生にこんな風に質問しました。
「私がすることはできるのですか?」←がるぅってやさしいですねー。(うひうひ)
その質問に対し、先生はこうおっしゃいました。
「彼女は立派な大人の女性なのですから、彼女がするしかないのです。」
(本人訴訟はできます。でも、代理ができるのは、国家資格をもった弁護士だけなのです。家族といえども代理をすることはできません。)

I先生の「ご自分たちでおやりなさい」とのお言葉を聞いたとき、私たちはとても不安になりました。でも結果として相手から相当の金額を取れるかどうかもわからないし、弁護士さんへの依頼費用も随分かかるようだったので(その時の試算で着手金20〜30万程度、報酬50万ぐらい)おもわず、I先生のお言葉にのってしまいました。

 後から考えると、裁判への対応時間はものすごい作業時間を必要としました。はっきりいって、こんなに大変ならば数十万ぐらい支払ったほうがずっと楽だったと思います。
でも、衝突相手がやとった弁護士の対応を見ていると、私たちがこの作業はとても数十万ではあわないと思ったと同様、先方の弁護士も依頼費用に見合った作業しかしないといった対応がみえみえでした。(争っている私たちが見ても被告がかわいそうと思うようないい加減な活動しかしていなかった)
つまり、私たちの案件のように請求額300万足らずの案件では、現実的には弁護士の先生に依頼しても十分な対応をしていただけるケースは非常にレアで、納得のゆく裁判をすすめるためには、本人訴訟をして正解だったと思っています。

(がるぅは、I先生はリタイア後の道楽で法律相談をしているのでは?と思っているようですが、ちゃありぃは、I先生は請求額があまり大きくないことを考えて「ご自分で納得いくまでおやりなさい。サポートはしますよ」とおっしゃったのでは?と思っています。)

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5.訴状および陳述書を書く
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というわけで、I先生の指導を受けながら、自身で裁判の資料をつくることになりました。

(1) 訴状
 まず始めは、訴えを起すための訴状です。
 私やがるぅは、普段、会社で論文に代表される技術文書をよく書きます。その際、フォーマットというか、お手本となる形式をまず捜し、それに近い形式で文書を書いていきます。でも、I先生には守秘義務があるので他の依頼人の文書を参考に見せてくれるわけではありません。お手本がなかったのが少し辛かったです。
I先生がだいたいこんな感じとさわりの部分を書いてくださいました。

      訴状
第1 請求の趣旨
 1 被告は,原告に対し,〜万円 【注1】,および,平成15年1月2日より
完済まで同金額に対する年5分 【注2】の割合による金員を支払え。
 2 訴訟費用は被告の負担とする。 【注3】
との裁判ならびに第1項について仮執行宣言を求める。 【注4】
     ・
     ・
     ・
一行37字、1頁26行、12ポイントです。
フォントが大きいのは、裁判官はお年を召した方が多いから?
なお、句読点ですが、「,」と「。」を使うのだそうです。(FEPの入力モード切替が面倒だぁ)

【注1】請求額は、スキー事故などの損害賠償では、典型的には「治療費+慰謝料+休業補償」となります。

治療費は、健康保険組合の負担分は含みません。また、事故と関係のある治療費であることを証明するために医師の診断書を用意し、治療費の領収書をすべて集めます。

慰謝料は、入院月数と、通院日数、怪我の重篤度から決まるようです。私たちは、インターネットで掲載されている慰謝料計算機やI先生の持っていた日弁連の慰謝料基準表などから170万としましたが、結局1カ月未満の入院、6カ月の通院で120万しか認められませんでした。

休業補償は、事故前3カ月の給与証明を提出します。訴状を出した際は、1日あたりの損害額を出勤日数で割って算出して出したのですが、結局、30日で割り、休業日数(金曜と月曜を休業していれば、その間の土曜、日曜は休業日数に含めてよい)でかけ算した金額を休業損害額とします。
なお、私は有給休暇とヘルスケア休暇という給与支給される休暇を使って休みましたが、それについても休業損害として認められます。


【注2】事故発生の翌日から年5分の遅延損害金(利息)を払って欲しいことを求めます。この年5分は、民法で定められているようです。(でもinternetで調べた他の方の訴状には、7分のものとかもありました。5分以外に変更して認められるものなのかはわかりません。)
 しかし、年5分っていまどき暴利ですねー。

【注3】訴訟費用とは、「裁判してください」と裁判所に訴える際に支払う費用や、証人招聘やお互いの書面のやりとりのための通信料の総計で、弁護人の費用は含みません。

【注4】「仮執行宣言を求める」とは、判決が出た後、確定前に差し押さえなどを可能とするのをOKとしてくださいというお願いです。

 さて、訴状の書き出しはI先生に書いてもらったのですが、その後に事故の状況、損害状況を簡潔に書きなさいとのこと。
このあたり、他に参考にするものもなく、典型的な使用語彙がわからず苦しみ、語尾は(である/ですます)のどちらにするのかなどでも少し悩みました。(訴状はである系、陳述書はですます系で書くようです。)
インターネットで検索をかけても、いろいろパターンがあるようで完璧に定まっているものでもないようでした。

 なお、訴状には、証拠説明書という訴えの主旨を証明する証拠類の一覧をつけます。横浜地方裁判所の書式一覧には、表形式の証拠説明書のフォーマットがのっていましたが、訴状のときはI先生に教わった書き方で記載しました。
 この証拠説明書は予想以上に結構重要なもののようです。なぜならば、証拠書類を裁判官は全部読んでくれるわけではなく、この証拠説明書の説明記載をざっと見て、どんな証拠類が出ているかを頭に入れるようなので、私が出した訴状の証拠説明のようなさらっとした事務的なものではなく、ちと長くなってもこの書類で何を証明しようとしているのかを「立証主旨」の欄に意図的に書くのがよろしいようです。
(この時の証拠説明書は失敗作、後の準備書面提出時に添付した証拠説明書のように説明を書くのがよいようです。)

(2)陳述書
 陳述書とは証人調べに代わるものあるいは補充するものだそうです。
 つまり、裁判を行っている当事者が提出する場合は、裁判の対象となっている事象(私の場合は、衝突事故)について当事者の一方から見たらこういうふうに認識しているということを説明したり、対象の事象が起きたことにより、どんな被害を蒙ったかというようなことを説明するためのものです。
証言の代わりの文書なので、Webで掲示されているいくつかの例は、だいたい話言葉で書かれていました。私もそれに従いました。
 また、訴状を簡潔にしてわかりやすくしようという意図があったため、事故に関する細かな事項は陳述書に記載するという形にしました。
 さらに、どろどろした心情的な面については別の陳述書にまとめて記載し(甲2号証、ちょっとばかばかしいところもあって恥ずかしいので掲載しないよー)、事故に関する事実を記載した陳述書-1-がすっきり読めるよう工夫しました。

陳述書は証拠として扱われるものので、他の書証(書類での証拠)と同様、原告側が提出するものは甲×号証、被告側が提出するものは乙×号証と番号づけされます。

陳述書の書き出しですが、たいてい記述者の学歴とか勤務先とかの記載で始まっています。がるぅはそういうことを記載することを相当いやがったのですが、I先生によれば、あーだ、こーだと文句をいって他人に合法的けんかを売っている人(つまり裁判している人ですね)の言うことがどれぐらい信用できるのかってことの尺度として、初対面の裁判官に対して、そういうことを伝えることも大事なんだそうです。
そんなことで信用度がかわるのかなぁ。ちょっとやな世界ですね。(でもこれはあとで身にしみることになるのでした。)


続きをお楽しみに〜



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